「賃貸経営と高齢化問題」 ~孤立死は防げるか~
我が国の少子高齢化に伴って、賃貸物件でも入居者の高齢化が進むと思われます。そこで懸念されるのが、孤独死・孤立死の問題です。ニッセイ基礎研究所の調査によると、死後4日以上経過して見つかった65歳以上の高齢者の数は年間1万5,603人(2009年のデータ)だったそうです。
孤立死はほぼ2対1の割合で男性(とくに50代~60代)に多いのですが、1日に42人が「孤立死」していることになります。驚くべき数字ですね。賃貸物件でも、なんらかの高齢者対策が必要になります。「高齢者の入居者は敬遠しよう」という選択肢もありますが、これから増える入居ニーズを考えると、空室対策として無視できないのではないでしょうか。高齢者は立派なお客様ですから見守り対策が必要ですね。
10年以上も前の2003年から取り組んでいる自治体があります。千葉県松戸市の「常磐平団地」です。「孤独死110番」を設置して、①異常を感じたら速やかに通報する「緊急時通報システム」を構築。
②新聞が溜まるなどの異常時に通報するよう新聞販売店との協定締結。③異常時にいつでもドア開錠できるように鍵専門店と協定締結―など。これらを「孤独死ゼロ作戦」と名付けて実施して、松戸市内の孤独死の数は減少しました。
北海道のスーパー「コープさっぽろ」は、道内90市町村と「高齢者見守り協定」を結んでいます。週一回の配達の時に、チャイムを鳴らしても返事がない、ポストに新聞や郵便物がたまってる、昼間なのに外灯がつけっぱなし、日が暮れているのにカーテンが開いていて灯りがついていない、お会いしたときに呂律(ろれつ)が回っていない、などの異常があると、大声をかけたり、近所に声をかけて救急車の手配や警察に連絡しています。同社のホームページには、実際にスタッフが対応して大事にいたらなかった44の事例が紹介されています。
警備会社では有料の「緊急時駆け付けサービス」を実施しています。セコムやALSOKなどが「みまもりサポート」として、ボタン一つで駆けつける、365日24時間見守るサービスを、月額2000円弱の料金で提供しています。
象印マホービンは、無線通信機を内蔵した「i ポット」をお年寄りが使うと、離れて暮らすご家族に届き、その様子を携帯電話やパソコンで見守ることができます。TVCMでお馴染みですからご存じの方も多いでしょう。
ガス会社の「みまも~る」は、お年寄りのガスの利用状況を、携帯電話やパソコンにメールで毎日家族に知らせるサービスを実施しています。電気の使用状況が確認できるサービスはNTT。ガスメーターに通信装置を接続、毎朝自動検針してガス使用量をメールで連絡するサービスはNTTテレコンです。万歩計にも、お年寄りの日々の歩数をカウントしてメールで知らせる「歩数計通知」というサービスがあり、au向け携帯電話に提供されています。
民間会社や自治体が、さまざまなアイデアで「孤立死防止対策」を行っていますが、そのキーワードは「見守る」です。そのサービスが提供される現場は賃貸住宅となる可能性が高いでしょう。これらのアイデアは、地域の自治体や事業者と提携して、賃貸住宅経営にも取り入れ可能なものがありそうです。
沖縄でもこれから避けることのできない「大空室時代」と「高齢者社会」に向けて、安定した賃貸経営を営むために、一所懸命に対策を考えていきましょう。