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沖縄の軍用地投資の基礎知識。メリット、デメリットを解説

沖縄県には多くの在日米軍施設(日本全体の約70%が沖縄に集中)および自衛隊施設があり、これらの土地を日本政府(防衛省)が借り上げています。

軍用地とは、これら米軍基地や自衛隊基地が設置されている土地のことを指します。沖縄では市町村所有の土地も存在しますが、多くは個人所有の土地であり、この土地を政府が賃貸する形で利用されています。

軍用地の特徴として、敷地内に立ち入ることはできませんが、他の不動産投資と同じように誰でも購入・売却が可能です。近年、沖縄県外からの投資家も増え、全国的に注目されています。現在の平均利回りは、地価の上昇を受けて1.7%から2.2%程度とされています。特にアベノミクスによる金融緩和以降、低金利環境下での安定した投資先として認知されるようになりました。

筆者は不動産会社で沖縄県内の物件を日々500件ほどスクーリング調査し、また定期的に不動産の相談、売却査定業務を行っています。今回は、沖縄の軍用地投資に関心のある一般の方々に向け、2024年の沖縄軍用地市場の動向について詳しくご説明します。

この記事はトーマ不動産株式会社の當間が制作しました。

沖縄における不動産投資全般を解説した記事もあります。

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軍用地のメリットとデメリットを整理

沖縄の軍用地投資は、安定した収益を期待できる一方で、特有のリスクも伴います。そのため、投資を決断するには、メリットとデメリットを正確に把握した上で判断することが重要です。

軍用地投資には、政治的要因や市場性の制約といった独特の課題が存在する点には、特に注意が必要です。

軍用地投資のメリット

軍用地投資には、主に以下のようなメリットがあります。

日本政府が借主であるため賃料が安定的

借地収入は日本政府(防衛省)から支払われるため、滞納のリスクが極めて低いです。この点で他の不動産投資と比較しても信頼性が高いと言えます。

借地料の年次上昇

賃料は防衛省と土地連(軍用地主の団体)との交渉により毎年決定され、平均で約1%程度上昇します。インフレやその他の経済的な変動をある程度カバーできる点も魅力です。

災害リスクや劣化リスクが低い

通常の建物付き不動産とは異なり、地震や台風などの自然災害による建物損壊リスクがなく、建物の劣化による価値減少の心配も不要です。また、借地人(日本政府)との関係も安定しているため、管理負担が軽いのも大きなメリットです。

金融機関からの評価が高い

沖縄の金融機関では軍用地が担保として認められるケースが多く、軍用地ローンを活用して所定倍率での融資を受けやすい点も注目されています。

固定資産税が低い

通常の土地に比べ、軍用地は固定資産税が低く設定されています。そのため、ランニングコストを抑えた運用が可能です。

相続税対策に有用

軍用地は相続財産として評価額が低く見積もられる傾向があり、相続税対策としても効果的です。

売却時の税負担軽減

軍用地を国に売却する際には、5000万円の特別控除が適用されるため、税負担を大幅に軽減することが可能です。

融資を受けやすい

軍用地を担保にした融資(軍用地主ローン)が利用可能で、資金調達の選択肢が広がります。

軍用地投資のデメリット

一方で、軍用地投資には特有のデメリットがあります。投資を検討する際には、必ず押さえておいてください。

借地料上昇率の限界

借地料の上昇率は沖縄全体の地価上昇率よりも低く、毎年の交渉結果によって決まります。そのため、市場動向とは無関係に一定の範囲に収まる傾向があります。収益物件としての利回りも他の不動産投資と比較すると低いのが現状です。

政治的要素の影響

国防に関わる土地であるため、基地縮小や返還問題など政治的な要因が投資環境に影響を及ぼす可能性があります。例えば、基地返還が決定された場合にはその土地の価値や運用計画が大きく変わるリスクがあります。

地主会の加入要件の厳格化

軍用地主会への加入が難しくなりつつあります。地主会に加入できない場合は沖縄防衛局との直接契約となり、調整や手続きが煩雑になることがあります。

返還リスク

基地返還が実現した場合、その土地の用途が制限される可能性があるため、新たな運用方法を模索する必要があります。

軍用地投資が向いている人

軍用地投資は次のような方に適しています:

  • リスクを抑えつつ、銀行預金や国債よりも高い利回りを求める人
  • 長期的な視点で安定した収益を確保したい人
  • 余剰資金を運用したい人
  • 相続税対策を重視している人

軍用地賃料の交渉プロセス

米軍や自衛隊の基地運用の安定性には土地所有者の協力が不可欠です。そのため、防衛省と土地連の間で毎年賃料交渉が行われます。賃料の原資は税金で賄われているため、昨今の財政難の影響もあり、上昇率は年1%程度が主流となっています。沖縄県内の一般的な土地価格の上昇率が高い中で、この差をどう捉えるかが投資判断のポイントです。

軍用地投資の市場動向

2024年11月時点の主な軍用地の相場倍率は以下の通りです。倍率とは、年間地料の何倍で取引されているかを示す指標であり、返還リスクの少ない施設や開発計画が進む施設ほど高い傾向があります。

  • 嘉手納飛行場:49倍~51倍
  • 嘉手納弾薬庫:43倍~45倍
  • 普天間飛行場:40倍~43倍
  • 航空自衛隊那覇基地:50倍~53倍
  • 陸上自衛隊:47倍~50倍
  • 那覇空港用地:51倍~54倍

以前は那覇空港用地が人気でしたが、管轄が国土交通省になるため安全保障上の予算配分の関係から防衛省管轄の米軍施設に比べ賃貸料の上昇率が低い傾向にあります。

軍用地が金融商品として本格的に注目され始めたのはバブル崩壊後から始まり、2008年のリーマンショック後です。当時、株価の大幅下落を受け、利回り2~3%と安定性のある軍用地が投資家の関心を集めました。土地を細分化して販売する不動産業者が登場し、インターネットを通じて全国からの購入希望者が増加しました。

今度の動向

筆者が提携する軍用地専門業者へのヒアリング調査では、軍用地の取引相場が低迷している現状が伺えます。相場より安い物件は買い時かもしれませんが、取引相場のピークは2017年から2018年頃だったと感じています。

沖縄県不動産鑑定士協会の市場データを見ても、利回りと金利差の縮小がみられます。今後日銀の政策金利上昇により、逆ザヤが発生するケースも予想されます。嘉手納基地のような施設では需給バランスが軟調になりやすく、高値で購入した業者や個人は出口戦略が取りづらい状況も出てきそうです。

融資動向

軍用地投資は、融資を受けてまで行う場合、収益性が引き合わないため推奨できません。また、フルローンによる全額融資は現状では厳しい状況です。最低でも物件価格の2割程度の頭金を準備しておくことが必要です。

さらに、諸費用については金融機関が融資を行わないため、頭金と合わせた自己資金が必須です。筆者が金融機関の融資担当者と面談し、ヒアリングを行ったところ、融資条件として「自己資金10%以上」や「自己資金比率と担保の重視」が挙げられました。

融資倍率については、施設の種類や返還予定の有無によって異なります。例えば、返還予定のない航空自衛隊那覇基地の「特A」は50倍、一方で返還予定地は17倍とされています。不動産融資審査の基準は金融機関ごとに異なるため、ご自身で詳細を確認することをお勧めします。

軍用地購入の税金や諸費用

軍用地購入には、以下の費用が別途必要となります。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 司法書士による移転登記費用
  • 不動産取得税

基本的には通常の不動産取引と同様の手順で行われます。

注意したい物件

以下のような物件は、通常より安く購入できる可能性がありますが、初心者の方は注意が必要です。

  1. 返還予定の軍用地
  2. 共有物件
  3. 現況が墓地の土地
  4. フェンス外の物件

購入の際には、これらのリスクを十分確認しましょう。

筆者の投資経験

筆者の経験では、収益性の低さより安定性を重視する方に軍用地は向いています。一方で、収益性の高さを求める方は他の収益物件を好む傾向があります。複数の収益物件を保有する顧客からの感想としても、「収益性が低い」という意見が多いです。

筆者自身も軍用地を保有していますが、地価上昇局面では収益性が低いと感じます。それでも資産ポートフォリオ全体における「守り」として一定の割合を置いています。読者の皆様も、今後の市場動向を注視しながら、資産全体のバランスを考慮し、投資比率を検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ

沖縄の軍用地投資は、安定性を重視する投資家にとって非常に魅力的な選択肢である一方、特有のリスクも伴う投資です。本記事ではその概要と利点、課題、投資を成功させるポイントを整理しました。

軍用地投資の最大の魅力は、日本政府が借主であることから賃料が安定的で、滞納リスクが極めて低い点です。また、賃料が毎年平均1%程度上昇する仕組みや、自然災害や建物劣化の影響を受けない特徴、さらに相続税対策や固定資産税の軽減といった多くのメリットがあります。加えて、金融機関から高い評価を受けるため、融資を受けやすいという利点も挙げられます。

一方で、利回りが比較的低く、地価の上昇率と比べて賃料の上昇率が抑えられる点が収益性の課題です。また、政治的要因や基地返還リスクなど、投資環境に影響を与える外部要因も無視できません。さらに、地主会への加入要件の厳格化や、返還予定地の活用方法が限定される可能性も注意が必要です。

こうしたメリットとデメリットを踏まえ、軍用地投資は長期的な視点で安定収益を求める方や相続税対策を重視する方に向いています。一方で、高い収益性を求める投資家には不向きといえるでしょう。初心者の方は、返還予定地や共有物件などリスクの高い土地への投資を避けるべきです。

結論

軍用地投資は安定性を求める投資家にとって魅力的な選択肢です。全体のポートフォリオの中で適切な位置付けを考えることが大切です。投資先としての軍用地の特性を十分理解した上で、戦略的に運用することをお勧めします。

また沖縄では、軍用地投資とは別に、米軍人・軍属向けの賃貸住宅投資も行われています。「外人住宅」「ミリタリーハウジング」などと呼ばれる投資手法で、詳しくは以下の記事で解説しています。

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