不動産売却

法人の借入で連帯保証人の社長が死亡した後の対応について

経営者が亡くなった後、会社はどうなるのでしょうか。また、相続人はどのような影響を受けるのでしょうか。

会社の借入について、連帯保証をしている経営者は多くいらっしゃいます。また、家族と住んでおり自宅を保有している方の多くは、その自宅に抵当権を設定しています。

その経営者が突然死亡した場合、どのような出来事が起こるのか、実際の事例を説明します。

筆者は2009年に糸満市の不動産会社で売買、賃貸、管理、建築営業の経験があります。その後独立し、糸満市を中心に18年間の宅建業経験を積みました。工業事業用物件の実績もあり、今回は沖縄の不動産工業物件の売買に携わる中で、「社長が亡くなった後の相続人の出来事」についてご紹介します。

この記事はトーマ不動産株式会社の當間が制作しました。

経営者が死亡した場合の保証債務の引き継ぎ

経営者が死亡した場合、保証債務は法定相続人である妻や子供が引き継ぐことになります。経営者が十分な資産を残して死亡した場合、問題は少ないですが、債務や負債が多い場合はどうなるでしょうか。残された妻や子供は自己破産せざるを得ないのでしょうか。

筆者が15年前に携わった案件について説明します。当時は東北震災後の日本でデフレ状況が続いていました。沖縄の筆者が活動している地域もデフレと不景気感があり、不動産取引には時間がかかりました。

そのような状況下、取引先金融機関の融資担当者より不良債権の処理案件について相談があり、現地に行きました。

亡くなった経営者は奥様と二人の子供がいる四人家族で、中堅規模の製造業を経営していました。経営者が突然亡くなり、会社の経営引き継ぎと自宅の借入金返済の問題が生じました。

現地調査と相続人の状況

現地には製造工場があり、その隣に前経営者の住んでいる自宅がありました。庭には立派な庭石や木が植えられており、規模の大きな事業を行っていたことがうかがえました。不動産の現地調査のため自宅に入り、所有者である奥様と話しました。その家庭は借入金の返済を再三求められ、精神的に不安定な様子が表情から明確に見て取れました。

話を聞くと、経営者である夫が突然他界し、事業を引き継いだものの経営の能力がなく、事業がうまくいっていないとのことでした。また、経営者である夫は妻に資産を残したいと考え、今回の物件の土地と建物の所有権者は妻の名義でした。そのため、団体生命信用保険(通称:団信)による借り入れ債務の免除ができず、引き続き収入が乏しい状況で返済義務を負っている状況でした。

経営者の死後の不動産問題

経営者が死亡した場合、住宅ローンは通常団体信用保険で債務が免除され、相続人や遺族が住む自宅が残ります。しかし、今回は経済的な柱である夫の所有権名義ではなく、妻名義であったため団体信用保険は適用外でした。さらに再建築ができない用途地域(工業専用地域)であったため、不良債権化し、売却に時間がかかりました。工業専用地域では 事業用の倉庫、事務所等は 法令の制限もありませんが 居住用の建て替えについては 制限があることもあり注意が必要です。

この物件が売れない理由は、市街化区域の工業専用地域内にあり、自己居住用住宅で再建築不可という大きなデメリットがありました。そのため、2年ほど売却できず、銀行の不良債権案件となっていました。

事前の準備の重要性

突然経営者が亡くなる場合や事業環境の変化による不測の事態が起きるケースでは、自宅を売却して借金を返済できる選択肢を持つことが重要です。経営者は自分が突然亡くなることを通常は想定していませんが、都市計画法による建築制限がある場合、今回のように売却が困難となり、遺族や相続人に大きな負担をかけるケースもあります。

法律的な対応策

法律的には相続放棄によって、経営者が所有していた自宅などの不動産や会社の株式を手放すことができます。また、限定承認という方法もありますが、債権者への対応や相続人間の調整など手続きが煩雑で、弁護士等の専門家のサポートが必要です。そのため、突然亡くなった場合には選択しにくいかもしれません。やはり事前の準備が必要です。

生前の対策の重要性

相続人や遺族としては、相続放棄や限定承認によって経営者の債務を引き受けることを避けることができますが、そのデメリットもあります。そこで、会社の後継者や配偶者と生前に対策を取っておくことが重要です。生命保険をかけておくことや、団体生命信用保険に加入することも考えられます。

不動産の資産戦略

経営者は事業の変化に対応できるよう、不測の事態にも対処できるように、住宅を建てる際にも出口戦略を考え、多角的な視点から判断することが重要です。事業環境の変化は速く、製品のライフサイクルも短くなっています。沖縄は人口140万の島で、多くの事業所が競争しています。その中で、従業員の雇用や家族の生活を長く永続させ、繁栄するための生存戦略が必要です。

まとめ

  • 経営者が亡くなると、その保証していた借金を家族が引き継ぐことになります
  • 経営者が資産を多く残していれば問題ありませんが、借金が多いと家族が困ります。
  • 経営者が急に亡くなった場合、会社の経営や自宅の借金返済の問題が発生します。家族が経営を引き継いだものの、うまくいかずに苦労している場面もありました。
  • 経営者の妻が家の名義人であり、団体信用生命保険が使えなかったため、借金の返済が継続し、返済困難になっていました。自宅は再建築ができない制限があり、売却が難しかったため、借金返済が困難になりました。
  • 相続放棄や限定承認という方法で借金を引き継がない選択もありますが、手続きが複雑です。
  • 家族が困らないよう、経営者は生前に対策を取ることが重要です。生命保険や団体信用生命保険に加入することも考えられます。
  • 会社を続けて家族を守るために、不動産の資産戦略を考えると良いでしょう。不動産に強い税理士、司法書士、弁護士、不動産会社等のサポートがあれば、社長の個人資産の防衛も心強いです。

会社を継続させ、反映させるための防衛方法として、不動産の資産戦略も考えてみてはいかがでしょうか。通常の不動産仲介では、このような助言はあまりありませんが、実績と経験、日頃からの研鑽があれば、将来を見据えたアドバイスができます。

トーマ不動産では、法人所有の不動産や社長様の資産の売却や購入のお手伝いをしてきた経験もありますので、ご質問があればご助言いたします。

社長のご家族を守れるようお考えください。

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