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  • 2020.1.28
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書評 科学的な適職

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人生において、仕事は大きな割合を占める。コーネル大学の調査で1500人の老人に「人生で最も後悔したことは?」と尋ねたところ、一番多かったのが「なぜもっと良い仕事を探さなかったのだろう」という未練の言葉だった。日本における類似の調査でも、「働きすぎてプライベートをなくした」と答える老人が多かった。それほどキャリア選択は、人間の幸せを大きく左右する。

ではどうすれば「自分にぴったりの仕事」=「幸福が最大化される仕事」を選ぶことができるのか。科学的なデータにもとづき、具体的に示したのが本書だ。

キャリアの多様化が進み、選択肢が多い現代社会において、職業選択に悩む人は多い。そして多くの人が視野狭窄に陥り、間違った選択をしてしまう。
「幻想から覚める」、「未来を広げる」、「悪を取り除く」、「歪みに気づく」、「やりがいを再構築する」。この5つのステップを順に追うことで、より正しい職業選択が可能となる。
5つのステップをパーフェクトにやり遂げても、「これで良かったのか?」と不安がよみがえる瞬間はかならずやってくる。そのときはふたたび5つのステップを実践し、意思決定を行おう。そうすることで、人生の後悔を少しでも減らせるはずだ。

人はなぜ職業選択を間違えるのか
キャリアアドバイスの多くが役に立たない
「どうしたら自分に合った仕事を選べるのだろう」という問いは、「どうしたら幸せになれるのだろう」という問いとほぼ同意義だ。それほどまでに、仕事が人生に占める位置は大きい。にもかかわらず、多くの人が職業選択を間違え、不幸な人生を送っている。

そもそも人はなぜ職業選択を間違えるのか。それは人類の歴史上、職業選択という悩みが生まれたのはごく最近であり、人の脳には職業を選ぶための能力が備わっていないため。人に「偏見や思い込みに思考が支配されがち」という特性があるのも、誤りに拍車をかける。

世の中にはさまざまなキャリアアドバイスが存在するが、その多くが信憑性に乏しい。なぜならアドバイザー個人の経験や嗜好だけで判断しているからだ。したがってそうしたアドバイスを参考に職業選択を試みても、なかなか正解にたどり着けない。

幻想から覚める
好きを仕事にしてはいけない理由
世の中に流布している役に立たないアドバイスを、著者は「仕事選びにおける7つの大罪」として挙げている。(1)好きを仕事にする、(2)給料の多さで選ぶ、(3)業界や職種で選ぶ、(4)仕事の楽さで選ぶ、(5)性格テストで選ぶ、(6)直感で選ぶ、(7)適性に合った仕事を求める――これらのアドバイスを鵜呑みにしている限り、適職には巡り合えない。

たとえば、よく耳にするところの「好きなことを仕事にしよう」というアドバイス。好きなことなら楽しく続けられるし、努力も苦にならず、おのずと良い結果も生み出せるということで、一見すると正しいアドバイスのように思える。

だが多くの研究データは、「自分の好きなことを仕事にしようがしまいが最終的な幸福感は変わらない」ことを示している。いかに好きな仕事であっても、仕事である以上、面倒な作業や人間関係にまつわる悩みは、どうしてもついて回る。好きな仕事を求める気持ちが強いほど、現実の仕事に対するギャップを感じやすくなり、結果的に幸福感は薄れてしまうのだ。

お金で幸せはどこまで買えるのか
ならば収入で仕事を選ぶのはどうか。やりたいことが見つからないという人の多くが、「ではせめて給料の高い仕事を」と思うのは自然の流れだろう。好きになれる仕事でなくても、お金さえあればプライベートを充実させることができるし、プライドも満足させられる。

ところが、これまた研究によって「給料が多いか少ないかは、私たちの幸福や仕事の満足度とはほぼ関係がない」ことが明らかにされている(r=0.15)。もちろん一定以上の収入は必要だが、私たちの幸福度は年収400~500万あたりから上昇しづらくなるのだ。

専門家の判断はあてにならない
では、これから伸びるとされる業界や職種のなかから仕事を選べば、より良い未来が開けるのではないか。あるいは、性格テストや適性診断で自分に向いている仕事を見つければ、最小の努力で最大の結果が手に入れられるのでは――残念ながら著者の答えはNOだ。理由は、精度の点で疑問があるからである。
現実の仕事に必要な能力は、多種多様かつ複雑に絡み合っており、数回のテストで得られた結果から適職が見つけられるはずもない。

未来を広げる
重視すべきは「自由」や「仲間」
では、どうすれば適職に巡り合えるのか。まず押さえておきたいのが、仕事の幸福度を決めるとされる7つの徳目だ。これは259もの研究結果を分析し導かれたもので、欧米や日本を含むアジア諸国においても重要度は変わらないことがわかっている。以下、羅列してみよう。

(1)自由:その仕事に裁量権はあるか、(2)達成:前に進んでいる感覚は得られるか、(3)焦点:自分のモチベーションタイプに合っているか、(4)明確:なすべきことやビジョン、評価軸はハッキリしているか、(5)多様:作業の内容にバリエーションはあるか、(6)仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか、(7)貢献:どれだけ世の中の役に立つか。

このうち特に「自由」の徳目は、仕事の幸福を決める根本的な要素だ。どんなに好きな仕事でも、上司から一挙一動をチェックされたり細かく指示されたりする職場で、人は幸せを感じにくい。逆に言うと、とりわけ好きではない仕事でも、やり方やペースが自分の裁量で決められる場合、人はわりと楽しく働けるのである。

悪を取り除く
ネガティブ要素を排除する

心が反応した仕事をリストアップしたら、そのなかからネガティブな要素が含まれるものを排除する作業に取りかかろう。脳科学のデータによれば、私たちの頭はネガティブな情報を3〜4秒ほどで取り込むのに対し、ポジティブな情報を長期記憶として取り込むまでには12秒もかかる。ネガティブな感情はそれだけ素早く人間の頭に入り込み、ウイルスのように広がっていく。いくら自由が効く仕事や達成感のある仕事に就いたとしても、働く環境にひとつでもネガティブな要素があれば、「7つの徳目」がもたらすメリットが無になりかねない。

本書で「最悪の職場に共通する8つの悪」として挙げられているのは、「ワークライフバランスの崩壊」「雇用が不安定」「長時間労働」「シフトワーク」「仕事のコントロール権がない」「ソーシャルサポートがない」「組織内に不公平が多い」「長時間通勤」だ。先に挙げたものほど、悪影響を及ぼすと見られている。

適職を絞り込む
「仕事選びにおける7つの大罪」「仕事の幸福度を決める7つの徳目」「最悪の職場に共通する8つの悪」の3つが理解できたら、仕事を絞り込む作業に入ろう。もちろん、すべての要素において満足できるパーフェクトな仕事など世の中にはない。
著者は3つの手法を紹介している。まず「この会社を辞めるべきかどうか」「この転職先に決めるべきかどうか」などの単純な選択に使えるのが、レベル1:プロコン分析だ。これは特定の選択肢について、メリットとデメリットを並べるという分析手法である。

一方で複数の候補から「どれがいいか?」を絞り込みたいときに使えるのが、レベル2:マトリックス分析だ。「仕事の幸福度を決める7つの徳目」と「最悪の職場に共通する8つの悪」のそれぞれの項目を、自分にとっての重要度と重みを掛け合わせて点数化する。こうすると感情に流されない客観的な判断力を上げやすく、米軍の意思決定にも使われている手法だという。

これら2つの手法でもそれなりの効果は得られるが、著者が「これがベストだ」と考えているのは、レベル3:ヒエラルキー分析だ。若干手順が複雑だが、客観的なデータだけでなく主観的な好みも判断材料として組み込まれるため、個人的な問題を解決するのに向いている。まず自分の最終的なゴールを設定し(例:ベストな転職先を探す)、次に「仕事の幸福につながりやすい要素」と「仕事の幸福を破壊する要素」をリストアップする。そしてゴールを達成するために必要な情報(「ベストな転職先を探す」なら希望する転職先)を書き出し、ひとつひとつの要素を付き合わせながら重要度を算出することで、最終的な評価を下すのだ。

歪みに気づく
判断を誤らせる「バグ」を取り除く
ここでいう「バグ」とは、偏った思い込みを指す。行動経済学では「バイアス」とも呼ばれ、正確な判断を妨げる要因の1つだとされている。研究で確認されているものだけでも、なんと170種類以上の「バグ」がある。
「確証バイアス」。これは、自分がいったん信じたことを裏づける情報ばかりを集めてしまう心理のこと。「いまの時代はフリーな働き方が最高だ」と思い込んだ人は、独立して成功を収めた人の情報ばかりを集め、同じような考え方をする仲間とだけ付き合うようになる、というのが典型例である。

時間と視点を操作する
あらゆるバイアスからほどよく距離を置くための方法は、大きく「時間操作系」と「視点操作系」に分けられる。
時間操作系のテクニックとして代表的なのが「プレモータム(事前の検死)」だ。あえて自分の仕事探しが失敗した未来を頭に浮かべることで、バイアスの影響を限界まで減らす。すでに複数の研究で効果が認められており、ペンシルベニア大学などの研究によると、「プレモータム」を使った被験者は、未来の予測精度が平均で30%上がったという。
一方で視点操作系のテクニックでは、「イリイスト転職ノート」がおすすめだ。これは自分の行動を「三人称」として記録するもので、悩みを三人称で書き記した人たちは他人の視点でものごとを考えるのがうまくなり、複数の観点からベストの対策を導き出せるようになったと報告されている。

やりがいを再構築する
失敗しても再チャレンジ
ここまでの作業を通して、ようやく適職に巡り合えたとする。どれだけ綿密な下調べをし、どれだけ戦略的に選択肢を絞り込んでも、人生に失敗は起こり得る。当座は満足できたとしても、「はたしてこの仕事を選んで正解だったのか?」と思う瞬間もあるだろう。
そうした場合どうするか。著者は、仕事を選ぶ段階で使った「ヒエラルキー分析」をふたたび行うとともに、「仕事満足度尺度」という判断法を用いて、自分の仕事をあらためて見つめ直すことをすすめている。仕事満足度尺度は「仕事の幸福を判断する64の問い」から構成され、それぞれを5段階評価することで算出する。

そのうえで「転職したほうがいい」と判断したら、ふたたびステップを踏んでチャレンジすれば良いし、「いまの仕事はそこまで酷くはない」と気づいたら、現在の職場を良くするためにエネルギーを注げばよい。いずれの場合でも、適職に巡り合う方法を知っていれば、人生はより豊かに、幸せなものになるはずだ。

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