沖縄県には多くの在日米軍施設(日本全体の約70%が沖縄に集中)および自衛隊施設があり、これらの土地を日本政府(防衛省)が借り上げています。これらの土地の所有権は個人が持ったまま、国から賃借料(軍用地料)を受け取ることができます。こうした仕組みを活用した投資が軍用地投資です。
軍用地とは?
軍用地とは、米軍基地や自衛隊基地が設置されている土地のことです。沖縄では多くが個人所有であり、この土地を政府が賃貸する形で利用されています。敷地内には立ち入れませんが、土地自体は誰でも購入・売却ができます。
軍用地投資の特徴は?
軍用地投資の最大の特徴は、借主が日本国政府であるという点です。民間賃貸では生じうる賃料滞納や夜逃げのリスクがなく、国家財政が続く限り、賃借料は必ず支払われます。表面利回りは現在1.9〜2.2%程度と高くはありませんが、手間がかからず、リスクが極めて低い守りの資産として一定の支持を集めています。
筆者はトーマ不動産株式会社(沖縄県)に勤務し、宅地建物取引士として軍用地を含む不動産売買に18年以上携わっています。日々500件ほどの物件調査と売却査定業務を行いながら、軍用地専門業者へのヒアリングも定期的に実施しています。本記事では、2026年現在の沖縄軍用地市場の実態を率直にお伝えします。
沖縄における不動産投資全般を解説した記事もあります。
軍用地投資の倍率と利回りの仕組み

軍用地売買では、価格の基準として「倍率」という独自の指標が使われます。一般的な不動産の坪単価・㎡単価に相当するもので、施設ごとに相場が異なります。
倍率と利回りの計算方法
倍率と利回りは、次の計算式で変換できます。
利回り(%)= 100 ÷ 倍率
例えば航空自衛隊那覇基地の倍率が50倍であれば、100÷50=利回り2%になります。倍率が低い施設ほど利回りは高く見えますが、人気が低い(返還リスクがある等)理由がある場合が多いため、倍率だけで判断することは禁物です。
「利回りの計算式は、利回り=100÷倍率です。那覇基地の倍率が50倍なら利回りは2%になります。この計算式さえ覚えれば、一般の投資家の方にも利回りの比較がしやすくなります」
トーマ不動産株式会社 當間(軍用地専門業者へのヒアリングをもとに)
施設ごとの倍率の相場(2026年1月現在)
筆者の見解による倍率(やや保守的な水準)
- 嘉手納飛行場:49倍〜51倍
- 嘉手納弾薬庫:44倍〜46倍
- 普天間飛行場:39倍〜44倍 ※返還予定地のため、跡地利用を考慮した価格形成となります
- 航空自衛隊那覇基地:50倍〜53倍
- 陸上自衛隊:47倍〜50倍
- 那覇空港用地:51倍〜54倍
以前は那覇空港用地が人気でしたが、管轄が国土交通省になり、防衛省管轄の米軍施設と比べて賃借料の上昇率が低い傾向となり、他施設との差が縮小しています。
なかでも航空自衛隊那覇基地は、那覇空港との滑走路共用という構造上の理由から返還リスクが極めて低く、高倍率が安定して維持されています。売却相場の詳細については以下の記事でも解説しています。
軍用地投資のメリットとデメリット

軍用地投資は、安定した収益を期待できる一方で特有のリスクも伴います。投資を決断するには、メリットとデメリットを正確に把握した上で判断することが重要です。
軍用地投資のメリット
日本政府が借主であるため賃料が安定的
賃借料は日本政府(防衛省)から支払われるため、滞納リスクが極めて低いです。民間賃貸で生じうる家賃未払いや退去トラブルがなく、信頼性は他の不動産投資と比べても際立っています。
賃借料が毎年増額される
賃借料は防衛省と土地連(軍用地主の団体)との交渉により毎年決定されます。昨今は自衛隊施設で年1%、米軍施設では施設によって1.4〜1.5%程度の増額が続いています。10年保有すれば地代は複利的に積み上がります。
災害リスクや劣化リスクがない
建物のない土地への投資であるため、地震・台風による建物損壊リスクや老朽化による価値減少の心配がありません。南海トラフ地震が起きても軍用地への直接影響はほとんどなく、管理の手間もほぼゼロです。
担保として金融機関から評価される
沖縄県内の金融機関では、軍用地を担保にした「軍用地ローン」を取り扱っています。軍用地を現金化しなくても担保として借り入れを起こすことができます。いざというときの流動性の確保として機能する点は、現金に近い使い勝手があります。ただし、この制度を利用できるのは原則として沖縄県在住者に限られます。
固定資産税が低い
軍用地は通常の宅地と比べ固定資産評価額が低いため、固定資産税も年数千円〜1万円程度に抑えられるケースが多く、ランニングコストは非常に低水準です。
相続税対策に有用
軍用地の相続税評価額は、「固定資産評価額 × 公用地倍率 × 0.6」という計算式で算出されます。現金をそのまま相続すれば評価額は額面通りですが、軍用地に換えておくことで評価額を大幅に圧縮できます。
特に北部エリア(恩納村・宜野座村方面)やキャンプ・ハンセンのような施設は地目が山林・原野であることが多く、固定資産評価額が低いため、圧縮率が高い傾向があります。
「計算式は固定資産評価額×公用地倍率×0.6です。私が保有する航空自衛隊那覇基地の物件で試算したところ、圧縮効果は約53%でした。現金で持っているよりかなり有利な数字です。なお、相続発生直前(1〜2年前)の購入は国税庁の通達により時価評価される場合があるため、5〜6年前からの計画的な対策をお勧めしています」
トーマ不動産株式会社 當間(軍用地専門業者へのヒアリングをもとに)
なお、タワーマン節税は国税庁の通達により事実上封じられましたが、軍用地の評価圧縮は現在も有効な手法として活用されています。具体的な節税シミュレーションは専門の税理士への相談も含め、トーマ不動産にご相談ください。
国への売却時に5,000万円の特別控除
軍用地を国(防衛省)に売却する際には、譲渡所得から5,000万円の特別控除が適用されます。民間への売却には適用されないため、売却先によって税負担が大きく変わります。
軍用地投資のデメリット
一方で、軍用地投資には特有のデメリットがあります。投資を検討する際には必ず押さえておいてください。
利回りが他の投資商品と比べて低い
表面利回りは現在1.9〜2.2%程度です。低金利時代には「預金よりはるかに有利」という評価でしたが、現在は個人向け国債(10年変動)が1.4%前後、社債では2%超の商品も出ており、軍用地の利回りの優位性は相対的に薄れています。金融機関から借り入れして購入した場合、金利との逆ざやが生じるリスクもあります。
政治的要素の影響
国防に関わる土地であるため、基地縮小や返還問題など政治的な要因が投資環境に影響を及ぼす可能性があります。基地返還が決まった場合、土地の価値や運用計画が大きく変わるリスクがあります。ただし、返還が近い土地については跡地の再開発計画が立てられる場合もあり、一概にデメリットとはいえない側面もあります。
地主会の加入要件の厳格化
軍用地主会への加入が難しくなりつつあります。加入できない場合は沖縄防衛局との直接契約となり、手続きが煩雑になることがあります。
返還リスク
返還予定のある施設を購入した場合、跡地利用の区画整理に伴って面積が減少する「減歩」が発生します。例えば100坪の土地が減歩率40%で60坪になるケースがあります。元の面積が小さい場合、区画整理後の活用が難しくなることがあります。
軍用地投資は儲からない?正直な評価

「軍用地投資は儲からない」という声をよく耳にします。この点については、率直にお伝えします。
利回り2%前後という数字は、高収益を狙う不動産投資(例:賃貸アパートの表面利回り7〜10%)と比べると、確かに低い水準です。キャピタルゲイン(値上がり益)を狙える局面も、低金利・デフレ時代の2016〜2018年頃がピークで、現在は期待しにくい状況です。
「軍用地は、不動産の債券版というイメージが近いと思います。手間がかからない分、利回りも低い。リスクもそんなにない。守りの資産という位置づけです。収益性の高さより安定性を重視する方に向いていますし、積極的に増やしたいなら株やより利回りの高い収益アパートに振り向けるべきでしょう」
トーマ不動産株式会社 當間(軍用地専門業者へのヒアリングをもとに)
「儲からない」は半分正しく、半分は誤解です。軍用地は高収益を得る手段ではなく、資産を守りながら現金よりやや有利に運用するための手段です。それでも持つ価値がある理由として、次の3点が挙げられます。
- 手間ゼロで安定的な地代が入り続ける
- 担保に使えるため、いざというときの流動性がある(沖縄県在住者の場合)
- 現金のまま相続するより相続税評価額を大きく圧縮できる
逆に、金融機関からの借入で購入する・高利回りを期待する・短期のキャピタルゲインを狙う、といった目的には向いていません。この判断軸を明確に持った上で、軍用地の購入を検討することをお勧めします。
軍用地はいくらから買える?100万円・300万円帯のリアルと注意点【當間社長インタビュー】

軍用地投資に興味を持ったとき、最初に気になるのが「いくらから買えるのか」という点です。
インターネット上で見かける「100万円から買える」という情報も間違いではありませんが、実際に投資として成立するのかどうかは別の問題です。
今回は、トーマ不動産の當間社長に、軍用地投資の「現実的な予算ライン」について詳しく伺いました。
まず率直に、軍用地は100万円からでも投資として成立しますか?
當間社長:100万円でも購入自体は可能です。ただし、投資として魅力があるかというと、正直難しいですね。
理由はシンプルで、諸費用の負担が大きくなるからです。不動産の購入には、物件価格とは別に以下のような費用がかかります。
- 仲介手数料(または売主物件なら価格に含まれる)
- 登記費用(司法書士報酬・登録免許税)
- 印紙代など
金額が小さいほど、これらの費用の「割合」が重くなります。
編集部:具体的には、どれくらいの収益になるのでしょうか?
當間社長:仮に100万円の軍用地を利回り2%で考えると、年間の地代収入は約2万円です。
この2万円という数字をどう捉えるかですね。
お小遣い程度と考えるのか、それでも安定収入として価値を感じるのか。
ただ、投資として積極的に収益を狙うには、少し物足りない水準だと思います。
費用と収益を考えると、100万円はやや厳しい印象ですね。
當間社長:そうですね。特に仲介手数料がかかるケースだと、初期費用の回収に時間がかかります。売主物件であれば登記費用のみで済む場合もありますが、それでも数年単位で回収が必要です。
ですので100万円帯は、
- 軍用地を試しに持ってみたい
- 少額で経験を積みたい
- 少しずつ買い足していきたい
といった目的であれば成立しますが、収益目的の投資としては魅力が薄いというのが正直なところです。
では、現実的に投資として考えるなら、いくらくらいが目安になりますか?
當間社長:ひとつの目安としては、300万円以上ですね。
300万円を超えてくると、
- 諸費用の割合が下がる
- 年間収益が数万円単位になる
- 投資としての実感が出てくる
という違いが出てきます。
さらに上の価格帯だとどうなりますか?
當間社長:例えば500万円くらいになると、年間10万円前後の地代収入になります。このあたりから、投資としての位置づけがはっきりしてきます。
ただし重要なのは、軍用地は利回りが2%前後と低いので、「大きく儲ける投資」ではなく「安定して持つ資産」という考え方になります。
編集部:少額で買う人には、どのような特徴がありますか?
當間社長:100万円や300万円といった小口で買う方は、
- 現金を少しずつ資産に変えていきたい
- 銀行預金の代わりに保有したい
- 将来的に買い増していきたい
といった方が多いですね。
実際に、100万円ずつ積み上げて複数の軍用地を持つ方もいらっしゃいます。
編集部:最後に、「いくらから買えるか」で悩んでいる方へアドバイスをお願いします。
當間社長:「いくらから買えるか」も大事ですが、それ以上に大切なのは「いくらから投資として意味があるか」という視点です。
まとめると、
- 100万円:購入は可能だが投資としては弱い
- 300万円:現実的なスタートライン
- 500万円以上:投資としての安定感が出る
このように考えていただくと分かりやすいと思います。
編集部まとめ
軍用地は確かに100万円からでも購入可能です。しかし実際には、
- 諸費用の負担
- 収益の小ささ
- 投資効率
を考えると、300万円以上がひとつの目安となります。
軍用地投資は「高利回りを狙う投資」ではなく、
安定性を重視した「守りの資産」です。
その前提を理解したうえで、自分の目的に合った予算帯を選ぶことが重要です。
當間社長インタビュー・フルバージョン
軍用地投資が向いている人・向いていない人

軍用地投資は誰にでも勧められる手法ではありません。目的が合致するかどうかが、主要な判断基準となります。
向いている人
- 銀行預金より少し有利な利回りで、手間なく資産を運用したい
- 長期的な視点で安定した収益を確保したい
- 余剰資金があり、すぐに現金化する予定がない
- 相続税対策として、現金資産の評価額を圧縮したい
- 株価や不動産市況の値動きを日々気にしたくない
向いていない人
- 金融機関からの借入で購入を考えている(金利との逆ざやリスクがある)
- 利回り5%以上の高収益を期待している
- 短期売却でキャピタルゲインを狙いたい
- 3〜5年以内に資金が必要になる予定がある
- 沖縄県外在住で、軍用地ローンの活用を前提にしている
軍用地投資の市場動向と倍率の変化

軍用地が金融商品として本格的に注目され始めたのはバブル崩壊後であり、2008年のリーマンショック後に利回り2〜4%・安定性のある投資先として全国の投資家に広まりました。アベノミクスによる超低金利時代(2013〜2022年頃)には、金融機関のフルローンで購入するケースも珍しくなく、倍率はピーク時に55倍を超える施設もありました。
倍率低下の背景
取引相場のピークは2017〜2018年頃で、その後は調整局面が続いています。現在は嘉手納飛行場でも48倍台の売り物件が見られます。この倍率低下には、複合的な要因があります。
「倍率の調整は最近始まったことではなく、5〜6年ほど続いています。売り圧力の主な原因は相続案件です。相続税の申告期限(10か月)に追われて、多少倍率を下げてでも早く売りたいというケースが出てきます。加えて金利上昇局面では、個人向け国債や社債といった他の金融商品が相対的に魅力を増すため、軍用地への新規需要が落ちやすくなります」
トーマ不動産株式会社 當間(軍用地専門業者へのヒアリングをもとに)
需要と供給の両面から見ると、供給側(売りたい人)が増えやすく、需要側(買いたい人)は他商品へ分散しやすい構造にあります。ただしこのことは「今すぐ手放すべき」を意味するものではありません。借入なし・相続取得・長期保有目的の方は、慌てる必要はないでしょう。
今後の動向

上記のグラフは軍用地専門業者へのヒアリングによる現況・先行き期待値のため一概には言えませんが、市場データを見ても取引状況が低迷していることが分かります。今後、日銀の政策金利がさらに上昇した場合、逆ざやが発生するケースも予想されます。嘉手納基地のような地主の多い施設では需給バランスが軟調になりやすく、高値で購入した場合は出口戦略が取りづらくなる状況も出てきそうです。
融資動向
軍用地投資は、融資を受けて行う場合、収益性が引き合わないため現時点では推奨できません。フルローンによる全額融資は現状では厳しい状況です。購入を検討する場合は最低でも物件価格の2割程度の頭金と諸費用の全額自己資金を準備しておくことが必要です。
融資倍率は施設の種類や返還予定の有無によって異なります。返還予定のない航空自衛隊那覇基地の「特A」は50倍、一方で返還予定地は17倍とされています。金融機関ごとに基準が異なるため、詳細はご自身でご確認ください。
軍用地購入の諸費用
軍用地購入には通常の不動産取引と同様、以下の費用が必要です。売り主物件(不動産会社が売り主)であれば仲介手数料がかからず、諸費用を10万円台前半に抑えられるケースもあります。
- 仲介手数料(売り主物件の場合は不要)
- 印紙税
- 司法書士による移転登記費用
- 不動産取得税
注意したい物件
以下のような物件は通常より安く購入できる可能性がありますが、初心者の方は注意が必要です。
- 返還予定の軍用地
- 共有物件
- 現況が墓地の土地
- フェンス外の物件
購入の際には、これらのリスクを十分確認しましょう。
筆者の投資経験
筆者の経験では、軍用地は収益性の高さより安定性を重視する方に向いています。複数の収益物件を保有する顧客からは「収益性が低い」という声が多い一方、「手間がかからないのがいい」という評価も根強くあります。
筆者自身も軍用地を保有していましたが、地価上昇局面では収益性が低いと感じていました。資産ポートフォリオ全体の「守り」として一定割合を置く位置づけで捉えており、現在は法人内のポートフォリオ見直しにより他の不動産へ資金を組み替える方針をとっています。読者の皆様も市場動向を注視しながら、資産全体のバランスで投資比率を検討してみてください。
まとめ

沖縄の軍用地投資は、安定性を重視する投資家にとって魅力的な選択肢である一方、特有のリスクも伴います。本記事の要点を整理します。
- 利回りは1.9〜2.2%前後。「儲からない」は半分正しいが、「損をする」とは別の話
- 借主は日本政府。賃料滞納リスクがなく、手間ゼロで保有できる
- 相続税評価額を約50%圧縮できるケースがある(施設・地目による)
- 倍率は5〜6年前のピークから調整中。借入ありの場合は逆ざやに注意
- 金融機関からの借入で購入するのは、現状では推奨できない
- 目的(相続対策・守りの資産形成)が合致する方に有効な手法
また沖縄では、軍用地投資とは別に、米軍人・軍属向けの賃貸住宅投資も行われています。「外人住宅」「ミリタリーハウジング」などと呼ばれる投資手法で、詳しくは以下の記事で解説しています。
沖縄の軍用地売却・購入・相続税対策はトーマ不動産まで
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