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  • 2020.3.3
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書評 社員100人までの会社の「社長の仕事」

社長は「顧客満足」よりも「従業員満足」を第一とすべきだ。社員に「この会社で働くことが、私の幸せだ」と思ってもらえれば、会社のためにがんばろうという姿勢が生まれ、それがやがて売上・利益につながる。
経営の理念・ビジョンは、一人ひとりのやるべき行動にまで落とし込み、社長以下全社員で共有すべきだ。

売上・利益の数字だけにこだわりすぎず、自社の収益構造を把握し、どう改善すればもっと利益が見込めるのかを考えることが重要だ。

「黒字なのに会社にお金が残らない」とならないよう、社長は現金預金のお金の性質には注意し、会社の財務体質の理解と改善に努めるべきだ。

中小企業経営の原理原則
社長の理念は「社員第一主義」

社長以下、全社一丸となって「顧客満足」を掲げている企業は少なくない。ただ、社員が「顧客満足」を第一に追求するのはいいが、中小企業の社長としては「従業員満足」を第一とすべきだろう。

大企業に比べて資源が少なく、社員の会社に対するロイヤリティも弱くなりがちな中小企業であるからこそ、社員を大切にし、その家族を守り、幸せになってもらえるような経営が望ましい。社員に「この会社で働くことが、私の幸せだ」と思ってもらえれば、会社のためにがんばろうという姿勢が生まれ、プラスのスパイラルとなる。そうすると、毎期着実に売上と利益を伸ばすことができる。

企業は利益を追求するものだが、中小企業の場合、その利益とは、「社員とその家族を守るためのコスト」だと定義づけられる。税引き後の利益である内部留保の多い少ないは、不況や貸し倒れなどのリスクにどれだけ対応できるか、社員を守れるか、ということに直結する。

著者が代表を務める古田土会計には、総勢160名のスタッフがおり、無借金で10億以上の預金残高がある。万一、社員の家族が病気になって医療費の捻出に困ったとしても、会社が1億くらい貸せるということを、社員にも伝えているという。さらに、経理も代表の給料も社員に公開しているため、社員はみな経営状態を把握し、安心して働いている。そのことがプラスに働き、古田土会計は、33期連続増収、赤字は一度もないという。

社員一丸となって、正しく稼ぎ、利益を残す
社員の努力は、成果となって「損益計算書」に現れる。そして、社長が、その稼いだ利益をどのように経営に活用する判断をしてきたかは、資産状態を表す「賃借対照表」で見ることができる。賃借対照表が健全であることは、強い財務体質の証でもある。社長には、中長期的な視点で、賃借対照表を良くしていくことが求められる。同時に、安定成長のためにはいくら利益を獲得する必要があるのか、そのためにいくらの粗利益や売上が必要になるのか、と、未来志向的に考えて、予算を策定していくことが大切だ。

こうして、社長がやるべきことをやり、「社員第一主義」を念頭に置いて、進む方向を皆で共有すれば、中小企業は必ず成功する。

社員と心をひとつにするための「経営計画書」
経営の目的を明確にする


全社一丸となって経営にあたるために、著者が勧めるのは、「経営計画書」の作成と活用だ。成長を続ける古田土会計でも、毎年「経営計画書」を作っている。

経営計画書は「方針編」と「諸表編」とに分かれる。「方針編」では経営理念、経営ビジョン/経営の基本方針/中期事業計画/長期事業構想/当期の経営目標/個別方針を決め、会社の存在意義を明らかにし、そのための未来を描く。「諸表編」では、短期利益計画を、個別の目標数値まで落とし込む。経営計画書の大きな目的は、社員一人ひとりのとるべき行動を、社長以下社員全員で共有することだ。

とくに経営理念を書く際に気をつけたいのは、「社員の幸せ」「顧客の幸せ」「社会貢献」を記し、なかでも社員に関することを一番目に表現することだ。社長だけ、会社だけが幸せになる、という未来像を描いても、社員は絶対に努力しようとはしないだろう。

3~5年先の目標を中期事業計画で定めたら、その1年目の目標数値が当期経営目標となる。その上で、短期利益計画を定めるにあたって重要なのは、個別具体的な商品販売計画や担当者別の販売計画は、担当している社員が作って、全体目標とすり合わせるということだ。

経営計画は実践あるのみ
「経営計画書」は作って終わり、というものではなく、当然のことながら社長以下全社員がきちんと実施することが大切だ。経営計画書がきちんとできているのに成長拡大ができないのなら、その会社の社員がそれを実践していないから、ということになる。

そうした事態を避けるためには、経営計画書についての勉強会の開催も有効だ。古田土会計では、決まった曜日の朝に、代表である著者自らが解説し、経営計画書を浸透させているという。

また、短期経営計画が達成できているかどうかも、週単位で確認すべきだ。未達の可能性がある項目に対して早めに対策を講じることができる、というメリットもある。大きなトラブルを招く前に、短いスパンで細かく確認するようにしておきたいものだ。

さらに、古田土会計では、月に一度、全社員が自分の担当部分の実績を発表する会議が設けられている。中小企業の場合はとくに、全社員が自分の達成度をきちんとチェックするということが大切である。

会社の「稼ぐ力」をチェックする
重要なのは収益構造
会社経営において、売上や利益の数字にばかり注目してしまう社長は多いが、重要なのはそれらではない。自社の収益構造、つまりどのようにして儲けが出ているのかを理解・把握し、そしてどこをどう改善すれば利益がもっと出るようになるかを見極めるほうがはるかに重要だ。

よく経営指標として挙げられる売上高経常利益率は業界によって異なるが、損益分岐点比率は、粗利益額に対して固定費がどれだけの割合を占めているかという指標であり、業種・業界にかかわらず用いることができる。

どの会社にもいえる、理想の損益分岐点比率は80%だ。その場合、粗利益額100に対して固定費が80あるということだ。売上高が20%下がったとしても収支はトントンとなる。損益分岐点比率は、低ければ低いほど会社の優良性が高くなる。

改善のための「5つの視点」

「では、損益分岐点比率を下げるために固定費を削減しよう」と多くの社長が判断する。しかしその前に考えてほしいのが、かかっている固定費によってその何倍の粗利益が稼げるのかを見る「固定費生産性」だ。損益分岐点比率の分子と分母を逆転させるだけの指標だが、見方を変えてみることで「利益を増やすために固定費を削る」という守りの視点から、「今の固定費生産性を向上させるには」という攻めの視点に変換することができる。生産性向上の余地があるなら、知恵を絞ってみてはどうだろうか。

収益構造を理解し、どのように改善していくかを探るためには、「損益分岐点比率」「固定費生産性」と合わせて、「売上高経常利益率」「労働分配率と労働生産性」「未来費用(会社の成長のために必要な投資的費用)の絶対額」の5つの視点からチェックしていくことが重要である。

具体的な改善点を考えていく上で、シミュレーションを可能にするのが、著者の提案するツールのひとつ、「未来会計図表」だ。「未来会計図表」は、「変動損益計算書」の考え方をベースにしており、売上高から変動費を引いたものを粗利益として考える。そして、売上と粗利益のバランス、粗利益と固定費のバランス、固定費と営業利益のバランスなどをグラフにする。それぞれの割合を可視化した上で、粗利益や営業利益を構成する販売単価(P)、販売数量(Q)、変動費(V)、固定費(F)のどれをどう変えれば課題が解決するのかを見極めていく。

会社の「体力」をどう保つか
「好きに使えるお金」を増やす
会社に現金預金がどれだけあるかは重要だが、加えて、その手元にあるお金は借入金で用意されたものなのか、それとも、これまでに稼いで蓄えた利益から手元に残ったものなのか、お金の「色」を見極めることはとても大切だ。

借金はいずれ返さなければならないものなので、借入金しか手元にないというのは会社の財務体質として良い状況とは言えない。現金預金が1000万円ある会社が2社あるとしよう。一方は借入金が200万円に加えて内部留保された利益からなり、もう一方はすべて借入金で調達された1000万円だとしたら、同じ預金額でもその意味合いは大きく異なる。そしてどちらが財務的に強い会社かは、いわずもがなだろう。

そうしたお金の「色」は賃借対照表で確認できる。よりわかりやすく「色」を見分けるためのツールとして、著者は賃借対照表をアレンジした「資金別賃借対照表」を紹介している。「資金別貸借対照表」では、資金を現金収支と捉え、損益資金/固定資金/売上仕入資金/流動資金の4種類に分ける。そして、種類別に現金預金の増減を記載する。こうして、どの要素でどのように資金が増減しているかという、自社の財務体質を把握できるようにする。

会社にお金を残すには

会社の財務体質を悪化させる要因はさほど多くなく、大きくは4つに分けることができる。

1つ目は、入金よりも支払いが先行することで資金繰りが悪化してしまう「サイト負け」の問題だ。売掛先の入金サイトは1日でも早く、買掛先には支払サイトを1日でも遅くしてもらうよう交渉するとよい。

2つ目は、借入金の状況。会社の体力以上に多額の借金を返済しなくてはならない状況では、資金繰りを圧迫して財務体質の弱体化を招く。借金の返済期間はできるだけ長期で設定し、そして月々の返済額を小さくするよう検討する必要がある。

3つ目は、製造業に多い過剰在庫の問題だ。在庫が増えたことで固定資金の項目がマイナスになっているなら、在庫の圧縮・削減が急務となる。

4つ目が、支払手形の問題だ。支払手形が増えるということは「払うべきお金を先延ばしにしてお金を調達する」ことを意味するが、手形の不渡りが倒産の危険性をはらんでいることを考えると、支払手形での資金調達は極力減らすのが得策といえよう。

お金が減ってしまう原因を見つけて対処し、現金預金を増やして潰れにくい会社にしていくことを、社長は目指していくべきである。

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