沖縄県八重瀬町は、「那覇市の郊外」という位置づけにあり、成長を続けています。2025年の地価公示では、町内平均㎡単価が8.0万円と前年比7.7%の上昇を記録しました。
本記事では、八重瀬町における不動産市場の最新動向から、地区別の特徴、売却時のポイントまでを専門家の視点で解説しています。
筆者は沖縄県内の物件を毎日200件以上スクリーニング調査しています。18年間にわたって八重瀬町・豊見城市・糸満市を中心に、不動産仲介を行ってきました。その間売買した不動産は、約300件にのぼります。その経験と地元ならではの視点で、八重瀬町の不動産事情と売却のノウハウをお伝えします。
なお、八重瀬町以外の不動産売却については、以下の記事をご参照ください。
この記事はトーマ不動産株式会社の當間が制作しました。
八重瀬町の不動産価格は上昇傾向(注意点あり)

まず、八重瀬町全体の土地の価格がどのように動いているのか、大きな流れを見ていきましょう。
最も信頼性が高い公的な指標である国土交通省の「地価公示」によると、2025年1月1日時点の八重瀬町の地価は、2024年と比較してプラス7.7%の上昇を記録したことがわかります 。
これは沖縄県全体の地価が力強く伸びている流れとも一致しており 、八重瀬町の土地に対する評価が高まっていることを示す、非常にポジティブなデータといえるでしょう。
立地とアクセスの良さが特徴の東風平エリア

八重瀬町北部の最大の強みは、那覇市中心部まで車で20分圏内という抜群の立地にあります。国道331号・507号といった主要幹線道路に近く、豊見城市・南城市・糸満市への移動もスムーズです。
筆者の知人も八重瀬町屋宜原に居住していますが、那覇空港や那覇市の勤務地まで30分弱でアクセス可能とのことです。また、夫婦共働きなので「沖縄自動車道での行き来がしやすく、子育てに便利な公園やスーパーが近くにあるのが助かる」そうです。ファミリー世帯に便利な立地だということでした。
八重瀬町北部エリアの不動産に関しては、那覇市の不動産価格が高騰する現在、引き続き価格上昇が続くと予測されます。
志多伯エリアは都市化を控える傾向
志多伯エリアは東風平エリアとは対照的に、豊かな農地が広がるのどかな風景が特徴です。このエリアの大部分は、原則として建物を自由に建てられない「市街化調整区域」に指定されています 。これは、大切な食料生産の場である農地や、良好な自然環境を守るためのルールです。
しかし、ただ開発を抑制するだけではありません。既存の集落においては「市街化調整区域における自己用住宅の開発許可等の一部緩和(通称 緩和区域)11号・12号規定」があり、自己用住宅(マイホーム)は建築許可が緩和されているエリアがあります。
売却時、不動産会社としてはまず「緩和区域に該当するエリアかどうか」などを調べて、住宅や店舗の建築が可能かどうかを調べる必要があります。
海や自然に恵まれた具志頭エリア

八重瀬町は農業を町の基幹産業として大切にしており、特に富盛や具志頭など南部エリアには豊かな自然と農地が残されています。
このエリアでは次のような注意点があります。
- 市街化調整区域が多く建物を建てられるかどうか精査する必要があること
- 農地も多く、転用可能かどうかを調べる必要があること
市街化調整区域は「原則として建物を建てられない地域」ですが、プロの目で見てしっかりと調査すれば「実は建築可能だった」ということも十分あり得ます。
トーマ不動産では無料で物件調査を行い、価格査定とあわせてお送りしています。
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不動産の種類による価格・売りやすさの違い(宅地と農地)
土地と一言で言っても、家を建てるための「宅地」と、作物を育てるための「農地」では、その性質も価格も大きく異なります。ここでは、それぞれの価格動向と、その背景にある理由を探っていきます。
また、一戸建て住宅の売りやすさの違いについても、この章で解説します。
八重瀬町における「宅地」の動向

八重瀬町の中心部である東風平の上田原地区など、利便性の高い「市街化区域」に指定されている場所の宅地は、坪単価が50万円を超える価格で売りに出されているケースも見られます 。
なぜ宅地はこれほど高い価値を持つのでしょうか。
その理由は、電気・ガス・水道といった生活に欠かせないインフラがすでに整っており、購入すればすぐにでも家を建てて快適な生活を始められるからです 。
宅地の価値は、多くの人々が「ここに住みたい」「この場所でお店を開きたい」と考える「需要」によって支えられています。需要が高いということは、将来、その土地を売りたいと思ったときにも買い手が見つかりやすく、資産としての安定性が高いことを意味します 。
「市街化区域」と「市街化調整区域」については、この次の章で詳しく説明します。
農業を守るために規制がかけられる「農地」
八重瀬町内における農地の取引価格を見ると、坪単価1万円前後がひとつの目安となっており、宅地との間には数十倍もの価格差が存在します 。
この価格差の原因は、農地が農地法によって厳しく守られていることにあります。
農地法により、農地は原則として農業を営む人(農家)にしか売却することができません。また、農地には勝手に家を建てたり、駐車場にしたりすることが固く禁じられています。
※2023年(令和5年)農地法改正により下限面積要件が廃止となり、小規模からの取得でも許可対象となり得るようになりましたが、第3条許可の実質審査は継続となっております。
農地を宅地に転用できれば、土地の価値は大きく跳ね上がります。そこで、不動産会社としては、農地の売却相談を受けた場合「まず宅地に転用できないかを検討する」ところからスタートします。
農地の活用について、詳しくはトーマ不動産で調査しますので、お問い合わせください。
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一戸建て(中古住宅)の市場動向は?
沖縄県内では、建築資材の価格上昇などの影響で新築一戸建ての価格が高騰しています 。その結果、中古住宅に注目が集まっており、一戸建て中古住宅の売買も活発に行われています 。
東風平エリアの特徴
4LDKなど部屋数が多いファミリー向けの物件は、子どもの進学や転勤といったタイミングで家を探している層からの需要を見込めます。
特に築年数が浅く、現代のライフスタイルに合った間取りの物件は人気があり、比較的早く売却先が見つかる可能性があります。
しかし価格の高騰傾向から、築年が古くてもリフォームして住むという需要も高まっており、築古物件であっても価格が下がりにくい状況です。
具志頭エリアの特徴
広い敷地を活かした沖縄らしい平屋建てや、赤瓦を使った伝統的な雰囲気の家は、県外からの移住者や、都会のマンション暮らしから解放されたいと考える層に人気があります 。
価格帯も東風平エリアに比べて手頃なため、自然に近い暮らしを指向する層に人気があります。また「田舎の物件を賃貸で借りたい」という需要もあります。
「市街化区域」と「市街化調整区域」とは?
これまでにも何度か登場した「市街化区域」と「市街化調整区域」という言葉。これは、土地の価値や将来性を考える上で避けては通れない、非常に大切なまちづくりのルールです。ここでは、その違いを分かりやすく解説します。
なお、市街化調整区域かどうかを判定する方法は以下の記事で詳しく解説しています。
ルールを理解するための基礎知識

那覇市の県庁前周辺にはビルが並んでいますが、こういう場所は「市街化区域」です。新都心の天久には住宅や整備された公園が並んでいますが、ここも「市街化区域」です。
那覇から海沿いに南下し、糸満市の名城まで行くと山や畑が大半を占めるエリアになります。これが「市街化調整区域」です。
このように、日本では都市計画という大きな枠組みの中で、エリアを二つの種類に分けています。
八重瀬町には「市街化調整区域」が多く、その中に「市街化区域」が設けられています。また、どちらにも該当しない「都市計画区域外」があり、主に具志頭方面(新城、後原、具志頭、玻名城、安里、世名城、与座など)が該当します。
| 市街化区域 | 市街化調整区域 | |
|---|---|---|
| 目的 | まちを積極的に発展させるエリア | 原則として市街化を抑えるエリア |
| 家の建築 | 原則自由にできる(一部地域除く) | 原則できない(厳しい条件と許可が必要) |
| インフラ整備 | 道路や水道などが優先的に整備される | 整備が遅れがちになる可能性がある |
| 土地の価格 | 高い傾向にある | 低い傾向にある |
| 資産価値 | 安定・上昇しやすく、売却もしやすい | 変動しにくく、売却が難しい場合もある |
東風平地区の不動産売却ポイント
東風平地区(伊覇・屋宜原・東風平)の多くは、「市街化区域」に指定されています。また、八重瀬町の行政・商業の中心として機能しており、安定した不動産需要があります。
この地区で不動産売却を成功させるポイントは、立地の利便性と将来性を適切にアピールすることです。
特に屋宜原・上田原・東風平の振興地域では、区画整理事業により道路幅や上下水道などのインフラが整備されています。㎡単価3.6万円~4.5万円前後で取引される場合が多く、新築戸建てや建売分譲の需要も強いエリアです。
一方、宜次・志多伯・富盛などの旧集落エリアでは、昔ながらの街並みや地域コミュニティの結束が特徴です。注意したいのは、接道条件や建築制限により価格に影響するケースがあること。売却時は解体費用や造成コストを適切に織り込んだ価格設定が重要になります。
具志頭地区の売却戦略
具志頭地区は農村地域の特色が強く、全域が「都市計画区域外」です。この地区の魅力は、豊かな自然環境と観光ポテンシャルにあり、セカンドハウス需要なども考えられます。
具志頭城跡や八重瀬公園などの観光資源に近い物件は、観光・体験型レジャー施設としてのポテンシャルをアピールポイントにできます。
価格水準は㎡単価3万円~3.9万円程度と東風平地区より低めです。しかし、海沿いや高台の景観良好地では、別荘需要により相場を上回る取引も期待できます。
一方で、農地転用や造成が必要な場合は、手続きの複雑さと費用負担を考慮した価格設定が必要です。
価格は最新の沖縄県地価調査から実勢価格を推定。
農地転用+開発許可は難易度が高くなる
特に筆者の経験則ですが、農地転用と開発許可がセットになると不動産取引のハードルが大きく上がります。取引トラブル防止のために、不動産売買に慣れている経験値のある業者に相談することをおすすめします。
沖縄県の開発許可は、居住系はまだしも事業系はエンドユーザーが考えるよりも煩雑な手続きが必要になります。筆者が担当したケースでは事業系の購入用途による売買契約から1年半を要し、その後取引決済、所有権移転、引き渡しを行いました。
事業向けの大規模物件などでは注意が必要でしょう。
地元で信頼できる不動産会社の選び方

不動産売却は人生で何度も経験することではないからこそ、信頼できるパートナー選びが成功の鍵となります。
特に八重瀬町は地域特性が複雑ですから、その土地ごとの価値を深く理解し専門的な知識をもつ不動産会社を選ぶようにしてください。
地域密着型の不動産会社を優先する
八重瀬町での売却では、地域密着型の会社を軸に検討しましょう。大手には広告力やブランド力がありますが、地域密着型には八重瀬町の詳しい地域情報、購入希望者の情報、独自の販売ルートという強みがあります。
担当者の実力を見極める4つのポイント
不動産会社の見極めには、以下の4つのポイントが重要です。特にこちらの話をしっかり聞いてくれる「ヒアリング力」は簡単そうに見えて、できていない担当者が多いものです。
- 査定根拠の明確さ - 近隣事例や物件特性を踏まえた具体的な説明ができるか
- 親身な対応 - 売却理由や希望を丁寧に聞き、分かりやすく説明してくれるか
- 正直さ - メリットだけでなくデメリットも正直に伝えてくれるか
- 地域愛 - 八重瀬町とその不動産市場について自分の言葉で説明できるか
上記について確認してみてください。
また、那覇市以南に事務所を構える不動産会社なら、問題なく八重瀬町をカバーできます。おおむね南部エリア全域を対象に、信頼できる不動産会社を探してみてください。
よくある質問(Q&A)と失敗しないポイント

最後にここまでで触れられなかった話題の中から、八重瀬町の不動産を売る時に知っておきたいポイントをQ&A形式でまとめました。
今は売り時?タイミングの見極め方は?
不動産の売り時は需給・金利・季節・競合物件で判断します。内覧が動きやすいのは転勤や新学期前の時期といわれていますが、沖縄ではそこまではっきりした傾向ではありません。
一方で金利上昇や供給過多になると、価格は弱めに動きます。
現在最も気になる要因は「金利上昇」でしょう。日銀は金利を上げたがっていますし、アメリカからも金利を上げるようプレッシャーがかかっています。
その点を考慮して、今のうちに売り切っておくというのもひとつの考え方です。
仲介と不動産買取の違いは?どちらを選ぶ?
仲介と買取の違いは「価格」と「スピード」です。
仲介は広く市場に情報を出して買主を探すので時間がかかりますが、相場の価格で売却できます。
一方、不動産会社による買取は、早ければ数日で売却完了するスピード感が魅力ですが、価格は安くなります。よく「相場の7掛け程度が目安」といわれますが、筆者の経験では半額程度を提示されることもあり「相当安くなる」と考えた方がいいでしょう。
よく「買取なら仲介手数料がいらない」と言われますが、それでも価格的には不利です。両方の見積りをとり、経費まで含めてしっかり比較してください。
なお、不動産の買取については以下の記事で詳しく解説しています。
売却までの期間はどのくらい?
不動産の種類により異なりますが、売出しから売却完了までの期間は6か月から1年程度と考えるといいでしょう。ただし、市街化調整区域の物件などは動きにくく1~2年かけて売り切る場合もあります。
最初の1か月の反響を見て価格を調整するなど、早い段階で売却プランに修正を加えながら販売活動を行うと、少しでも早く成約できます。
なお、不動産の売却期間について詳しくは以下の記事で解説しています。
住宅ローン残債があっても売れる?
売却可能ですが、売却額でローンを完済できるかどうかによって難易度がかわるため、金融に詳しい不動産会社に相談するといいでしょう。
トーマ不動産ではファイナンシャルプランナーが在籍し、住宅ローンに関する質問にもお答えしています。
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原則として、住宅ローンの残債を物件売却価格で完済できる場合は問題なく取引を進めることができます。
不動産を売ってもローン全額を返せない場合は次の手段をとります。
- 自己資金で完済する
- 買い替えローンを利用する
- 場合によっては任意売却
いずれにせよ、金融機関と早めに相談しておくことが成功のカギです。
ハウスクリーニングやリフォームは必要?
原則は最小限でOKです。まずは清掃・除臭・照明の明るさ改善などの小さな不具合修繕がおすすめ。費用対効果が高く、やっておくと効果が見込めます。
大規模リフォームはコスパが悪く、かけた資金を回収できないことが多いので、価格設定とホームステージングのバランスで考えます。
詳しくはトーマ不動産までお問い合わせいただければ、初回無料でご相談に対応します。
お問い合わせ|トーマ不動産
土地だけ売る場合の注意点は?
境界・越境・再建築の可能性・造成費見込みを早めに確認するのがポイント。
土地は地目や接道条件で価格が大きく変わります。測量図・公図・農地転用の要否も要チェック。買主の資金化に時間がかかるケースがあるため、スケジュールには余裕をもたせましょう。
特に市街化調整区域や都市計画区域外では、まず最初にスケジュール感を確認しておいた方がいいでしょう。
近隣に知られずに売却できる?
水面下販売(限定公開)や買取で露出を抑える方法はありますが、おすすめしません。
広告を出さずに既存顧客に打診したり、業者ネットワークだけで買主を探すことになるため、情報の拡散力が弱くなるからです。
売却活動に制限がつくため、価格はやや抑えめになる傾向で「どうしても内密に」という場合のみにしておくといいでしょう。
どうせ売却が完了したら、近所の人にはわかってしまいます。それなら、最初から情報をオープンにして、高く・早く売った方がいいでしょう。
まとめ「八重瀬町の不動産売却はエリア別・物件別戦略が大切」

最後に、複雑で奥が深い八重瀬町の不動産売却を成功させるために、特に押さえておきたい3つの重要なポイントをまとめました。
不動産の「本当の価値」はエリアと区域区分で決まる
八重瀬町の不動産価値は、ひとくくりに考えることができません。
那覇に近く利便性が高い「東風平の市街化区域」と、豊かな自然が魅力の「具志頭の都市計画区域外」では、売れる価格も売却戦略も全く異なっています。まずはご自身の不動産がどちらに属し、どのような可能性があるのか、プロの目で正確に確認することが成功への第一歩です。
「農地」の売却は専門知識がないと売却が難しい
もしお持ちの土地が農地(畑など)であれば、売却には「農地法」という特別なルールが適用されます。
宅地に転用できるかどうかで価値が数十倍変わる可能性を秘めていますが、その手続きは非常に複雑です。特に市街化調整区域、都市計画区域外の農地は、経験豊富な専門家でないと適切な判断が困難です。
成功の鍵は、地域を熟知した「パートナー選び」にあり
このように複雑な条件を乗り越え、あなたの大切な資産価値を最大化するために最も重要なことは、八重瀬町の特性を隅々まで知り尽くした、信頼できる不動産会社を選ぶこと。査定額の高さだけでなく、この記事で解説したような専門的な視点から、ご自身の不動産に最適な売却プランを提案してくれる会社を見極めてください。
八重瀬町の不動産売却、私たちに相談してみませんか?
これらのポイントを踏まえ、「まずは自分の不動産の正確な価値を知りたい」「農地転用の可能性を調べてほしい」と思われたなら、ぜひ一度、私たちトーマ不動産にご相談ください。
私たちは、八重瀬町をはじめとする沖縄県南部エリアを専門に、長年培ってきた経験と知識で、数多くの売却をお手伝いしてきました。あなたの不動産が持つ本当の価値を見出し、ご希望に沿った売却が実現できるよう、全力でサポートいたします。
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もちろん、ご相談や査定は無料です。しつこい営業なども一切行いませんので、安心してお問い合わせください。
沖縄全体の不動産売却動向については、以下の記事で解説しています。






