軍用地の利回りは、表面利回りでおおよそ2%前後が目安です。1.9%から2.2%程度のレンジに収まることが多く、一般的なアパート投資と比べると、数字だけ見れば見劣りするのは確かです。
それでも、軍用地が投資対象として成立している理由は、利回りの高さではなく「仕組みの安定性」にあります。軍用地は国が土地を借り上げ、地代を支払う構造です。借主が国であるため、地代の不払いも空室も発生しません。當間社長(トーマ不動産)はこの性質を「債券に近い」と表現します。
また、軍用地では「倍率」という独自の価格指標が市場の共通言語です。倍率50倍であれば利回りは2%、倍率60倍になれば利回りは約1.6%と計算でき、この倍率を理解しているかどうかが、割高・割安の判断を左右します。
この記事では、沖縄で軍用地売買を専門とするトーマ不動産・當間社長へのインタビューをもとに、軍用地の利回りの実態・投資が成立する理由・失敗しないための判断基準を、順を追って解説します。「軍用地は儲からない」という声の意味するところ、300万円から500万円という現実的な投資金額の目安についても取り上げています。
利回りという数字の意味を正しく理解することが、軍用地投資の第一歩となります。
この記事はトーマ不動産の當真社長へのインタビューを中心に構成しています。
軍用地の利回りは何%が目安か

——まず、軍用地の利回りについてですが、一般的にどれくらいと考えればよいのでしょうか。
「おおよそですが、表面利回りでいうと2%前後と考えていただくのが分かりやすいと思います。私の実感としては、だいたい1.9%から2.2%くらいのレンジに収まることが多いですね」
——かなり低い印象を受けます。
「そうですね。一般的な収益不動産、例えばアパート投資などと比べると、決して高い数字ではありません。ただ、軍用地の場合は少し考え方が違っていて、利回りそのものよりも『どういう仕組みで収益が生まれているか』を見る必要があります」
——その仕組みというのは。
「軍用地は、国が土地を借り上げて地代を支払うという構造です。つまり、借主が個人や企業ではなく『国』なんですね。ですので、利回りという数字だけを見るのではなく、その安定性も含めて評価する必要があります」
——ちなみに、よく聞く「倍率」との関係はどうなりますか。
「倍率というのは、年間地代の何年分で土地価格が決まっているかという指標です。簡単に言えば、利回りは『100を倍率で割る』ことで算出できます。例えば倍率が50倍であれば、利回りは2%という計算になります」
——つまり、倍率を見ることで利回りが分かると。
「そうですね。軍用地の場合は、この倍率が市場の共通言語になっていますので、利回りを理解するうえでも重要な考え方になります」
なぜ利回り2%でも投資対象になるのか

——利回りが2%前後と聞くと、投資としては魅力が低いようにも感じます。それでも軍用地が投資対象として成立している理由はどこにあるのでしょうか。
「一番大きいのは、やはり安定性ですね。国が借主ですので、基本的に地代の支払いが滞ることはありません。空室リスクもありませんし、入居者対応や修繕といった管理の手間もほぼない。そういった意味で、非常に手離れの良い資産と言えます」
——一般的な不動産とは性質が違うということですね。
「そうですね。どちらかというと、不動産というより『債券に近い性質』と考えた方が分かりやすいかもしれません。利回りは低いけれども、リスクも低い。そのバランスの中で評価されている投資です」
——つまり、高利回りを狙うものではない。
「はい。そこを誤解してしまうと判断を誤ります。軍用地は『儲けるための投資』というより、『資産を守るための投資』という位置づけの方が実態に近いと思います」
軍用地投資は儲からないのか

——「軍用地は儲からない」という声もよく聞きます。この点についてはどうお考えですか。
「結論から言えば、『儲からない』というより、『高収益ではない』という表現の方が正確だと思います。利回りが2%前後ですから、例えば株式や収益不動産と比べれば見劣りします」
——それでも一定の需要があるのはなぜでしょうか。
「金融環境による影響も大きいですね。例えば、金利が非常に低かった時代、つまりデフレ環境では、2%という利回りは相対的に魅力がありました。一方で、現在のように金利が上昇してくると、他の金融商品との比較で見劣りしやすくなります」
——では、今は魅力が低下している状況でしょうか。
「以前と比べれば、相対的な魅力はやや下がっていると見ていいと思います。特に、融資を使ってまで購入する投資対象ではなくなってきています。現金で購入し保有する資産の一部として考えるのが現実的ですね」
利回りだけで判断すると失敗する理由

——軍用地投資を検討する際、利回りだけを見て判断してしまう方も多いと思います。この点について注意点はありますか。
「利回りだけで判断するのは危険ですね。軍用地は倍率で価格が決まりますので、同じ利回りでも割高な物件と割安な物件が存在します」
——具体的にはどのような違いが出るのでしょうか。
「例えば、人気のある基地は倍率が高くなりやすい。一方で、そうでないエリアは倍率が低くなる傾向があります。その背景には需要と供給、将来の見通しなど、さまざまな要素が関係しています」
——つまり、利回りは結果であって本質ではないと。
「その通りです。重要なのは、その価格が妥当かどうか、将来どういう出口が考えられるかという点です。特に軍用地は長期保有が前提になるケースが多いので、短期的な利回りだけで判断するとミスマッチが起きやすいと思います」
軍用地のリスクと注意点

——軍用地はリスクが低いといわれますが、それでも注意すべき点はありますか。
「もちろんあります。一つは、やはり利回りの低さですね。機会損失という意味では、他の投資と比べて見劣りする可能性があります」
——金利との関係もありますか。
「はい。金利が上昇すると、相対的に軍用地の利回りが低く見えてしまいます。その結果、需要が弱くなり、取引が低調になる可能性があります」
——価格下落のリスクもあると。
「ありますね。特に倍率は需給で決まりますので、売り物件が増えれば下がる可能性はあります。ただし、株式のように急激に大きく下がる性質ではありません」
——返還リスクについてはどうでしょうか。
「返還はリスクでもあり、チャンスでもあります。返還後に再開発が進めば価値が上がる可能性もありますし、逆に土地の使い方が難しくなるケースもあります。このあたりは個別に判断が必要ですね」
どんな人に向いている投資か

——軍用地投資は、どのような方に向いているのでしょうか。
「まず、安定収入を重視する方ですね。それから、投資に手間をかけたくない方。あとは相続対策を考えている方にも向いています」
——逆に、向いていない方は。
「高利回りを求める方や、短期で売買を繰り返したい方には向いていません。また、借入を使ってレバレッジをかけたい方にもあまり適さないと思います」
——やはり性質を理解した上で選ぶ必要がありますね。
「そうですね。万人向けの投資ではなく、目的に合った方にフィットする資産だと思います」
いくらから投資すべきか(100万円・300万円のケース)

——予算についてですが、例えば100万円程度の小口投資でも成立するのでしょうか。
「成立しないわけではありませんが、投資としての魅力はやや薄いと思います。100万円で利回り2%とすると、年間の地代は2万円程度です。そこに諸費用が乗ってきますので、回収にはかなり時間がかかります」
——では現実的なラインはどのあたりでしょうか。
「300万円から500万円くらいが一つの目安になると思います。このレンジになると、諸費用の割合が相対的に下がりますので、投資としてのバランスが取りやすくなります」
——小口で積み上げる考え方はどうでしょうか。
「現金が貯まるたびに少しずつ買い足していくという方もいらっしゃいますので、そういった資産形成の方法としては一つの考え方だと思います」
軍用地は今買うべきか?市場環境の考え方
——現在の市場環境を踏まえると、今は買い時と言えるのでしょうか。
「一概には言えませんが、金利が上昇している局面では、軍用地の相対的な魅力は下がりやすい傾向があります」
——以前と比べて状況は変わっていると。
「はい。低金利の時代であれば、2%という利回りでも十分に魅力がありましたが、今は他にも選択肢があります。ですので、収益を目的とするのであれば慎重に判断する必要があります」
——では、どういう位置づけで考えるべきでしょうか。
「ポートフォリオの一部として、資産を分散するという考え方が現実的だと思います。すべてを軍用地にするのではなく、他の資産と組み合わせることが重要です」
利回り以外のメリット(相続・担保価値)
——最後に、利回り以外のメリットについて教えてください。
「大きいのは相続税の圧縮効果ですね。現金で持つよりも評価額を抑えられる可能性がありますので、相続対策として活用されるケースは多いです」
——どの程度の効果が期待できますか。
「ケースによりますが、体感としては評価額が5割前後に圧縮されるケースもあります。ただし、これは個別条件によりますので、必ず専門家と一緒に検討する必要があります」
——担保としての価値もあると聞きます。
「はい。沖縄の金融機関では、軍用地を担保にした融資も行われています。ですので、いざという時に資金を引き出す手段としても活用できます」
——総合すると、どういう資産といえますか。
「『守りの資産』ですね。大きく増やすものではなく、資産を安定させるための一つの選択肢として考えるのが適切だと思います」
失敗しないためのチェックリスト

軍用地投資は「利回りが低いのに成立している」という点で、多くの初心者が判断を誤りやすい分野です。ここでは、失敗を避けるために最低限確認すべきポイントを整理します。
利回りだけで判断していないか
軍用地の利回りはおおよそ2%前後と低水準です。しかし、この数字だけで「良い・悪い」を判断するのは危険です。
軍用地では、利回りは単なる収益性ではなく、「リスクの低さ」や「安定性」の裏返しとして機能しています。
例えば、利回りが高い物件は一見魅力的に見えますが、その背景には返還リスクや需要の弱さが織り込まれている可能性があります。
利回りの見方(基本構造)
| 項目 | 内容 |
| 低利回り(1.6〜2.0%) | 安定性が高い・人気施設 |
| 中利回り(2.0〜2.3%) | バランス型 |
| 高利回り(2.3%以上) | リスクが織り込まれている可能性 |
利回りとは、結果であり判断基準ではないと考えましょう。
倍率と相場を理解しているか
軍用地は「年間借地料 × 倍率」で価格が決まる特殊な市場ですこの倍率を理解していないと、割高な物件を掴むリスクが高まります。
倍率と利回りの関係
| 倍率 | 利回り(目安) |
| 50倍 | 約2.0% |
| 55倍 | 約1.8% |
| 60倍 | 約1.6% |
倍率は施設ごと・エリアごとに異なり、人気施設ほど高くなる傾向があります。
重要なポイント
- 同じ利回りでも「割安・割高」が存在する
- 人気施設は倍率が高くても合理的な場合がある
- 相場を知らないと『高値づかみ』になる
結論:倍率=価格の妥当性を判断するための最重要指標
返還リスクの性質を理解しているか
軍用地の「返還」は、一般的な不動産のリスクとは性質が異なります。単なるマイナスではなく、リスクとチャンスの両面を持っています。
返還の2つの側面
| 観点 | 内容 |
| リスク | 借地料収入が止まる |
| チャンス | 再開発による地価上昇 |
判断の軸
- インカム狙い → 返還リスクは避ける
- キャピタル狙い → 返還予定地も選択肢
結論として、返還リスクは「悪いこと」と断言できず、目的次第で評価が変わるものです。
保有目的が明確か
軍用地は「誰にでも向く投資」ではありません。目的が曖昧なまま購入すると、後から判断に迷います。
主な保有目的
| 目的 | 向いている特徴 |
| 安定収入 | 長期保有・低リスク志向 |
| 相続対策 | 評価圧縮・資産移転 |
| 資産防衛 | インフレ対策・現金代替 |
| 投資収益 | ※あまり向かない |
注意点
- 高利回り目的には不向き
- 短期売買とも相性が悪い
- 金利環境の影響を受ける
「なぜ買うのか」が説明できない投資は危険ですから、一度立ち止まったほうがいいかもしれません。
出口戦略を持っているか
不動産投資は「買い方」より「売り方」で結果が決まります。軍用地も例外ではありません。
出口戦略の基本パターン
| 戦略 | 内容 |
| 売却 | 相場・倍率に依存 |
| 長期保有 | 地代収入+増額 |
| 担保活用 | 融資で資金化 |
注意すべきポイント
- 共有持分は売却しにくい
- 需要が弱い施設は流動性が低い
- 金利上昇で価格が下がる可能性
チェック項目
- 「誰が買うか」を想定しているか
- 売却タイミングを考えているか
- 流動性の高い物件か
出口戦略を考えずに買うと「持ち続けるしかない資産」となってしまいます。
まとめ「軍用地投資を正しく判断するために——利回りの見方と選び方」

軍用地の利回りは、表面利回りで1.9%から2.2%前後が実態です。数字だけ見れば低く感じるかもしれませんが、この記事で繰り返し確認してきたように、軍用地は「高収益を狙う投資」ではなく、「資産を安定させるための投資」です。借主が国であるため空室も滞納も発生せず、管理の手間もほぼかからない。その安定性が、低利回りでも成立している理由です。
重要なのは、利回りという「結果の数字」だけで判断しないことです。価格の妥当性は倍率で判断し、返還リスクは自分の目的(インカムかキャピタルか)に照らして評価する。現実的な投資規模は300万円から500万円が目安であり、相続税の評価圧縮や担保活用といった利回り以外のメリットも判断材料に入れるべきです。
この記事を読んだことで、「利回りが低いから買わない」という早合点も、「安定しているから何でもよい」という見切り発車も、どちらも避けられるはずです。自分の目的に合う資産かどうか……その点を軸に、次の一歩を検討してみてください。
お問い合わせ|トーマ不動産
軍用地は、沖縄特有の不動産市場です。全国的な情報が少ないぶん、現地の専門家が持つ「肌感覚のある情報」が判断を左右します。ひとりで調べて結論を出すより、一度プロに話を聞いてみた方が、判断が早く、後悔も少ないと思います。