不動産売却

不動産の訪問査定ではどこを見る?実は「あなた自身」も見られている

不動産屋が訪問査定で見ているのは、物件よりもむしろ「あなた」です。

ほとんどの不動産屋にとって査定そのものは手段に過ぎず、真の目的は「媒介(仲介)契約を取る」ことです。

そこで不動産業者の多くは、

  • あなたの売る気はどれくらいあるのか?
  • いくらなら「売る」と言ってくれるのか?

というポイントを見極めようとします。つまり訪問査定は、不動産営業の一環として行われるものなのです。

その点を理解した上で、訪問査定にうまく対応し、不動産売却を成功させる重要なポイントを解説します。また、訪問査定を成功させるためのコツも紹介していきます。

訪問査定前に片付けておかないと「査定額が下がるかも?」という心配は無用です。プロは部屋が散らかっているくらいで査定額がブレたりしません。ただし、売出後にお客さんが内覧に来るときはきれいに片付けておきましょう。

【超重要】訪問査定で何を尋ねられるか?

筆者の経験上、机上査定でもかなり正確に査定額を出せます。特に土地とマンションは誤差が出にくく、机上査定でも十分実用的な査定を出せます。

しかも、土地・マンション・一戸建ていずれも、机上査定を出す前に一度現地を訪問します。通常外観チェックは行いますので、筆者はお客さんには「ひとまず机上査定でもかまいません」と説明していました。

では、多くの不動産会社の営業マンが「訪問査定じゃないと正確な査定ができないんです」と言っている理由は何でしょうか?
考えればわかりますが、それはあなたに会って「営業したい」からです。

逆に、外観も見ないで机上査定を出す業者もいますが、それはそれで信用できません。

営業マンが話の中に織り交ぜてくる「売らせるためのトーク」

正確な査定をだすためでなく、どちらかというとあなたに営業をしかけたい営業マンが、あなたに会ったときにどんな話をするか、注意深く聞いておいてください。

営業には一定の「型」があり、その「型」を使って営業トークをしてくるはずです。

  • 売る気がない人には「実はこのマンションを買いたい人がいるんですよ」と言う(これだけで売りたくなる効果あり)
  • 顧客に考えさせないよう、選択肢を2つか3つに絞って提案する
  • 「考えさせてほしい」という顧客に「一緒に考えましょう」とさらに食い下がる
  • 「Why」「How」系の質問で、オーナーの売る気を測る。また、売却を検討した理由を知ることで次の営業トークにつなげる

上記は一例ですが、ゴリゴリ営業するタイプの不動産会社では、こういった営業トークをいくつも用意しておき、対応してきます。

また、営業トークを社内で練習する「ロールプレイング研修」もしばしば行っています。
前提知識として、このような「売らせるための質問」「営業トーク」はうまく流しながら、不動産営業マンに正しい査定額を出させるように誘導してください。

「高い査定」はシロウトをだます「撒き餌」

絶対に気をつけたいのは「高すぎる査定額にダマされない」こと。

不動産の価格査定と、自動車の買取査定には1つ決定的な違いがあります。

  • 自動車の買取査定は「その価格で買い取ってくれる」
  • 不動産の査定は「その価格で売れるか不明」

私たちプロが不動産の査定額を考えるとき「高い査定額がいい査定額」とは、絶対に考えません。そうではなく「正確な査定額がいい査定額」なのです。

最近、出版社のダイヤモンド社が運営する「ダイヤモンド不動産研究所」では、顧客をだますために出してくる「意味なく高い査定」を「撒き餌査定」と呼んでいます。

いまだに多くの人が撒き餌査定にダマされているので、その点にはくれぐれも注意してください。

なお、現在の不動産価格査定が「高すぎる」現状については、以下の記事でレポートしています。

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逆に、こちらから営業マンに「尋ねたいこと」

訪問査定では不動産会社の質問にこちらが答えるもの、と思いがちです。

しかし筆者としては、せっかく不動産会社の営業マンが来てくれるなら、逆にこちらから質問をしておくべきだと考えます。

不動産売却を任せるべきかどうかを判断する訳ですから、以下については確認しておいてください。

  • 相手の会社の営業姿勢
  • あなたの不動産の売却戦略

たとえば筆者は「御社では一般媒介でも引き受けてくれますか?」という点を、最初に尋ねます。「どうしても専任媒介で」と食い下がるようなら要注意です。

その会社にはノルマがあり「媒介目標」の中に、「専任媒介を何件取るか」という項目が設定されているかもしれません。

そういった点は向こうの都合なので、しつこいようなら仲介自体を断ってください。

また、「この家の仲介依頼をしたら、御社ではどのように売り出しますか?」という点も聞いておきましょう。

あまり考えていなさそうだったり、提案内容に納得いかない場合は、仲介依頼を避けた方が無難かもしれません。

高価売却のために「査定の仕組み」を知る

不動産の価格査定方法には、主に以下の3つの手法があります。このうち、不動産業者が主に使用するのは「取引事例比較法」です。

ほとんどの不動産価格査定ソフトも、取引事例比較法をメインに設計されています。

項目取引事例比較法原価法収益還元法
概要類似物件の過去の取引事例を基に価格を算出建物の再調達原価から減価修正を行い、価格を算出将来的な収益を現在価値に換算して価格を算出
算出方法類似物件の取引価格を参考に、物件の特性による違いを調整再調達原価 - 減価修正額 + 土地価格想定年間純収益 ÷ 還元利回り
特徴全く同じ物件は存在しないため、調整が必要で、誤差が生じる可能性がある築年数の経過による価値の減少を正確に反映するのが難しい将来の収益予測には高度な知識が必要
備考最も一般的な査定方法建物の構造や仕様がわかる必要がある投資物件の評価に適している

物件固有の情報(ここが見られるポイント)

価格査定に影響を与える、不動産固有の状況としては、以下のポイントがあげられます。各要素の中で、重要度が高い「立地」「広さ」については、今から変更することは不可能です。

一方、設備の状況や整理整頓されているかという点は、今からでも改善可能であるものの、査定額に与える影響は小さいという傾向があります。

したがって「大幅に査定額アップを狙う」という趣旨のブログ記事などは、宅建士目線で読むと「信憑性が低いな」と感じます。

詳細チェックポイント
立地駅やバス停までの距離、スーパーや学校、病院など生活利便施設までのアクセス性や周辺の治安、日当たり・眺望など、暮らしやすさを決定づけます。「駅徒歩何分か?」「スーパーや公共施設までの距離は?」「周辺の安全性は?」
広さ延床面積や土地の広さは、ゆとりのある生活空間を確保できるかを左右します。大家族向けか単身向けかなど、ライフスタイルに合ったサイズを検討します。「収納を含めた広さは十分か?」「将来の家族構成変化にも対応できるか?」
築年数建物が古いほど劣化が進んでいる可能性があります。耐震性や修繕履歴、リフォーム計画などを確認し、長期的な維持コストも考慮する必要があります。「耐震基準は満たしているか?」「メンテナンス履歴はあるか?」
構造木造、鉄筋コンクリート(RC)、鉄骨造など、建物の構造により耐久性や断熱性、将来的な修繕費用が変わります。「断熱性・耐久性はどうか?」「修繕コストはどれくらいか?」
間取り部屋の配置や数、収納スペースの広さは使い勝手を左右します。一般的な家族構成に合う間取りかがチェックポイント。「部屋数は市場ニーズに合致するか?」「動線はスムーズか?」
設備キッチンや浴室、トイレなどの設備が新しく高品質なほど、生活の快適度が上がります。最新設備の導入状況も、物件の価値に影響します。「設備は最新型か?」「給湯システムや省エネ性能は?」「設備更新時期がきていないか?」
状態内装の美しさやリフォーム状況は、引っ越した後すぐ快適に暮らせるかどうかに直結します。「リフォーム歴やクリーニング状況は?」「そのまま住めるか?」

上記はおおまかなチェックポイントで、実際にはもっと細かい項目をひとつずつチェックしていきます。

不動産価格査定に影響を与える「物件を取り巻く状況」

物件固有の状況・特徴だけでなく、物件を取り巻く経済状況、社会状況も査定額に影響を与えます。

まったく同じ建物であっても、時期が違えば査定額に多少の影響がでます。また、立地が違えば、査定額にはっきりとした影響が出る場合もあります。

詳細
需要と供給のバランス人気エリアは需要が高く、物件が不足している場合、価格は上昇しやすくなります。逆に、供給過多のエリアでは価格が停滞または下落する可能性が高まります。
金利動向住宅ローン金利が低いと、借入れがしやすくなり需要が増え、ひいては不動産価格の上昇につながります。一方、金利が上昇すれば需要が減り、価格上昇は抑えられます。
経済状況景気が好調な局面では人々の購買意欲が高まり、結果的に不動産価格も上昇しやすくなります。逆に不景気で消費マインドが低下すれば、価格は抑制される傾向が見られます。

こういった点は机上査定の段階でわかっている場合が多いですが、訪問査定をしてみて新たな発見がある事もあります。

たとえば中古マンションの売出しをするタイミングで、近隣に新築マンションが複数売り出されている場合などは注意が必要です。そのエリアの、局所的な需給バランスが変わってしまっているからです。

不動産の訪問査定を依頼するメリットとは?

机上査定でなく訪問査定を選ぶメリットは、主に2つあげられます。

  1. きちんとした訪問査定であれば非常に正確な査定額を出せる(会社による)
  2. 訪問査定に来た担当者と話をして営業方針や知識の豊富さを判定できる

筆者としては、①が絶対に必要だとまでは考えていません。物件によっては精密な査定が不要な場合もあります。

なぜなら、通常「査定より少しだけ高く売り出して市場の反応を見る」からです。どうせ査定額よりちょっと高めに売り出すのであれば、査定の誤差は気にしなくてもかまいません。

むしろ②が重要です。

訪問査定に担当者が来た時こそ、じっくりと会社の事情を聞き、担当者がどのような人物かを見極めるチャンスですから、その点を意識して話を聞いてみてください。少し前の章で解説したように、「この不動産をどういう戦略で売るつもりか?」といった点についても確認しておきましょう。

一戸建てで本当に精密な価格査定が必要な場合

一般の不動産価格査定ソフトで算出しにくい、超高額物件などは訪問査定を依頼すべきでしょう。

住宅兼アパートや、店舗併用住宅なども、机上査定では正確な査定が難しく、できるだけ訪問査定を選びたい物件です。

また、築年数が古かったり痛んでいる部分があり「売出し前にリフォームすべきかどうか」という悩みがある場合も、訪問査定がおすすめです。自社で買取再販している不動産会社は、リフォームにかかる費用や、それによって底上げできる付加価値を具体的に説明できるはずです。

このように、定型的ではない物件や、手を加える必要がある物件では、積極的に訪問査定を利用する価値があります。

すでに売却を決断しており不動産会社を選定したい場合

査定依頼をする人には「価格によっては売却を検討したい」という場合と「すでに売却は確定している」という場合があります。

売却を決めているなら机上査定はあまり意味がないので、訪問査定にしておきましょう。なるべく多くの不動産会社に査定してもらい、話をしてみたうえで不動産会社の選定を行うべきです。

また、複数の不動産会社に査定依頼をするなら「不動産一括査定サイト」がおすすめです。

筆者は不動産一括査定を手放しでおすすめはしませんが、不動産会社選定のためのツールとしては利用価値があると考えています。

詳しくは以下の記事でご確認ください。

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売却にあたって障害がある物件について相談する

隣家の塀が越境していたり、権利関係に問題がある物件の場合も、訪問査定がおすすめです。

目的は2つあります。

  1. 来てくれた不動産会社の説明を聞き、力量を確認
  2. 具体的な対策方法の提案をしてもらう

そもそもその物件の問題点を解決できる不動産会社かどうかを見極めた上で、問題の解決方法を提案してもらうことができれば、一歩前進したことになります。

孤独死など、いわゆる心理的瑕疵物件の場合も、訪問査定時にじっくり相談しておくといいでしょう。

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売れない物件についてセカンドオピニオンを聞く

不動産媒介(仲介)契約の契約期間は3か月です(専任媒介・専属専任媒介)。そこで、3か月たっても売れず、反響も薄い場合は、他社の訪問査定を依頼してセカンドオピニオンを聞いてみるのも手です。

これまでにも述べたように、最近は不動産一括査定サイトが乱立し、多くの不動産会社が「高すぎる査定額」を出すことが問題視されています。

思い当たる節がある場合は、別の不動産会社にセカンドオピニオンを聞き、今の売出価格が妥当かどうかを確認してみてください。

ではどの会社に訪問査定を依頼すべきか?

筆者は、都市部では大手不動産会社に査定依頼をするのが確実だと考えています。大手はコンプライアンス体制が確立されており、査定も正確です。

しかし、大手不動産会社にも弱点はあります。

大都市圏以外に対応していないのです。たとえば、香川県高松市や栃木県宇都宮市レベルの都会であっても、対応できる大手不動産会社はありません。

そこで、地方都市の場合は不動産一括査定サイトをうまく利用して、地元不動産屋を探すことになります。

地元不動産業者大手不動産業者
強み・地域密着で周辺相場や特殊法令に精通
・小規模案件にも対応しやすい
・非定型的(地方・調整区域)の物件でも粘り強い
・精密な査定システムによる正確な価格査定
・広範な広告宣伝力で短期売却可能
・アフターサービスや保証制度が充実
弱み・営業担当者の質にばらつき
・査定が不正確な場合も
・大手ほどのアフターサポートが少ない
・非定型的・売りにくい物件には弱い
・地方や交通不便な地域には対応しづらい
適した状況・地方や特殊な立地(市街化調整区域など)での売買こまめな対応や粘り強い売却活動が必要な場合都市部での短期売却や住み替え需要がある場合。正確な査定額と安心のアフターサービスを求める場合

都市部なら大手不動産会社が安心

都市部では大手不動産会社を利用するのが安心だと述べましたが、大手もすべて同じではありません。

業界第1位と第2位の、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)および住友不動産販売を比較しても、打ち出しているポイントが異なっています

三井不動産リアルティは、業界でほぼ唯一「正確な価格査定」を公式サイトで打ち出している不動産会社。筆者としては、とくに儲かるわけでもない「査定の正確性」を打ち出している点を高く評価しています。

上記のリンク先でもわかるとおり、三井のリハウスは正確な価格査定を行い、値引きせずに売り切っていく姿勢が特徴です。

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一方、住友不動産販売の場合は、売却時のサポート体制を大きく打ち出しています。無料でハウスクリーニングを行ってくれる「戸建てクリーン」や、草刈りや庭木の剪定などを行い、物件の魅力を引き出してくれる点が強みです。

業界ツートップの三井不動産リアルティと住友不動産販売、どちらを選ぶか迷ったら、物件の特性や状況にあわせて考えてください。

空き家状態でクリーニングが必要なら住友不動産販売が適していますし、正確な査定を元に短期売却を狙うなら三井不動産リアルティがおすすめです。

地方圏では不動産一括査定サイトをうまく活用する

先ほど述べたように、大手不動産会社は都道府県庁所在地レベルの都市にもあまり対応していません。3大都市圏などの大都市を除くと、大手に依頼できないケースが大半です。

そこで、地方都市の場合は、不動産一括査定サイトなどを利用して地元不動産屋を探すことになります。

地元不動産会社の選び方については、大手不動産会社に比べるとサポート体制などに弱さはありますが、さまざまなメリットもあります。

  • 自社の近隣・周辺の物件や市場価格に詳しい
  • 小規模な仕事でも快く引き受けてくれる傾向がある
  • そのエリア特有の法令上の制限に詳しい

ただし一方で、デメリットもあります。以下の記事で詳しく解説していますので、参照してみてください。

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まとめ「不動産の適正価格を見極めるコツ」

訪問査定は、価格の正確な把握だけでなく、不動産会社の営業スタイルや担当者の信頼性を見極める重要な機会です。本記事では、訪問査定が行われる理由やそのポイントについて詳しく解説しました。

不動産の訪問査定では、物件の基本情報(立地や広さ、築年数など)はもちろん、設備や内装状態も確認します。

ただし査定額に大きく影響を与えるのは「立地」や「広さ」といった基本的な要素が中心です。部屋が片付いているかどうかは査定額にほとんど影響しませんので、過度に心配する必要はありません。

また、訪問査定で不動産会社が狙っているゴールは「媒介契約を獲得する」ことです。

そのため、営業マンが提案する「高すぎる査定額」や誘導的なトークには注意しましょう。本質的には、適正な査定額を元に売却戦略を立てることが大切ですから、相場を反映した正しい査定額かどうかをチェックしてください。

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