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2025年路線価の最新情報と正しい適用方法―相続税計算で「いつの路線価」を使う?

相続税の計算では「被相続人が亡くなった年の路線価」を使用します。つまり、2025年中に相続が発生した場合は、必ず2025年分の路線価で土地評価を行います。

2025年の路線価が発表されたのは、今年7月1日。

国税庁が公表した2025年分の路線価(1月1日時点)は、全国平均で前年比2.7%上昇しました。路線価の上昇は4年連続で、現行の調査方法が始まった2010年以降では、今年が最大の伸び率となっています。

路線価が上昇を続けている背景には、景気の緩やかな回復と訪日外国人観光客の増加があります。インバウンド需要の増加により、訪日客数は3,687万人で過去最多を記録しました。低金利による不動産投資の活発化も、都市部を中心とした地価上昇を後押ししています。

今年の路線価の傾向と、相続税計算の概要について、この記事で詳しく解説していきます。


筆者は不動産会社で沖縄県内の物件を日々スクリーニング調査し、また定期的に不動産の相続相談、売却査定業務を行っています。また、提携先税理士事務所のご紹介も可能です。今回は、2025年路線価の最新情報と正しい適用方法―相続税計算で質問の多い「いつの路線価」を使うかについて一般の方々に向け詳しくご説明します。

この記事はトーマ不動産株式会社の當間が制作しました。

2025年全国路線価の最新動向

東京都渋谷区の再開発

相続税路線価とは、国税庁が毎年1月1日時点の地価を基に主要道路ごとに定め、7月に公表する1㎡当たりの価格です。

相続税・贈与税の土地評価に用いられ、公示地価の約8割を目安とし、奥行や間口などの補正率で調整して課税標準を算出します。

市街地の多くは路線価方式で評価され、設定がない区域は固定資産税評価額に倍率を掛ける倍率方式が採用されます。実勢価格より低い設定により納税者の公平と簡便性を図る税制上の仕組みです。

固定資産税路線価とは?

この記事で取り上げている相続税路線価の他に、固定資産税路線価も利用されています。固定資産税路線価は、市町村が3年ごとに公示地価等の7割を目安に設定し、土地1㎡単価として固定資産税評価額算定の基礎となる指標。固定資産税額は評価額×1.4%で課税され、市町村の主要財源を支えています。

上昇が目立つ都道府県の特徴

47都道府県のうち35都道府県で価格が上昇し、前年の29都道府県から6県増加しました。最も上昇率が高かったのは東京都の8.1%で、沖縄県が6.3%で全国2位、福岡県が6.0%で3位となりました。

東京都では、都心部の再開発や住環境の改善による住宅需要の増加が主な要因です。商業地においても、交通利便性の向上や人流の増加が期待される地域を中心に価格が押し上げられています。

インバウンド効果で観光地が大幅上昇

税務署ごとの最高路線価地点では、観光地の上昇が顕著です。長野県白馬村が32.4%プラス、北海道富良野市が30.2%プラス、東京都浅草が29.0%プラスと、国内有数のリゾート地や観光地が上位を占めました。

これらの地域では、宿泊施設の需要増加や商業施設の充実により、土地の収益性が向上していることが価格上昇に直結しています。

下落地域の構造的課題

一方で、12県が下落し、奈良県は全国最大の1.0%下落で17年連続減少、新潟県は0.6%下落で32年連続減少となりました。これらの地域は人口減少、高齢化、地域経済の停滞という共通の課題を抱えています。

能登半島地震の影響も深刻で、石川県輪島市は16.7%の大幅下落となり、自然災害が土地価格に与える影響の大きさが明確に表れています。

沖縄県の路線価動向:全国2位の6.3%上昇

県内最高路線価となる那覇市久茂地3丁目付近

沖縄県の路線価は前年比6.3%上昇し、東京都に次いで全国2位の高い上昇率となった。これは11年連続の上昇で、全国平均の2.7%を大幅に上回る結果です。

観光客数の回復が主な要因で、2024年の沖縄への観光客数は約966万人に達し、新型コロナウイルス流行前の2019年の1,000万人超の水準に近づいています。この観光業の回復により、ホテル開発が活発化し、分譲マンションなどの住宅需要も高まっています。

県内最高路線価と地域別動向

県内の最高路線価は、那覇市久茂地3丁目の国際通り(みずほ銀行那覇支店前)で24年連続で最高価格を維持しています。沖縄国税事務所管内のすべての税務署で上昇となっており、特に名護税務署管内では前年比8.1%の大幅な上昇率を記録しました。

沖縄都市モノレール(ゆいレール)駅前の路線価は、対象となる17駅すべてで上昇し、平均上昇率は7%となりました。最も上昇率が高かったのは壺川駅の13.9%で、県庁前駅、旭橋駅なども高い上昇率を記録しています。

今後の見通しと課題

海外・県外からの投資マネーの流入も価格上昇に影響を与えています。沖縄は海に囲まれており県外に土地を求めることができず、持ち家率も他府県と比べて低いため、県外からの住宅需要も強い状況です。

ただし、建築資材や人件費の上昇により、県内住宅物件の価格高止まりが懸念されています。地価高騰が賃貸物件の賃料上昇にも影響するため、特に子育て世代や若年層の生活に与える影響が課題となっています。

相続税計算における路線価の適用ルール

相続税路線価とは、国税庁が毎年7月に発表する道路ごとに決められた1㎡あたりの土地価格です。これは相続税や贈与税を計算するための基準となる価格で、実際の売買価格とは異なります。路線価は公示価格のおよそ80%を目安として設定されています。

使用する年度の路線価決定の原則

相続税の計算では「被相続人が亡くなった年の路線価」を使用します。この原則は極めて重要で、例えば2025年3月に相続が発生した場合は2025年分の路線価を使用し、申告や納付が翌年になっても使用するのは相続発生年の路線価です。

路線価は1月1日時点の価格を基準に7月に公表されるため、1月から6月に相続が発生した場合は7月の公表を待ってから評価額を確定する必要があります。

土地評価の計算方法

土地の相続税評価額は以下の計算式で求められます:

相続税評価額 = 路線価 × 土地の面積(㎡) × 各種補正率

補正率には奥行価格補正率、間口狭小補正率、奥行長大補正率などがあり、土地の形状や使い勝手に応じて評価額が調整されます。

  • 路線価:30万円/㎡
  • 土地面積:100㎡
  • 奥行価格補正率:0.92

計算式:30万円 × 100㎡ × 0.92 = 2,760万円(相続税評価額)

路線価がない場合の倍率方式

市街地以外など路線価が設定されていない土地は「倍率方式」で評価します。この場合の計算式は:

相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率

評価倍率や固定資産税評価額は、固定資産税評価証明書や国税庁ホームページで確認できます。

2025年路線価上昇が相続税に与える影響

2025年の路線価上昇により、土地を多く所有する相続では評価額が増加し、相続税負担も重くなる可能性があります。特に沖縄県のように6.3%の大幅上昇地域では、前年と比較して相続税額が大きく変わる可能性があります。

申告期限と準備の重要性

相続税の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。路線価の公表を待つ場合でも、この期限内に申告・納付を済ませる必要があります。

路線価上昇による税負担増加を踏まえると、早めの準備と専門家への相談が重要です。特に複雑な土地評価や相続税計算においては、経験豊富な税理士や宅地建物取引業者との連携が不可欠です。

まとめ「2025年中の相続では2025年の路線価で評価」

2025年の路線価は全国平均で2.7%上昇し、4年連続の上昇となりました。インバウンド需要の回復と低金利による不動産投資の活発化が主な要因です。特に沖縄県は6.3%と全国2位の高い上昇率を記録し、観光業の回復と投資マネーの流入が背景にあります。

相続税の計算では「被相続人が亡くなった年の路線価」を使用するため、2025年中の相続では2025年分の路線価で評価を行います。路線価上昇により相続税負担も増加傾向にあることから、適切な評価と早めの準備が重要です。

相続や不動産の評価でお困りの方は、専門家による正確な査定を受けることをお勧めします。複雑な土地評価や相続税計算において、経験豊富な専門家のサポートを受けることで、適切な対策を講じることができます。

沖縄県内の不動産評価についても、地域特性を理解した専門家による査定が重要です。

不動産の相続対策や売却を検討されている方は、まず現在の不動産価値を正確に把握することから始めましょう。路線価上昇の影響を受けた現在の市場価値を知ることで、将来の相続計画を立てる上で重要な判断材料となります。

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参考文献

  • 国税庁「令和7年分 路線価図・評価倍率表」
  • 国税庁「25年路線価は2.7%上昇、4年連続プラス」ロイター、2025年7月1日
  • 沖縄タイムス「沖縄の路線価、2025年は6.3%上昇」2025年7月1日
  • 国土交通省「令和7年地価公示」
  • 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数統計」

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