沖縄の不動産

【宅建士解説】沖縄のマンションが危ない?県内特有の環境や価格下落リスクとは?

近年、沖縄でも一般的になったマンションですが、購入にあたっては沖縄特有のリスクも押さえておく必要があります。また、そういったリスクは、売却時の判断にも影響します。

全国で一般にいわれるリスクと、沖縄のマンション固有のリスクをまとめると、以下の点が重要といえるでしょう。

  • 沖縄特有の環境リスク(塩害、台風、騒音など)
  • 地域ごとの市場特性と需要の違いが大きい
  • 不動産市場の変化や価格下落リスク
  • マンション購入時の諸注意(立地選び、修繕積立金など)

沖縄では、隣接エリアであっても市場の特性が大きく違う場合があります。また、観光立県であることから、コロナのパンデミックに弱いといった特性も明らかになりました。

この記事では、沖縄のマンションに潜むリスクを幅広く紹介し、資産活用の参考になることを目指しています。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が作成しました。

沖縄のマンションに潜むリスク

近年、沖縄でもマンションが一般的になり、戸建て住宅だけではなく、マンションもマイホームの選択肢として、有力な候補となってきました。

しかし沖縄には自然災害をはじめとする様々なリスクがあり、それを把握した上でマンション購入を検討するのがいいでしょう。

価格下落リスク

沖縄のマンションの床面積あたりの単価が、ここ20年で平均1.5倍に高騰していると報道されています(沖縄タイムス)。

しかし、沖縄のマンションが「出せば売れる」といわれた絶好調の時期から比べると、マンション市場にも変化の兆しが出てきました。「新築マンションが一部で苦戦し二極化が生じつつある」という報道もあります(沖縄タイムス)。

眺望がいい場所や生活の利便性がいいマンションはニーズが高い一方、あまり特徴のない一般向けのマンションで一部売れ残りが目立ち始めています。

そこで「沖縄のマンションを購入し、長期的に資産価値が残るものを選びたい」と考える場合は、立地条件やマンション自体の特色をしっかりと調査し、将来性のあるものを選ぶ必要があります。

自然災害のリスク

台風で横転した自動車(糸満市潮崎)

地球温暖化の影響で年々自然災害が激甚化しています。

沖縄に接近する台風も大型化しており、場合によっては不動産に深刻なダメージを与える可能性もあります。

2023年の台風6号や2022年の台風11号、2021年の台風6号でも大きな被害が発生しました。

筆者は中古マンションを購入し、リフォームをして再販する事業も行っていましたが、そのうちの1つのマンションがリフォーム完了直後、台風の直撃を受けて窓が破損するというアクシデントに見舞われたことがあります(宜野湾市志真志の物件)。

台風の強風に飛ばされたスリッパが窓ガラスを突き破り、室内が水浸しになっていたという事例です。

再度リフォームをやり直すなど、コストがかかってしまいましたが、こういったリスクの存在にも注意する必要があります。火災保険に入れば風水害も保証されるはずなので、保険契約時にはその点をきっちりとチェックしてください。

地政学的リスク

米軍のオスプレイ

沖縄は米中対立の最前線ともいわれており、古くから米軍は沖縄を「太平洋のキーストーン」と位置づけ戦略的な拠点としています。

一方で、トランプ大統領再選により米軍が極東地域でのプレゼンスを低下させる可能性も指摘されています。

そこで現在、沖縄の地政学的なリスクは非常に読みづらい状況となっていることにも注意が必要です。万が一、東アジアで紛争が生じた場合、沖縄が再度戦場となる可能性も否定しきれません。

紛争に巻き込まれなくても、経済的に大きなダメージを受ける可能性があります。

その点、緊張感をもって注視する必要があるでしょう。

観光に依存する沖縄県の経済構造

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度の沖縄県への入域観光客数は約258万人となり、前年の2019年度の約946万人から約688万人減少しました。これは約72.7%という、大幅な減少です。

一方、沖縄県の総生産約4兆3000万円のうち、観光収入が占める割合は約3割。7000億円にのぼります。また労働者の4人に1人が観光関連の産業に従事しているとされ、沖縄県経済は観光業への依存度が高いことが特徴です。

沖縄県ではこういった脆弱性を克服するために、観光業以外の産業の育成にも努めていますが、なかなか観光業依存から脱却できないのが実情です。

そこで沖縄のマンション価格が観光業の状況によって左右される可能性があるという点には注意をしておく必要があります。

住宅ローン組む場合にはこういった脆弱性にも注意を払い、無理のない住宅ローンを組むなどの対策をとっておく必要があるでしょう

リスク対策としてのエリア選定と物件選定のポイント

那覇市久茂地

マンションの資産価値を維持するためにも、上記で解説したさまざまなリスクを把握しておくことが必要になります。

クロスマーケティングが2023年に実施した調査では、マイホーム購入の決め手となった主な条件は「利便性」「治安」だったとわかっています。

しかし、持ち家も資産である以上、将来の価格動向も重視すべきでしょう。そこで、この章では、地域ごとの価格動向を踏まえた特性を解説していきます。

またその後、物件選定のポイントを解説します。

エリア選定のポイント

県庁所在地の那覇市には行政機関、商業施設が多く集まり、人口も多いため、マンション需要が高い傾向にあります。一方、沖縄本島北部エリアでは、リゾート開発が進んでいるものの、人口は少なく、那覇市とは市場の状況が全く異なります。

そこでこの章では、沖縄県内のエリアごとのマンション需要を整理していきます。

那覇市および周辺エリア(浦添市、豊見城市、西原町)

那覇市とその周辺の浦添市、豊見城市、西原町などは将来的にも有望なエリアだと考えられます。

那覇市に関しては、マンションを含む不動産の価格が高止まりしています。そのようなマンションコートを受けて、周辺エリアの豊見城市や浦添市などに注目が集まっているのが現状です。

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南部エリア(糸満市、八重瀬町、南城市)

那覇市内のマンション価格が高止まりしていることから、糸満市をはじめとした南部エリアも注目されています。

糸満市では、那覇市に近い西崎付近にマンションが立地しています。価格はここ数年高騰を続けていましたが、このところ強気の価格設定とした物件の動きは鈍くなっており、今後の価格情勢には若干不透明感が出ています。

八重瀬町や南城市にもポツポツとマンションがありますが、あまり数がなく、また今後の価格推移についても不透明な状況です。

中部エリア(沖縄市、うるま市、中城村、北中城村)

中部エリアでは、中城村や北中城村にもマンションが立地しはじめています。土地価格に関しても、北村は2024年の地価調査で県内2番目にあたる中16.9%の上昇を記録しました。中城村でも地価が8.1%上昇し、いずれも注目のエリアといえるでしょう。

また、うるま市も2024年の地価調査で7%の上昇を示しており、今後も価格動向には期待がもてます。

一方、沖縄市は中部エリアの他地域と比べて価格上昇が緩やかで、先行きに若干の不透明感もあります。

北部エリア(名護市など)

北部エリアに関しては、現在計画が進行しているテーマパークの立地に伴い、地価は上昇傾向にあります。ただ、マンションのストック数はそれほど多くなく、全体的に価格動向に関しては不透明な部分があります。

とはいえ大きな下落要因があるわけでもなく、横ばいに推移するか、やや価格が上昇するかではないかと推測されます。

物件選定のポイント

内地ではマンションの立地について「駅からのアクセス」が重視されます。最寄り駅から徒歩10分以内の物件であれば、入居者からの評価も高く、またリセールバリューも高いため人気が高い……といった判断が可能です。

ところが沖縄の場合は電車移動がほぼ考えられないので「駐車場が何台か確保されているか」といった点が重要になります。

周辺にスーパーやコンビニ、病院、学校などがあるかどうかといった点は内地での物件選定と同じく非常に重要です。

マンション修繕積立金の額も注意したいポイント

沖縄では塩害などで劣化が進むケースも見られるため、建物の管理状態には十分な注意を払ってください。

また管理会社の選定と修繕積立金の状況も非常に重要だといえます。特に、県内のマンションでは、修繕積立金の額が国土交通省のガイドラインに達していない場合も多いので、その点にも注意を払ってください。

マンションの修繕積立金とは?

マンションの資産価値の維持や居住環境の良好な維持には計画的な修繕工事が必要であり、その費用を賄うために「修繕積立金」が設定されています。

出典:国土交通省

国土交通省のマンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)によると、マンションの規模により修繕積立金の1か月あたり・専有面積(㎡)あたりの平均は252円から338円とされています。

余裕をみて、1平米あたり300円程度と考えて計算してみましょう。

もし対象マンションの床面積が50㎡であれば”300円× 50㎡”で、15,000円が妥当ということになります。

修繕積立金の額が目安の金額より低い場合は注意が必要です。気になる方は、国土交通省のガイドラインに目を通してみてください。

沖縄のマンションの売却時期(いつ手放すべきか?)

沖縄のマンションを所有している方にとって、売却のタイミングは重要な課題です。これから沖縄の不動産を購入する方にとっても、いずれ売却するときの出口戦略として、知っておきたいポイントがあります。

そこでこの章では、沖縄のマンションを「いつ売却すべきか」を考えるポイントを解説します。

不動産市場から売却時期を考える

沖縄県の不動産市場においては、都市部の地下が全国平均を上回るペースで上昇を続けています。特に、那覇市を中心とした都市部で、この傾向が顕著にみられます。

一方で、この上昇がいつまで続くかは誰にも予測できません。さらに、日銀の金融政策による金利上昇の可能性も、今後の市場に影響を与える可能性があり、価格動向を読み解きにくくしています。

そこで、誰にも予測できない価格動向を気にするのではなく、地価が高い水準にある今のうちに売却を検討するという考え方も、手堅い判断のひとつといえるでしょう。

「いずれ売却を検討したい」という場合は、早めの決断が安全です。

築20~30年の物件を買い20年住んで売るのが合理的

マンションの資産価値は築年数とともに下落していきます。

東京都内の事例をもとにしたデータ(上のグラフ)では、築5年くらいまで価格が急激に下がり、その後15~20年程度で横ばいになる傾向が確認できます。一方、築40年を超えると価格は再び下落しやすくなります。

沖縄県でも同様の傾向があります。那覇市のデータによれば、築10年のマンションの平均平米単価は約51万5,789円、築20年では約50万3,030円となっています。 

一方、築30年以上のマンションでは平均平米単価が約29万5,281円と、築年数が経過するほど価格が下落する傾向が見られます。

また、りゅうぎん総合研究所の調査によると、全国的に築40年を超えるマンションが増加しており、維持管理や修繕が課題となっています。 

上記のデータから、ひとつの案として「築20~30年経って価格が落ち着いたマンションを購入し、10~20年住んで売却する」と、住宅への投資を最大化できる可能性も考えられます。

いずれにせよ、築年数による価格変動を把握し、資産価値が大きく落ちる前に売却を検討することで、資産を有効に活用することが可能です。

この章のグラフは、三井住友トラスト不動産のデータに基づいています。

投資利回りと比較する

自分が住むマンションであっても、不動産投資と同様の利回り計算を試してみると、資産価値の把握に役立ちます。一般的な不動産投資の表面利回り(グロス利回り)は以下の式で計算できます。

表面利回り(%) = (年間家賃収入 ÷ 物件価格) × 100

例えば、2000万円で購入したマンションを所有しているとします。近隣で類似物件の月額家賃が10万円だとすると、年間家賃収入は120万円と推定でき、利回りは以下のように計算できます。

利回り(%) = (120万円 ÷ 2000万円) × 100 = 6%

利回りが6%程度というのは合格ラインではあるものの、同じ資金をより効率のいい投資に回せる可能性があります。

筆者の感覚では、ここで計算しているグロス利回りが8%程度であれば、不動産投資としてはいい利回りと考えます。

このように利回りを計算してみて、極端に低い場合は、早めの売却を検討してみるという判断もできます。

譲渡所得税が変わるタイミングに注目する

区分所有期間税率計算式
短期譲渡所得取得から5年以下合計約39.63%(譲渡価格 − 取得費 − 譲渡費用) × 39.63%(内訳:所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
長期譲渡所得取得から5年超合計約20.315%(譲渡価格 − 取得費 − 譲渡費用) × 20.315%(内訳:所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)

譲渡所得税は、不動産を売却した際の所得に課される税金ですが、資産の所有期間によって税率が異なります

  1. 短期譲渡所得:所有期間が5年以下の場合に該当し、税率が高めです。
  2. 長期譲渡所得:所有期間が5年を超える場合に該当し、税率が軽減されます。

所有期間は取得日から譲渡した年の1月1日時点で計算されます。例えば、2015年6月1日に取得した不動産を2020年7月1日に売却する場合、所有期間は4年7ヶ月となり短期譲渡所得に分類されます。このため、5年を超えたタイミングでの売却は、税負担を軽減する有利な判断材料となるでしょう。

FAQs沖縄のマンション市場に関連したよくある質問

この章では、本文で触れられなかった沖縄のマンションに関する疑問点をQ&A方式で記載します。

沖縄の不動産バブルはいつまで続くのでしょうか?

沖縄の不動産市場は過去10年以上にわたり活況を呈していますが、地価動向DIの減少傾向から、バブルの終焉が近い可能性も考えられます。特に投資マネーの流入が減少すると、価格下落のリスクが高まると考えられることから、中国経済の減速といったネガティブな要因をマイナス評価しないほうがいいでしょう。

沖縄のマンションに売れ残りが発生しているのはなぜですか?

高価格帯の新築マンションが増加し、需要と供給のバランスが崩れたことが一因です。また、台風や塩害などの自然環境による建物劣化リスクも、購入を躊躇させる要因となっています。ただし、まだマンションバブルが崩壊したといえる状況ではなく、ある程度高止まりした状態が続く可能性が高いでしょう。

一方で、地価上昇の勢いは若干和らぎつつあり、今後は価格の調整局面に入る可能性があります。特に投資需要の減少や人口減少の影響が懸念されています。

沖縄のマンションは今が買い時でしょうか?

現在の高価格帯を考慮すると、購入のタイミングは慎重に検討すべきです。市場動向や将来の資産価値を見極めて判断してください。

一方で、マンション売却のタイミングについては、ある程度積極的に判断し、手放す決断をしてもよいといえます。

まとめ「沖縄のマンションのどこが危ない?」「対策は?」

沖縄でもマンションが定着している

沖縄でもマンションが持ち家の選択肢として定着してきました。しかし、沖縄ならではの価格の変動リスク、自然災害リスク、地政学的リスクなど、購入時に注意しておきたいポイントもあります。

リスクと状況対策とポイント
価格下落リスク将来の資産価値を見据え、需要が高い立地や特色ある物件を選ぶ
自然災害のリスク火災保険で風水害補償を確認する
塩害対策として建物管理状況や修繕積立金をチェック
地政学的リスク国際情勢に注目し、中長期的な不動産市場の動向を考慮する
経済構造の脆弱性観光業依存による県経済の脆弱性に備え、無理のない住宅ローンを組む
売却時期のポイント税金: 所有期間5年超で税率軽減(譲渡所得税)
投資利回り: 合格ライン(6~8%)以下なら早めの売却を検討

こういった点に注意して、沖縄のマンションの購入時期や売却時期を考えてみてください。

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