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【2025】沖縄県の路線価が上昇。「家が買えない」時代に

2025年の沖縄県の路線価は、前年比で平均+6.3%という高い伸びを示しました。これは全国平均の+2.7%を大きく超え、東京都に次いで全国2位の上昇率となっています。

この上昇は一時的なものではなく、ここ数年継続している成長トレンドの一部です。

  • 令和7年(2025年)沖縄県平均:+6.3%
  • 全国平均:+2.7%

沖縄の地価高騰の背景には、観光業の活況人口増加基地跡地の再開発などが大きく影響しています。

特に観光業の伸展は、新たな高級リゾートホテルの建設ラッシュを生み出し、地価上昇の原動力となっています。

また、沖縄は日本国内でも珍しく人口が増加している地域であり、住宅需要の高さも地価の上昇を支えています。

そのような背景を受けて地価上昇が続くエリアは、成長によるチャンス住民負担増というリスクの両方をはらんでいます。観光地を中心に経済活動は活発化していますが、地価変動による格差や生活への影響も深刻化しています。

この記事では、沖縄が直面する不動産市場のいびつな成長構造について、詳しく、またわかりやすく解説していきます。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。

令和7年の路線価から見る沖縄県の特徴

令和7年(2025年)の路線価データをもとに、沖縄県の地価の動きを全国平均や他県と比較しながら解説します

2025年の路線価は全国的に上昇しましたが、沖縄県はその中でも非常に高い伸び率を記録しています。東京都に次いで全国2位という異例の成長ぶりで、今後の動向にも大きな注目が集まっています。

なお、路線価の調べ方については以下の記事で詳しく解説しています。

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全国の路線価動向と沖縄県の位置づけ

2025年の全国路線価は、標準宅地で前年比+2.7%の上昇となりました。これは、4年連続のプラス成長となり、2010年の新算出方式導入以来最大の伸び幅です。

この背景には、東京・大阪・名古屋といった三大都市圏の回復だけでなく、福岡や札幌など地方中核都市の成長もあります。

とはいえ、全国47都道府県のうち35県で上昇、12県で下落が続いていることから、全国的には地域ごとの格差が問題となっています。

沖縄県が全国平均を大きく上回る成長を記録

その中でも、沖縄県の路線価の上昇率は+6.3%と全国平均の2倍以上。東京都(+8.1%)に次いで全国第2位の高さです。

これは福岡県(+6.0%)、愛知県や大阪府をも上回る数値で、沖縄が全国でも突出して成長していることを示します。

また、これは今年だけの単発的な上昇ではなく、過去数年にわたる着実な成長がさらに加速している……ととらえられる傾向です。

過去数年の地価公示データも右肩上がり

沖縄県の住宅地における地価公示の変動率を振り返ると、令和5年(2023年)は+3.6%、令和6年(2024年)は+5.5%、そして令和7年(2025年)は+7.3%と、年々上昇幅が拡大しています。

路線価は地価公示価格の約8割を目安に設定されるため、この地価上昇の流れがダイレクトに反映されています。

主要都道府県の平均路線価変動率(2025年)

都道府県平均路線価変動率全国順位
東京都+8.1%1位
沖縄県+6.3%2位
福岡県+6.0%3位
全国平均+2.7%-

地価公示、地価調査、路線価はいずれも土地価格動向の指標となるデータですが、次のような違いがあります。地価公示は毎年1月1日時点の価格を国(国土交通省)が発表するもので、地価調査は毎年7月1日時点の価格を都道府県が発表するものです。路線価は、毎年1月1日時点の価格を国税庁が発表しています。路線価は課税額の計算に使われ、一般的に公示価格の8割程度を目安としているといわれます。

沖縄県の地価上昇の背景にあるもの

沖縄県は、全国の地価回復トレンドにただ乗っているわけではありません。

  1. 独自の観光需要の高まり
  2. 人口増加傾向
  3. 大規模な再開発や投資プロジェクト

など、他地域とは異なる強い成長要因が働いています。

また、この成長は単なる一時的な現象ではなく、「地価が上がることでさらなる投資が呼び込まれる」という正のフィードバックループが形成されつつあると分析されます。

公的指標から読み解く沖縄県の地価急騰と地域格差

沖縄県では、住宅地・商業地ともに全国的にも高い地価上昇が続いています。しかし、観光地や都市部では大きな伸びが見られる一方、離島や人口減少地域では地価の停滞・下落も確認できます。そのため、県内における格差拡大が課題となっています。

この章ではその「地域格差」に焦点を当て、データを読み解いていきましょう。

地価公示・路線価・地価調査、すべてで上昇が加速

沖縄県の地価上昇は、国土交通省による「地価公示」「都道府県地価調査」および国税庁の「路線価」といった複数の指標で共通して見られる傾向です。

  • 令和7年の地価公示では、住宅地が+7.3%、商業地が+7.0%の上昇と、前年よりも大きく伸びています。
  • 都道府県地価調査(令和6年)でも住宅地が+5.8%、商業地が+6.1%と上昇率が拡大しています。
  • 路線価は令和7年で+6.3%の伸びを示し、3つの政府統計が一貫して高い成長を示していることが特徴です。

このように複数のデータから、沖縄県の地価が加速度的に上昇していることがわかります。

観光地や都市部で目立つ地価急騰エリア(ホットスポット)

県内で特に地価上昇が著しいのは、観光地やリゾートエリアです。

最新の地価公示(令和7年)では、次のような地点が特に高い伸び率を見せています。

  • 宮古島市(宮古島-6/住宅地):+23.1%
  • 石垣市(石垣-3/住宅地):+20.3%
  • 石垣市(石垣-2/住宅地):+19.3%

また、恩納村(令和6年地価調査)では住宅地で+29.0%という全国1位の上昇率を記録しています。

こういった地域では、観光需要の回復や高級ホテル建設、県外・海外からの投資用不動産需要が強いことが背景にあります。

都市部でもインフラ整備が追い風となり、沖縄都市モノレール(ゆいレール)沿線や那覇市中心部では路線価が上昇し続けています。

那覇市県庁前駅周辺は、1㎡あたり119万円という高水準を維持しています。

離島部や一部地域では地価が横ばい~下落傾向

一方で、観光投資が及ばない離島や人口減少エリアでは、地価が停滞・下落する傾向が続いています。

  • 伊江村(住宅地):-0.6%
  • 久米島町(住宅地):-0.3%
  • 粟国村など複数地域:0.0%(変動なし)

こうした地域では、観光開発や大規模投資の対象から外れていることや、人口減少・高齢化・輸送コストの高さといった構造的課題が浮き彫りになりました。

このように、沖縄県の地価は「一部の地域が際だって高騰し、他は横ばいまたは下落」という二極化の状況となっています。投資やマイホーム購入を考える際は、エリアごとの事情やリスクも十分に把握することが必要になります。

県内の地価が二極化している状況を受けて「うちの土地はどれくらいの価格?」と気になったら、以下の記事でマイホームの土地価格を推定することができます。

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沖縄県の地価を押し上げる3つの成長エンジン

では何が沖縄の地価を変動させているのでしょうか?

沖縄県の地価上昇は、単に一時的なブームではなく、観光・人口・投資という3つの大きな要因が組み合わさって生じています。それぞれの要素が相互に影響し合い、持続的な成長サイクルが形成されているのが特徴です。

回復から成長……観光産業は新たなフェーズへ

観光業は沖縄経済の中心であり、近年はコロナ禍からの力強い回復が続いています。

令和6年(2024年)の入域観光客数は約966万人で、過去最高だった2019年の水準に95%まで迫りました。

国内旅行者数はコロナ前を超え、国際観光客も急速に回復しています。

こうした観光需要の高まりは、ホテル建設のラッシュや商業地価の上昇を直接的に促進しています。

具体的には、宮古島や石垣島では20%以上もの地価上昇が見られ、2025年には高級ヴィラ「ローズウッド宮古島」など話題のホテルも続々オープン予定です。

本島北部では大型テーマパーク計画の「ジャングリア沖縄」がオープンを控えています。

このようなリゾート開発は土地への投資を呼び込み、さらに地価を押し上げる要因となっています。

若い世代が支える「住宅需要の底堅さ」

全国的には人口減少が深刻ですが、沖縄県だけは今も人口が増加し続けています。

令和7年6月1日時点の人口は146万5,183人と増加を維持しており、年少人口割合が全国1位・老年人口割合が全国最下位という「日本一若い県」でもあります。

また、世帯数も人口増加以上のペースで増えており、核家族や単身世帯の増加が顕著です。

このような人口構成は住宅購入層が豊富で、将来にわたって安定した不動産需要が続くことを意味しています。

基地跡地開発や建設投資がもたらす経済効果・投資

官民による大規模な投資インフラ整備も、沖縄の地価上昇に大きな影響を与えています。

特に注目されているのが米軍基地返還跡地の都市開発で、那覇新都心などの再開発成功事例が象徴的です。

また、「那覇軍港」「キャンプ・キンザー」など今後の返還予定地も都市発展の核として期待されており、すでに周辺地価に影響が現れ始めています。

このような新たな街づくりは、企業や住民を呼び込み、地域全体の経済成長を後押しすることにつながっています。

沖縄県民が直面する地価高騰の影響と現実

沖縄県の地価高騰は経済成長の象徴ですが、住宅価格の高騰や相続税負担の増大など、地価上昇の恩恵と同時に課題も浮き彫りになっています。

住宅価格と所得のギャップが拡大「家が買えない」

住宅取得に関する指標をみると、2010年に年収倍率5.5倍だった県内中古マンションの価格は、2021年には9.7倍まで上昇しました。

また、住宅供給不足と家賃上昇も重なり、特に離島部や北部地域での住まい探しが難しくなっています。

新テーマパーク「ジャングリア沖縄」の影響で、沖縄本島北部の単身層向け賃貸物件が+41.3%の上昇を記録するなど、賃貸物件の家賃が大幅に上昇している問題も深刻です。

相続税によって先祖代々の土地を守る事が難しく…

地価高騰は、土地の相続税評価額を引き上げるため、納税負担の急増という新たな問題を引き起こしています。

手持ち現金のないまま高額な相続税が課されるケースも多く、「先祖の土地を守りたいが納税のために手放さざるを得ない」という相談が、地元の税理士・法律事務所に寄せられています。

沖縄県は独自の土地事情(歴史的な権利関係や道路の複雑さ)もあり、専門家によるサポートが不可欠です。

実際、相続税申告において専門知識がないまま高額な納税をしてしまう事例も見受けられます。

トーマ不動産では、ファイナンシャルプランナー有資格者が在籍し、こういった問題に対応しています(初回ご相談無料で対応)。

「先祖代々の土地をどうすれば守れるか」とご心配の方は、お気軽にお問い合わせください。社長の當間は元警察官で、コンプライアンスについても厳しく遵守しています。

しつこい営業などは絶対に行いませんので、ご安心ください。

所得の伸びを上回る住宅価格と「買えない」現実

沖縄県の中古マンション価格年収倍率は、2010年の5.5倍から2021年には9.7倍まで急上昇しました。

年収倍率とは「不動産の価格が年収の何倍に相当するか」という指標です。

現在の中古マンションは、県民の平均年収のおよそ10年分に相当するというわけですから、かんたんには買えないという現実がよくわかります。

また、沖縄振興開発金融公庫の調査によると、県内の多くの市町村で住宅不足が問題となっており、特に北部や離島部でその傾向が強まっています。このため、3LDKなどファミリー向け賃貸住宅の家賃も県内全域で上昇し、家計への負担が大きくなっています。

つまり、持ち家を買うにも高すぎる。しかし、賃貸で住み続けるにも家賃が高くて家計が圧迫される……と、住宅事情が非常に厳しくなっている状況なのです。

そういった背景があり、最近の新築マンションでは、床面積を小さくして設備のグレードを落とすなどの工夫を行い、少しでも供給価格を下げる努力をしています。

しかし、それでも住宅ローンを組む金額が大きくなり、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が25%の安全水準を超える家庭も増えています。離島部では、住宅ローンと教育費を合わせると家計の60~70%を占めてしまうケースもあり、生活のゆとりが失われてしまうことが問題となっています。

路線価上昇がもたらす相続税負担の増加

地価高騰は、もう一つの大きな課題である相続税の負担増をもたらしています。相続税は主に路線価(相続税路線価)を基準に計算されるため、地価が上がるとそのまま納税額に反映されるからです。

沖縄特有の歴史や土地所有の文化もあり、世代を超えて土地を受け継ぐ家庭が多かったのですが、最近では「資産はあるのに納税のための現金がない」という現象が起きやすくなっています。

納税する現金がない場合は、家族の思い出が詰まった土地を一部または全て売却せざるを得なくなり、家族の歴史や地域のつながりが失われる点も問題です。

また、沖縄の土地には歴史的経緯や特殊な権利関係、細い道(二項道路=スージグヮー)が多く絡むため、相続手続きは他県よりも複雑になりがち。

相続に関する知識を身につける努力をしたり、早めに専門家に相談するといった対策も必要になります。

まとめ「沖縄県の不動産市場で今何が起きているか?」

沖縄県の路線価は、全国平均を大きく上回る成長を見せている一方で、県民生活や地域社会に複雑な課題ももたらしました。ここでは、最新データに基づく現状の整理と今後の見通しについて、ポイントをわかりやすく振り返ります。

全国でも上位の高成長、しかし二極化も進行

沖縄県の地価上昇率は、全国平均を大きく上回り、近年さらにスピードを増しています。

特に注目したいのは、この成長が「観光業の復活と拡大」「人口増加と若年層の多さ」「基地返還跡地の大規模開発」という3つの要素が組み合わさったサイクルから生まれていることです。

一方で、土地価格上昇の恩恵が集中する都市部や観光エリアに比べて、一部の離島や過疎地域では地価が停滞・下落し、地域間格差(=二極化)が進行しています。

このため、「沖縄県の地価は全体的に上がっている」とは単純にいえず、エリアによってまったく異なる実態があるのが特徴です。

また、住宅取得が難しくなっていること相続税負担の増大など、地価上昇が県民の家計に直接的な影響を与えている点にも注意が必要です。

今後も観光需要や大規模開発プロジェクトが続くことで、短・中期的には地価の上昇トレンドがこのまま続いていく、と考えられます。

特に、那覇軍港や牧港補給地区(キャンプ・キンザー)などの基地返還跡地の再開発は、今後さらに沖縄の不動産価値を押し上げる大きな原動力になると考えられます。

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