不動産売却 基礎知識

【2024年改正対応】不動産仲介手数料の最新ルールと具体的計算方法

一般に「不動産の仲介手数料は成約額の約3%」といわれます。もう少し厳密に計算する場合は、以下の表を参照してください。

取引価格の範囲仲介手数料の計算式
200万円以下取引価格 × 5% + 消費税
200万円超~400万円以下取引価格 × 4% + 2万円 + 消費税
400万円超取引価格 × 3% + 6万円 + 消費税

ただし、例外も多く、細かい規定を知っておく方が安心です。そこで、この記事では不動産の仲介手数料について幅広く解説しました。

賃貸の場合、なんとなく「手数料は賃料の1か月分」と考えてしまいがちですが、法律の本則は異なっています。この点についても解説します。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が作成しました。

仲介手数料の価格の計算方法をわかりやすく解説

この章では、冒頭で計算した仲介手数料の計算式をわかりやすく解説し、さらに例外についても解説しました。

売買の場合は一般的に「速算法」で計算

速算法とは、よくいわれる「3%+6万円」の計算方法。売買価格の3%+6万円に消費税を加えると仲介手数料の額になります。

不動産売買の仲介手数料は、一般的には「速算法」といわれる計算式で算出します。たとえば1000万円で成約した場合は、以下のように計算します。

1000万円 × 0.03  + 6万円 = 36万円(+消費税)

ただし、800万円以下の物件については計算が変わってきます。

法令の本則では400万円以下の不動産であれば成約額の4%+2万円、200万円以下の不動産であれば成約額の5%です。

2024年、800万円以下の物件について上限が引き上げられた

2024年7月1日に「低廉な空家等の媒介特例」が施行されました。この特例により、売買価格が800万円以下の低廉な空き家等の売買や交換の媒介に関して、宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬額の上限が引き上げられました。

この改訂により、従来の報酬計算方法にかかわらず、800万円以下の売買において最大で30万円(税抜)の1.1倍、すなわち33万円(税込)まで受領可能となりました(成約額にかかわらず33万円)。

ただし、以下の要件があります。

  • 物件の価格: 税抜きで800万円以下であること
  • 媒介契約の締結: 媒介契約の際に、報酬額について依頼者に十分な説明を行い、合意を得ること

この特例は本来、不動産業者が低価格帯の空き家等の取引を積極的に行うようになり、空き家問題を解決することを目的としていました。

しかし「空家等」と「等」がついている事からわかるとおり、空き家でなくてもこの特例の対象となり得ます。

賃貸の仲介手数料の本則と問題点

宅地建物取引業法では、賃貸における仲介手数料の上限は以下のように定められています。

  • 仲介手数料の上限は、合計で賃料の1か月分(消費税は別途)貸主と借主の双方から受け取る場合、各々から賃料の0.5か月分ずつ受領する。ただし、借主の合意があれば、借主だけから賃料の1か月分受領できる。

仲介手数料について、値引き交渉が可能な場合もあります。また、そもそも仲介手数料無料や半額に設定されている物件もあります(詳しくは後述)。

また、法令の本則では大家と入居者の双方から月額家賃の0.5か月分としつつ、実務では入居者のみから1か月受領することが通常となっている件については、この記事の後半で解説しています。

仲介手数料は法律によってどう定められているか?

具体的な数字は国土交通大臣が規定

売買の場合、不動産の仲介手数料は宅地建物取引業法第46条によって、国土交通大臣が定める上限額以内とすることが定められています。

具体的な率は、昭和45年の建設省告示に規定されています。

二百万円以下の金額 百分の五・五
二百万円を超え四百万円以下の金額 百分の四・四
四百万円を超える金額 百分の三・三

実際の建設省告示は以下のURLから閲覧できますが、内容はたびたび変更されており、最終改正は令和6年6月21日です。改正により、前述した「低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例」などの内容が盛り込まれています。

法令は上限額を規定しているという論点

宅建業法46条と国土交通大臣告示が決めているのは「報酬(仲介手数料)の額の上限」です。そこで「上限なのだから、もっと安くしてほしい」「価格交渉していいのではないか」という意見もあります。

もちろん交渉可能ですから、交渉してみるのが悪いわけではありません。

しかし、注意したいのは、前述したように「低価格な不動産の報酬額の上限が引き上げられている」という点です。

1億円で成約した場合の仲介手数料は306万円(税別)ですが、1000万円の場合は36万円(税別)です。それなのに、仲介業者がやる仕事はあまり変わりません。

筆者の感覚では1000万円くらいの不動産の仲介では、仲介手数料が安すぎると感じます。やることが非常に多く、背負わされる法的責任も重いのに、36万円が上限というのは厳しい制限です。

昭和の時代の建設省告示をいまだに使っているため、今の貨幣価値や物価の相場間が反映されていないのが原因でしょう。

賃貸の場合の法令の定め

賃貸不動産の仲介手数料は、宅地建物取引業法(宅建業法)第46条および国土交通大臣の告示(昭和45年10月23日建設省告示第1552号、最終改正令和6年6月21日国土交通省告示第949号)により、以下のように定められています。

  • 貸主と借主の双方から0.5か月分ずつ受け取り、合計で1か月分とする。
  • 依頼者の承諾を得た場合、借主から1か月分を受け取り、貸主からは受け取らない。

つまり、居住用建物の賃貸借においては、依頼者の一方から受け取ることのできる報酬の額は、原則として賃料の0.5か月分(消費税等相当額を含む)以内です。

ただし媒介の依頼を受ける際に依頼者の承諾を得ている場合には、1か月分(消費税等相当額を含む)まで受領可能となります。 

しかし、多くの不動産賃貸管理業者が入居者に十分な説明をしないまま、家賃の1か月分の仲介手数料を受領している実態がありました。

そんな業界を揺るがせたのが、以下の裁判でした。

賃貸の仲介手数料について(東急リバブルの判例)

2020年1月14日、東急リバブルに対して、不動産の借主に対して家賃0.5か月分と遅延損害金の返還を命じる判決が下されました。

これは入居者が「契約前に家賃1ヵ月分の仲介手数料を支払うことを許諾していなかった」と主張し、東急リバブルに手数料の一部返還を求めて提訴した裁判の確定判決です。

  1. 一審(東京地裁):借主の請求を棄却。東急リバブルの主張が認められました。
  2. 二審(東京高裁): 2019年8月、東京高等裁判所は、東急リバブルが媒介依頼成立時点までに借主から1ヵ月分の手数料の承諾を得ていなかったと判断し、手数料の一部返還を命じました。
  3. 上告審(最高裁):2020年1月14日、最高裁判所は東急リバブルの上告を棄却し、二審判決が確定しました。これにより、東急リバブルは借主に対し、手数料の0.5ヵ月分(約11万8125円)と遅延損害金の返還を命じられました。

この判決は不動産業者に大きな影響をあたえ、借主から家賃1ヵ月分の手数料を受領する際の手続きや説明を見直す動きが広がっています。

また、この裁判を通じて「法令の本則は、仲介手数料は家賃の0.5か月だ」という認識も広がっています。

不動産仲介手数料に関するQ&A

不動産売買や賃貸物件の借入においては、仲介手数料以外にも様々な費用が発生します。そこで、この章では仲介手数料の疑問点に加え、仲介手数料以外の費用についても解説します。

仲介手数料は値引き交渉してもいい?

タイミングによっては、不動産の仲介手数料の値引き交渉も行えます。

ただ、契約直前に値引き交渉をしてくる人がいますが、一般論からいってそれはNG。媒介契約(仲介契約)時に交わした契約書に、仲介手数料の額も記載されているからです。

そのため、土壇場での仲介料値引き交渉は、契約条項に違反していることになります。

交渉をするなら媒介契約以前の、早いタイミングがいいでしょう。

また、仲介手数料はせいぜい3%程度なので、それを値切ることとサービスの品質を比較考量することも必要でしょう。

たとえば、価格乖離率(売出し額からどれくらい値引きして成約したか)は、首都圏の中古マンションであっても6%程度とされています(東京カンテイによる)。地方の一戸建てなら、もっと値引率が大きいはずです。

「仲介手数料は値切らないから、なるべく値下げせずに売り切るよう頑張ってください」と依頼する方が、お得なケースも多いでしょう。

仲介手数料無料や半額の不動産会社は問題ない?

「売主の仲介手数料無料」というのは、宅建業の仕組みから考えてムリがあり、そこまでする不動産会社はちょっと心配です。筆者であれば「仲介手数料を支払って、ちゃんとした仕事をしてもらいたい」と考えます。

一方、不動産を購入する場合や賃貸の場合は、仲介手数料無料・半額でも問題ないケースが多いといえるでしょう。

たとえば新築戸建てなどを紹介する不動産業者は、売主(建売住宅のビルダー)から仲介料をもらっているので、それを収入源としています。アフターサービスなども売主が行うため、この場合の仲介手数料無料は、特に問題がないと考えられます。

また、賃貸物件で仲介手数料無料などに設定されているのは、大家さんがその分を支払っているからです。これもまた、大きな問題はないと考えていいでしょう。

仲介手数料を払うタイミングは?

宅地建物取引業法(宅建業法)では、仲介手数料(報酬)の受け取り時期について明確な定めはありません。

しかし、一般的な解釈として、仲介手数料は成功報酬であり、取引の成立時に報酬請求権が発生するとされています。

つまり、売買契約書を交わした時点で仲介手数料の支払い義務が生じるということです。

ただ、その考え方を前提としつつ、実務では次のような取り扱いが主流です。

  • 売買契約締結時に報酬額の50%を請求し、残りの50%を物件の引渡し・決済時に請求する方法。
  • 全額を物件の引渡し・決済時に請求する方法。
  • 賃貸借契約締結時に全額を請求する。

ただ、賃貸の場合は大家さんの署名捺印前に入居者から報酬を受け取っている業者も多く、その点はグレーではないかと思われます。

不動産売買にあたって仲介手数料以外に必要な経費は?

不動産売買にあたっては、仲介手数料以外にも様々な費用が必要となるため、あらかじめ整理しておくといいでしょう。

費用項目概要一般的な相場
印紙税売買契約書に貼付する収入印紙の費用。契約金額に応じて税額が定められています。契約金額により異なりますが、数万円程度が一般的です。
登録免許税不動産の所有権移転登記や抵当権設定登記の際に課される税金。固定資産税評価額の1~2%程度が目安です(所有権移転登記)。
司法書士報酬登記手続きを依頼する司法書士への報酬。5万~10万円程度が一般的です。
固定資産税等の精算金売買成立時点での固定資産税や都市計画税を日割り計算し、売主と買主で精算します。物件の評価額や引渡し時期により異なります。
ローン手数料住宅ローンを利用する際の事務手数料や保証料。数万~数十万円程度が一般的です。
火災保険料物件購入時に加入する火災保険の費用。保険内容や期間により異なりますが、数万~十数万円程度です。
引越し費用新居への引越しにかかる費用。距離や荷物の量により異なりますが、数万~十数万円程度です。

この中で大きいのは、所有権移転費用(登録免許税と司法書士報酬)およびローン手数料でしょう。

住宅ローン手数料については金融機関ごとに異なりますが、フラット35などでは意外に高額になります。

借入額の2%前後の事が多く、3000万円借り入れたとすると約60万円になります。

金融機関名手数料形態手数料率(または金額)
アルヒ定率型借入額の2.2%(税込)
住信SBIネット銀行定率型借入額の2.2%(税込)
楽天銀行定率型借入額の1.1%(税込)
イオン銀行定率型借入額の1.87%(税込)
三井住友信託銀行定率型借入額の0.99%(税込)
三井住友銀行定額型33,000円(税込)
優良住宅ローン(新築)定率型借入額の0.8%(税込)、最低11万円

また、所有権移転費用など司法書士に支払う金額について、詳しくは以下の記事で解説しています。

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賃貸入居にあたって仲介手数料以外に必要な経費は?

賃貸物件への入居時には、仲介手数料以外に以下のような初期費用が発生します。

費用項目概要一般的な相場
敷金家賃滞納や退去時の原状回復費用に充てられる保証金。問題がなければ退去時に返還されます。家賃の1~2ヶ月分
礼金貸主への謝礼金で、返還されません。家賃の1~2ヶ月分
前家賃入居開始月の家賃を前払いする費用。月の途中から入居する場合は日割り計算されます。家賃の1ヶ月分
火災保険料火災や水漏れなどのトラブルに備える保険料。加入が義務付けられていることが多いです。約1万5,000~2万円(2年間)
保証会社利用料家賃保証会社を利用する際の費用で、家賃滞納時に立て替えを行うサービスです。家賃の0.5~1ヶ月分
鍵交換費用防犯上の理由から、入居時に鍵を新しく交換する費用です。約1万5,000~2万円
引越し費用新居への移動にかかる費用で、距離や荷物の量、時期によって変動します。独身で近場の場合約3万~10万円
クリーニング費用退去時の室内清掃や消毒にかかる費用です。約1万2,000円~3万円

なお、敷金や礼金については以下のページからダウンロードできる「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を読んでおくと役に立ちます。

まとめ「仲介手数料の計算方法と信頼できる不動産会社の探し方」

不動産の仲介手数料は、原則として以下の方法で計算できます。

不動産の仲介手数料は、「売買」と「賃貸」で計算方法や上限額が異なります。売買の場合、基本的な速算式は次の通りです。

  • 200万円以下: 取引価格 × 5% + 消費税
  • 200万円超~400万円以下: 取引価格 × 4% + 2万円 + 消費税
  • 400万円超: 取引価格 × 3% + 6万円 + 消費税

たとえば、1000万円の物件の場合、手数料は 36万円+消費税 となります。また、2024年から施行された「低廉な空家等の媒介特例」により、800万円以下の物件では仲介手数料の上限が33万円(税込)に引き上げられるケースがあります。

賃貸の場合は、賃料の1か月分が上限(消費税別)です。本来は貸主・借主それぞれから0.5か月分ずつ受け取るのが原則で、借主のみから1か月分受け取る場合は事前の同意が必要です。

ただし、売買・賃貸いずれの場合もより詳しい情報を知っておく方が、取引を安全に進めることができます。時間があれば、この記事の本文の気になるか所を読み直してください。

これらの情報を知っておくことで、適正な手数料を理解し、不動産取引で不利にならないよう準備ができます。

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