不動産売却 基礎知識

不動産の「告知事項あり物件」についてわかりやすく説明【宅建士解説】

2024年9月19日

今回は、不動産の告知事項についてご説明します。

不動産物件を探していると、相場より安い物件を見かけることがあります。物件の詳細を見ると「告知事項あり」「詳細はお問い合わせください」などの記載がされているかもしれません。

よくわからないから問い合わせをやめようと思う方も多いでしょう。また、気づかずに問い合わせをしてしまい、不動産会社から説明を受けたケースもあるかもしれません。今回は、そのような不動産の告知事項について解説させていただきます。

この記事はトーマ不動産株式会社の當間が制作しました。

不動産の「告知事項」とは?

まず、告知事項とは、買主が知っていれば購入しないかもしれない物件の重大な瑕疵や事実のことを指します。聞き慣れない言葉かもしれませんが、不動産取引には重要な概念です。簡単に言うと「訳あり物件」ともいえるでしょう。

例えば、過去にその物件で自殺があった、近くにお墓がある、といった恐怖心を感じさせるものが思い浮かぶかもしれません。

しかし、告知事項に該当するものは他にも様々あります。多くの人にとってこの「告知事項」の意味は曖昧で、理解が不足していることが少なくありません。順を追って解説していきます。

ポイント

告知事項とは、不動産取引において買主や借主に対して開示すべき重要な情報を指します。この情報は、買主や借主が物件を購入・賃借するかどうかの判断に大きな影響を与える可能性があります。例えば、過去にその物件で重大な事件が発生した場合や、物件に重大な欠陥がある場合、それを隠したまま取引を行うと、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。不動産業者は法律に基づき、これらの重要な事実を告知する義務を負っています(宅地建物取引業法第35条)。告知事項を適切に把握しないまま契約を結ぶと、後に大きな後悔を生む結果となるかもしれません。

不動産の告知事項に該当する瑕疵の種類

一般に、不動産広告では「告知事項あり」とだけ掲載され、その詳細な内容については問い合わせするまでわかりません。

いったいどんな告知事項があるのか気になりますが、実はこの章で紹介するように、幅広い類型があり、場合によっては複数の告知事項があるケースも存在します。

心理的瑕疵

最も一般的な告知事項として「心理的瑕疵」があげられます。

これは、精神的に抵抗を感じるような事例を指します。例えば、その物件で殺人事件や自殺、孤独死などがあった場合です。

2021年に国土交通省よりガイドラインが公表されましたが、細かい事象にすべて対応できているわけではありません。例えば、建物が取り壊された土地取引や、病院での死亡、転落による死亡などについては、現状では対応が追いついていないのです。

国土交通省『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』(2021年10月8日公表)では、対象不動産における自然死・日常生活中の不慮の死は、売買・賃貸とも原則として告知不要と整理されています(例外あり・詳細は同ガイドライン参照)。

自然死には、病気や高齢者の孤独死などが該当し、日常生活の中で生じた不慮の死には、階段からの転落事故や食事中の窒息死などが含まれます。

裁判所は、住宅が人間の生活拠点である以上、自然死などが発生することは当然のことと考え、これを「瑕疵」とは見なさないという立場を示しています。

特に、単身高齢者の孤独死について、事故物件として扱われる誤解が多かったため、ガイドラインで「自然死は説明不要」と定義された意義は大きいです。

ただし、取引の対象となる不動産において過去に人が死亡し、特殊清掃が必要となった場合や、大規模なリフォームが行われた場合には、告知義務があります。

また、賃貸住宅の場合、心理的瑕疵に該当する事象が発生してから概ね3年経過した物件については、原則として告知が不要とされていますが、売買に関してはその期限が明示されていません。

さらに、アパートやマンションなどの隣接住居、および日常生活で通常使用しない集合住宅の共用部分における自然死などの事例も、原則として告知不要とされています。

ただし、心理的瑕疵については判断が難しく、グレーな部分が多いため、以下の記事も参照してください。

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共用部分の使用について

共用部分の使用例としては、ベランダの他に、共用の玄関、エレベーター、階段などがあります。これらの部分は、買主や借主が通常使用すると考えられる場所です。また共用部分の範囲・使用可否は管理規約で定まるのが原則で、具体的に使用可能かどうかは標準管理規約・各管理規約に従って判断することになります。使用を認められた部分以外については、特別な取り決めがない限り使用を控えるべきでしょう。

告知義務について

告知義務が必要となるのは、事故などが発生した場合や、特に影響が大きい事象があった場合です。

人が亡くなった場合、発覚からの経過期間や状況に関わらず、買主や借主から質問された際には、必ず告知する必要があります。

また、社会的に必要とされる事項についても、特別な事情が認識された場合には告知が求められます。

環境的瑕疵

大阪市西成区天下茶屋の崖地崩落現場

環境的瑕疵とは、物件の周辺環境が不快感や嫌悪感を与えるような状況を指します。

例えば、近隣に宗教団体や指定暴力団が住んでいる、ゴミ処理場や動物園が近くにあり匂いが気になる、道路沿いで騒音がうるさい、幼稚園や学校の近くである、といった項目が該当します。

地盤の問題

土地履歴によっては地盤が弱く、将来的な建物の沈下や地盤沈下のリスクが考えられるケースもあります。上の写真は大阪市西成区天下茶屋の崩落現場ですが、現在の建築基準法に適合していない擁壁の場合などは、告知すべき状況であるといえます。

騒音問題

近隣に繁華街や工場、鉄道、高速道路があり、日常的に大きな騒音が発生する場合があります。これにより、居住者の生活の質が低下し、物件の評価に影響する場合は、告知事項として取り扱うケースが多いでしょう。

自然災害のリスク

洪水や津波、土砂崩れが発生しやすい地域に物件が所在する場合、それらのリスクが環境的瑕疵=自然災害リスクとなり得ます。最近の重要事項説明では、自治体のハザードマップなどを添付して、具体的に自然災害のリスク予測を説明する運用が一般的です(法的には水害ハザードマップ等を「提示等」することが義務化)。

治安の問題

物件周辺での治安が悪化している場合(犯罪の多発、暴力団事務所の存在など)、その情報も告知事項として扱われる事があります。

嫌悪施設等

近隣にゴミ処理施設、工場、下水処理場などがあることで、悪臭が発生し、生活環境が悪化することがあります。嫌悪施設等がある場合は、告知事項として取り扱います。

また、お稲荷さんやお墓などの信仰や仏事に関連する施設がある場合も含まれます。さらに、環境的瑕疵は恐怖心を与えることもあり、心理的瑕疵に含まれるケースもあります。

物理的瑕疵

シロアリの被害跡

物理的瑕疵とは、物件そのものに物理的な不具合があることを指します。不動産の告知事項として、売主や貸主はこれらの物理的瑕疵について事前に買主や借主に知らせる必要があります。

構造上の欠陥

建物の主要構造部(基礎や構造を支える柱)に問題がある場合に該当します。また、外壁など雨水を防止する機能に問題があり、雨漏りや水漏れがする場合も告知事項として取り扱う必要があります。

シロアリ被害

建物の木造部分がシロアリに侵食されている場合も、売主は買主に対して告知する必要があります。シロアリ被害があると建物の強度が低下して倒壊しやすくなりますが、外からは見えにくいため、契約前に知っておく必要があるからです。

老朽化による損傷

建物の老朽化によって、外壁や内装、設備にひび割れ、腐食、剥がれなどの損傷がある場合。これらの損傷が建物の使用に支障をきたす程度の場合、物理的瑕疵とみなされます。

土中埋設物等

敷地の土中にゴミやガラ等が埋まっている場合も告知事項となります。古い浄化槽が撤去されずに埋まっているような場合も告知事項として取り扱います。

物理的瑕疵であっても、一見しただけではわからない場合が多いため、建物の調査や不動産会社への確認も行ってください。

法的瑕疵

法的瑕疵とは、建築基準法、都市計画法、消防法などの法律に違反している状態を指します。例えば、建ぺい率や容積率が適切でない場合や、非常口や消火扉が適切に設置されていない場合などが該当します。

再建築不可物件

再建築できない場合や建築制限がある場合は、重要事項説明(宅地建物取引業法第35条・施行令・施行規則の対象)に含まれるため、説明義務があります。例えば、接道義務(敷地が幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していないと建築が認められない)を満たさない場合などが該当します。再建築不可物件は市場での価値が低いため、事前に告知しておく必要があります。

抵当権や差押え

物件に他者の抵当権が設定されている場合や、差押えがされている場合。これにより、売買や所有権の移転が制限され、場合によってはその物件が競売にかけられる可能性があります。

借地権や地役権の存在

土地が第三者に貸されている場合や、他者が土地を特定の目的で使用する権利(地役権)が存在する場合。これにより、自由に土地を利用できないことがあります。また、借地権の更新問題や、地役権の解除が難しい場合もトラブルの原因となります。

不法占有

物件に違法に占有者が住んでいる、または土地が不法占拠されている場合、物件の使用が妨げられたり、占拠者を追い出すための法的手続きが必要となります。こういうケースでも、必ず告知しておく必要があります。

これらの違反があると、住宅ローンの融資を受けられない可能性があるため、事前に不動産会社に確認することが大切です。

告知事項の重要性

不動産取引において、告知事項は非常に重要な役割を果たします

告知事項が適切に開示されない場合、購入者や借主は後に重大な損害を被る可能性があります。

例えば、告知されなかった瑕疵が発覚した場合、契約の取り消しや損害賠償請求が発生することがあります。このため、契約時には告知事項について十分に確認し、不明点があればその場で不動産業者に質問することが大切です。

また、告知事項に関する記録を残しておくことも重要です。契約書には、告知された事項が正確に記載されているかを確認し、口頭での説明だけでなく、書面での確認を怠らないようにしましょう。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。

まとめ:不動産取引において告知事項を確認することの重要性

不動産取引は、人生において大きな決断の一つです。物件の魅力や価格だけに目を奪われず、告知事項に関する情報をしっかりと確認することで、後々のリスクを回避することができます。告知事項を適切に理解し、契約前に十分な調査と確認を行うことが、不動産取引を成功させるための鍵となります。

以上で、不動産の告知事項に関する解説を終わります。物件選びや取引を進める際には、専門家に相談したり、告知事項の確認を怠らないようにしましょう。

また、沖縄県内で瑕疵物件の売却をお考えの場合は、トーマ不動産でご相談に応じています。

法的に安全な取引を行うために、さまざまな観点からアドバイスいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

参考文献

  1. 国土交通省(2021-10-08)『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』。 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00061.html (最終確認:2025-09-18)
  2. 国土交通省(2021-10-08)『ガイドラインの概要・資料(PDF)』。 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001427025.pdf (最終確認:2025-09-18)
  3. 電子政府(e-Gov)(最終改正日は法令ページ参照)『宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等)』。 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176 (最終確認:2025-09-18)
  4. 国土交通省(2020-10-01施行)『宅地建物取引業法施行規則の一部改正(水害リスク情報の重要事項説明への追加)Q&A・関連資料』。 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_fr3_000074.html (最終確認:2025-09-18)
  5. 日本不動産学会誌・寄稿(2020-07-17公布/2020-10-01施行の改正解説)『宅地建物取引における災害を見据えた説明』。 https://www.lij.jp/html/jli/jli_2020/2020summer_p025.pdf (最終確認:2025-09-18)
  6. 電子政府(e-Gov)(最終改正日は法令ページ参照)『建築基準法 第42条・第43条(道路・接道義務)』。 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201/ (最終確認:2025-09-18)
  7. 国土交通省(2024-06-07)『マンション標準管理規約(単棟型)』。 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001746766.pdf (最終確認:2025-09-18)
  8. 国土交通省(年次不詳・配布資料)『重要事項説明項目の分類(参考資料)』。 https://www.mlit.go.jp/common/000028836.pdf (最終確認:2025-09-18)

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