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「土地は借地で家は持ち家」という不動産を相続した場合の手続きと注意点

「土地は借地、家は持ち家」という不動産を相続する場合、まず「借地ならでは」の手続きや地主との関係が大きな不安材料となります。

そもそも相続で何をすればいいかわからないのに加え「地主さんの承諾を得る必要はあるの?」「譲渡や売却を考えたとき、どのくらいの承諾料を求められるの?」など、通常の持ち家相続にはない疑問やトラブルも心配です。

また、相続税の計算でも借地権の評価額を算出するなど、ひと手間かかる点にも悩まされます。

そこで、本記事では借地権物件の相続等に焦点をあて、借地権の基本から相続時に起こりやすいトラブル事例とその対策を解説します。

借地物件をめぐる状況を整理して、納得のできる相続・資産活用を目指しましょう。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が作成しました。

「借地権とは何か」をおさらい

相続において「土地は借地、家は持ち家」というケースでは、借地権について正しく理解しておくことが重要です。借地権とは、借地借家法および旧法借地権に基づき、建物所有を目的とする地上権または賃借権のことを指します。

地上権は物権、賃借権は債権という違いがあります。ただし、実際には登記された地上権が設定されることは少なく、多くの場合、「借地権」といえば賃借権の借地権をさします。本記事では、賃借権としての借地権を中心に解説します。

地上権と賃借権の違い

地上権は物権であり、土地の所有者の承諾なしに譲渡や転貸が可能な強い権利です。つまり、地上権を有していると、その土地を比較的自由に使用することができます。

しかし、地上権の設定には登記が必要であり、その際に地主の協力が不可欠です。そこで、設定(登記)の段階で賃借権よりハードルが高いといえます。

一方、賃借権は物権ではなく債権とされ、原則として土地の使用権は限定的。賃借権を譲渡したり転貸したりする際には、地主の許可が必要になるなどの制限があります。

ただし、賃借権は登記がなくても、土地上に建物を所有していれば第三者に対抗できるという特徴があります。また、地上権の存続期間が30年以上と法律で決められているのに対し、賃借権の存続期間は契約内容に応じて柔軟に設定できます。

新法と旧法借地権の違い

東京都内の下町などで見られる借地権付き住宅の多くは、旧法借地権に基づいています。旧法借地権では借地人の権利が強く、地主との利害関係の調整が課題とされてきました。

そこで、1992年(平成4年)に新たに制定されたのが、新借地借家法です。この新法では、従来の普通借地権に加え、定期借地権という新しい制度が導入されました。

定期借地権では、契約時に存続期間を明確に定め、契約満了後に確実に土地を返還することが前提となります。これにより、地主側にとっても将来的な土地の利用計画を立てやすくなるメリットがあります。

現状では定期借地権付きの住宅を相続するケースは少ないと思われるため、詳しい解説は割愛しています。ただし、定期借地権マンションについてはよくあるケースなので、こちらは別記事で解説予定です。

相続時に問題になりやすい地主とのトラブル事例&対策

借地上の持ち家を相続する際には、どうしても地主との相談が欠かせません。地主の承諾が不要なケースであっても、相続した事を伝え、良好な関係を崩さないようにしてください。

地主との信頼関係が損なわれてしまうと、後々の契約更新時や、立て替えの際に不利な扱いを受ける可能性もあります。

もし「何から手をつければいいのかわからない」「地主との交渉に不安がある」という場合は、一度、借地権に詳しい不動産会社などに相談してみてください。沖縄の場合は、以下のフォームからご相談をお受けします。

遺贈の場合には地主の承諾が必要

相続を原因として相続人に所有権移転登記をする場合は、地主の許可や承諾は必要ありません。たとえばお父さんが亡くなり、息子が相続する場合は、通常の不動産を相続したのと同じです。

しかし、相続人以外の人に相続させる「遺贈」の場合は、地主の承諾が必要になります。

また、いったん相続人(上記事例では息子)が相続した上で、その家を売却をしたい場合にも、地主の承諾が必要になります。

その際、一般に譲渡承諾料(名義書換料)が必要で、その相場は「借地権価格の10%」といわれます。ただ実際には少し幅があり、借地権価格の5~10%程度と考えるのが妥当でしょう。

また場合によっては「地主の承諾」が得られないこともあります。その場合は、家庭裁判所に地主の承諾にかわる許可を求める申し立てを行います。これは借地非訟とも呼ばれ、借地借家法第19条1項に規定されています。

相続にからんで地代の値上げ要求があった場合

旧法借地権の地代は、土地の経済価値から考えると非常に低い水準に抑えられています。第二次世界大戦後の地代家賃統制令により、経済合理性を無視した水準に設定されているからです。

そのため地主から「地代を値上げしたい」という要望を受けることはよくあります。とくに相続が発生した時は「代替わりしたのだから地代を上げてほしい」と言われやすいタイミングです。

こういった要望を受けた場合は「地代の値上げを要求する理由」を尋ねてください。その理由が、「固定資産税が上がった」「近隣の地代が上がっている」など正当なものであれば、要求を飲んだ方がいいかもしれません。

しかし理由に納得がいかない場合もあります。納得がいかないので従来同様の地代を支払おうとしても、地主が受け取らない場合は注意が必要です。この時、地代を支払わずに放置しておくと、債務不履行を理由に借地契約が解除される恐れがあります。

そこで、こういったケースでは「供託」という方法をとります。

供託とは、地代を受け取らない地主に代わって、法務局等の供託所に金銭を預けること。供託することで地代を支払ったのと同じ効果が得られます

地代を供託する場合、司法書士または弁護士などの専門家に相談してください。

立ち退き要求があった場合

もし地主から借地権者に対する立ち退き要求があったとしても、必ずしも応じなければならないとはいえません。

地主が立ち退きを求めるには、正当事由が必要とされるからです。また、立ち退きに際しては、一般に立ち退き料も必要とされます。

ただし、そもそも立ち退き要求があった時点で地主との信頼関係は壊れつつあるはずです。立ち退きを拒否することができても、立て替えの承諾をしてもらえなかったり、借地権売却の承諾もしてもらえなかったり、更新時の承諾料についても高額な請求があるかもしれません。

そこで、立ち退きを要求された段階で、弁護士などの専門家と相談しておくことをおすすめします。その上で、できるだけ立ち退き料を多くもらうなど、様々な可能性を検討した上で、ベストな方法を選んでください。

トラブルになった場合の相談窓口

借地権者と土地所有者のトラブルは民事の問題なので、相談を受け付けてくれる公的機関は限られます。ただし、借地権に関する相続の問題などは、法テラスで相談できる可能性があります。

法テラスの利用については、年収が一定の基準以下であることなど、いくつかの要件があります。以下のリンク先で近くの法テラスを探し、確認してみてください。

法テラスを利用するには?

収入(手取り月収)と資産(現金・預貯金)が、家族構成や居住地域に応じた基準以下でないと利用できません。例えば、大阪市に住む3人家族の場合、月収は299,200円以下、資産は270万円以下が目安です。詳しくは、法テラスのサポートダイヤル(0570-078374)や最寄りの地方事務所に問い合わせてください。

「土地は借地で家は持ち家」のケースでの相続手続き

「土地は借地で家は持ち家」という不動産を相続する際には、通常の不動産相続より手続きが複雑になる場合があります。

また、相続税の計算に関しても、借地権割合から借地の価格を出すなど、計算が複雑になります。

そこでこの章では、借地権物件の相続手続きと注意点についてまとめました。

借地権割合から相続税評価額を計算

相続税は土地所有権だけでなく、借地権の場合でも課税されます。そこで、借地権の価格を計算する必要が出てきます。

相続税評価額の概算は、固定資産税路線価から算出できます。その際、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」が使いやすく、おすすめです。

上記から地価マップにアクセスし、トップページの「相続税路線価等」をクリックしてください。あとは住所を入力(または地図から選択)し、土地の前面道路に書かれた数字とアルファベットを読み取ります。

青矢印部分に描かれた数字とアルファベットを読み取る

数字は1㎡あたりの評価額で、アルファベットは「借地権割合」を表します。

A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

あとは以下の計算式で算出できます。

借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合

たとえば、アルファベットと数字の組み合わせが「88D」であれば、

借地権評価額(㎡あたり) = 88,000 × 60% = 52,800円

となります。この52,800円に土地の広さ(㎡単位)をかけると評価額が計算できます。

節税対策としての小規模宅地等の特例適用は?

被相続人の配偶者または被相続人と同居していた相続人は、相続税の価額を軽減できる小規模宅地の特例を受けることができます。

たとえば自宅の土地であれば330㎡まで、相続税評価額が最大で80%減額される可能性があります。

そして借地権についてもこの制度の対象となります。ただし、様々な要件があるため、特例を受けたい場合は以下に示す国税庁のサイトを参照してみてください。

相続した借地権を処分・活用する4つの方法

土地に対する賃借権(借地権)は、相続や資産活用の観点から有効に活用できるよう、対策をしておく必要があります。なかには借地権を所有権化したり、売却して現金化するといった選択肢もあります。

一般的に行われている借地権の処分方法は以下の4つ。どれがふさわしいかは、ご自分の状況などを加味して判断してください。

地主または第三者に「借地権を売却する」

実は借地権は売却することができます。地主に売ることもできますし、第三者に売却することもできます。

ただし、売却には地主の承諾や条件の調整が必要となり、場合によっては交渉が難航することもあります。

例えば、地主が「借地権は売却可能だ」ということを認識しておらず、「借地権は売れないもの」と誤解しているケースでは、借地権売却の話を持ちかけただけでトラブルに発展することもあります。

また、契約更新時に承諾料(権利金)の支払いを求められることもあります。一般的には借地権価格(借地権の価値)の1割程度が相場といわれますが、絶対的な基準がなく紛争になりやすい論点です。

承諾料の金額については弁護士や税理士と相談し、適正な価格を決めることが重要です。

借地権と底地権の「等価交換」

借地権と底地権を等価交換する方法もあります。これは、借地権者と地主が土地を分割し、それぞれが完全な所有権を取得する手法です。

その際、借地権と底地権の割合に従って土地を分割するのが原則です。

底地の価値は路線価などで算出できますが、実際の市場価格とは異なるケースも多く、交渉は難航しがちです。また、地主が「自分の土地が狭くなる」と感じるため、抵抗感を持つ場合もあります。

そのため、等価交換を検討する際は、法律の専門家に相談し、場合によっては間に入ってもらう必要があります。

底地の所有権を買い取って「所有権化」

地主に底地の売却を持ちかけ、買い取って所有権化する方法も考えられます。所有権を取得すれば土地と建物の売却がしやすくなり、有利な条件で資産を運用できます。

ただし、地主によっては底地と借地権の価値を正確に把握しておらず、高額な価格を提示される場合があります。そのため、信頼できる不動産会社や代理人を介して交渉したほうが無難でしょう。

借地の資産運用として「建物を賃貸する」

借地の建物を賃貸し、家賃収入を得ることも可能です。建物の所有者には自由に活用する権利がありますが、借地人が無断で賃貸することに不満を抱く地主もいます。

そこで、賃貸に出すとしても、事前に地主と相談しておく事が望ましいといえます。

また、地主の承諾が得られれば、借地上の建物を取り壊し、新たにアパートを建築することも可能です。この場合、建築費用のほかに地主への承諾料が必要ですが、土地を購入するよりも少ない資金で賃貸事業を始めることができます。

まとめ「トラブルを回避して納得できる相続を実現!」

借地権物件の相続には、通常の不動産相続にはない特有の手続きや地主との関係調整が必要になります。借地権の種類(地上権・賃借権)や新旧借地法の違いを理解し、地主の承諾が必要なケースを把握しておく必要もあります。

相続税の計算も若干複雑になります。また、土地所有権同様、小規模宅地の特例が適用できるため、税制についての知識がないとソンをしてしまう可能性があります。

不安な場合は税理士に相談しておくほうが安心できるでしょう。初回相談無料(30分または1時間程度)という税理士さんも多いので、話を聞いてみると今後の方針が立ていやすいはずです。

以下の税理士ドットコムであれば、登録税理士数が非常に多く、どのエリアでも対応できる税理士事務所が見つかるはずです。

また、沖縄の不動産についてはトーマ不動産までお問い合わせください。初回無料でご相談に応じ、専門外の問題は適切な専門家におつなぎします。

地主との信頼関係を維持しつつ、必要に応じて専門家に相談することで、トラブルを回避し、スムーズな相続・資産活用を実現しましょう。

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