令和6年に発表された沖縄県の地価調査結果について解説します。
国が公表する「公示地価」と並び、土地を売買する際に価格の目安となるのが、都道府県が公表する「標準価格」です。沖縄県では、住宅地、商業地、工業地の基準値を選定し、毎年7月1日時点で基準地点の地価を調査し、標準価格の変動を見ていきます。
ただし、注意が必要なのは、実際の売買価格はケースバイケースで、方角や道路の接道状況、土地の傾斜などが影響し、価格が決まる点です。
また、売主の売り急ぎや買主の買い急ぎなど、特別な事情が加味される場合もあるため、基準地に近い場所であっても、公示地価の標準価格とは異なる価格で売買されることがあります。この記事では、この点も詳しく説明していきます。
筆者は不動産会社で沖縄県内の物件を日々500件ほどスクーリング調査し、また定期的に不動産の相談、売却査定、仲介、買取業務を行っています。今回は、沖縄の不動産売買に関心のある一般の方々に向け、2024年の沖縄不動産市場の現状について詳しくご説明します。
この記事はトーマ不動産株式会社の當間が制作しました。
2024年7月1日時点 沖縄県地価調査結果
沖縄県は2024年7月1日時点の地価調査結果を発表しました。沖縄の地価上昇率は全国上位に入り、全用途の平均変動率は前年比プラス5.9%で、2014年から11年連続で上昇しています。
全国平均のプラス1.4%を大きく上回る伸び率で、特に住宅地の伸び率は5.8%で9年連続全国1位を記録しています。宅地需要が依然として強く、上昇傾向が続いています。
沖縄県は離島であり、土地の供給が限られています。また持ち家率が低く、土地需要が根強いことから、供給不足の状態で、需要の増加が土地価格の上昇要因となっています。
これまで那覇市や中南部地域を中心に地価が上昇していましたが、今年は北部地域にもその傾向が広がっています。これまで横ばいだった国頭村や東村、今帰仁村でも上昇が見られます。特に恩納村では、県外からの移住者による需要が高く、住宅地の地価上昇率が29.0%と全国1位になっています。
地価調査・地価公示|沖縄県
ジャングリア開業と北部地域の地価上昇
2023年までは那覇市や中南部地域を中心に地価が上昇していましたが、2024年は北部地域でも地価の上昇が顕著になっています。国頭村、東村、今帰仁村など、以前は横ばいだった地域でも地価の上昇が見られるようになりました。特に名護市や本部町、恩納村、宜野座村では、全体的に地価が上昇しています。
住宅地の全国1位となった恩納村では、県外からの移住者による需要が高く、2024年には29.0%という驚異的な上昇率を記録しました。さらに、2025年夏には沖縄北部で大型テーマパーク「ジャングリア」が開業予定であり、それに伴い北部地域でのリゾート関連需要がさらに高まることが予想されます。
北部では県外富裕層が別荘を購入する動きも見られ、県外からの住宅投資が地価上昇の要因になっています。名護市や本部町、今帰仁村、宜野座村なども同様に地価が上昇しています。
中部地域の地価動向
沖縄県中部地域では、下落した地点はなく、北中城村が県内で2番目の上昇率16.9%を記録しています。
中城村は8.1%、西原町は7.9%、うるま市は7.0%と、全体的に上昇傾向が続いています。
沖縄中部地域では、以前から地価が安定的に上昇しており、北中城村や中城村、西原町がその代表例です。これらの地域は、那覇市からのアクセスが良好で、住宅地としての需要が高いことが上昇要因となっています。中部地域では、新しい商業施設や住宅開発が進んでおり、今後も地価の上昇が期待されます。
他府県との比較
沖縄県の地価は全国的に見ても独特です。他府県では県庁所在地を中心に地価が上昇する傾向が強いですが、沖縄では那覇市を中心とする都市部だけでなく、観光地やリゾート地での地価上昇が顕著です。
那覇市を中心とした価格形成に加えて、観光地やホテル、商業施設の影響が強く、他府県とは少し異なる動向を見せています。
公共交通機関での移動は那覇市中心部に限られているため、主に車での移動が中心となっており、道路インフラの整備が地価に与える影響も大きいです。道路インフラの整備が進む地域では開発利益の見込みが上昇の要因となります。
全国の上昇率トップは沖縄が多くランクイン
2024年の地価上昇率全国1位は恩納村真栄田で、29%の上昇率を記録しました。恩納村は、県外からの移住者や観光客による住宅需要が強く、リゾート地としての人気が高まっています。また、宮古島市の住宅地も上位にランクインしており、観光客の増加に伴ってホテル需要が急増しています。
トップ10には他にも6地点がランクインし、その多くは宮古島市の住宅地です。その他、北海道の千歳市や富良野市、長野県白馬村、熊本県菊陽町もランクインしており、これらの地域の共通点は観光客の増加や大規模施設の建設が地価上昇の要因となっています。
今後の懸念材料
沖縄の不動産市場は堅調に推移しているものの、日銀の政策金利引き上げに伴い、低金利だった住宅ローンの金利が上昇する見通しです。これにより、住宅需要に影響が出る可能性があります。また、建築資材や人件費の高騰により住宅価格が高止まりしていることも懸念材料です。筆者は、今後の金利上昇が持ち家需要にどのように影響するか、引き続き注視しています。
また、沖縄をとりまく安全保障の観点から東アジア情勢として台湾有事も気にかけておく必要はあると思われます。台湾有事が発生すると国内外からの観光客は激減し観光産業は壊滅すると思われます。特に台湾に近い宮古島や八重山等から影響がでて、その後沖縄本島に影響が及ぶと思われます。リゾート物件や別荘等の観光寄りの商業用、居住用不動産などは大きな影響があるでしょう。
工業地の動向
沖縄本島で大規模な工業用地を求めるのは困難です。近年、観光客の増加や大型店の開業を背景に、物流倉庫の需要が急増していますが、工業地の供給が不足しており、地価は高止まりしています。
西原町の小那覇工業団地、浦添市の勢理客周辺、糸満市の西崎工業団地、豊見城市の豊崎、うるま市の州崎工業団地などがありますが、県外と比べて土地取得費は高く、付加価値の高い事業でなければ採算が合いません。今後も工業用地の供給が限られているため、地価の上昇は続くと予想されます。
筆者は過去10年にわたり工業用地を扱ってきましたが、地価は大幅に上昇しています。今後も工業地の供給が少なく、上昇傾向が続くと予想されます。
沖縄の今後の展望
沖縄県では、観光客の増加とともに商業地やホテルの開発が進んでいます。那覇市や観光地を中心に、商業施設の出店需要が高まっており、県外からの投資も活発です。
また、沖縄は離島県であり、他府県のように住宅地を広く確保することが難しいため、住宅地の需要が高まりやすい状況です。今後も観光産業の活性化や大型開発プロジェクトが進む中で、沖縄の地価は下がりにくいと予想されます。
まとめ
2024年7月1日に発表された沖縄県の地価調査結果によると、沖縄の地価は全国でも非常に高い上昇率を記録しています。特に住宅地の人気が高く、9年連続で全国1位の上昇率となっています。この背景には、土地供給の限界、観光産業の活性化、そして大型テーマパーク「ジャングリア」の開発などが要因となっています。
沖縄の不動産市場は堅調に推移すると予想されますが、今後の金利や建築資材の価格動向に注意が必要です。不動産投資を検討している方は、これらの情報を踏まえて、慎重に判断を進めることが重要です。
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