不動産の価格査定には、主として以下の3つの手法があります。
- 取引事例比較法
- 原価法
- 収益還元法
この中でも、宅建士など不動産業者が最もよく使うのは取引事例比較法です。そこで、この記事では、まず取引事例比較法について解説していきます。
一戸建て住宅の場合は原価法も併用し、建物部分の現在価値を算出します。そこで、原価法についても解説しました。
最後に、不動産投資ジャンルでよくつかわれる収益還元法についても、計算式を含めて解説します。
この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が執筆しました。
取引事例比較法による不動産査定の方法
不動産会社が最も多用する不動産価格査定の手法は取引事例比較法です。そこでまずは取引事例比較法について解説していきます。
取引事例比較法とは、近隣エリアや同一需給圏内の類似する不動産と比較することで、査定したい不動産の価格を算出する方法です。土地やマンションでよく利用されます。
実務上は、以下のようなステップで査定業務を進めていきます。
- 物件を調査し、特徴を把握・整理する
- 適切な成約事例を収集し、場合によっては売り出し事例も参照する
- 査定物件の付加価値等を調査し、補正すべき項目がないか確認する
- 査定価格を算出する
- 査定金額を元に売り出し価格を提案する
取引事例比較法で重要なのは、過去の成約事例の収集です。ここで適切な事例を収集できず、誤った事例を使ってしまうと、確実に間違った査定額が出てしまいます。
もし「自分で査定業務を体験してみたい」という場合は、以下の記事を参照してみてください。フリーソフトのダウンロードもできますが、Excelのワークシートで取引事例比較法を体験してみるのがわかりやすいと思います。
上記でダウンロードできるワークシートは、土地の価格査定用です。
不動産会社による訪問査定と机上査定の違い
不動産の査定を依頼する際、訪問査定と机上査定のどちらを選ぶか尋ねられます。不動産会社としては営業を兼ねて訪問したいので、訪問査定を勧めることも多いでしょう。
しかし、土地やマンションについては、机上査定でもかなり正確な査定額が出せます。
机上査定でも一度は現地を訪問し、マンションであれば外観やエントランスを確認し、土地であれば境界を含めて土地の現況を確認するためです。
一戸建ての場合は多少のブレが出ますが、経験のある不動産業者が査定すれば、せいぜい1割程度の誤差で査定することができます。
そこで、特に営業に来て欲しくない場合は机上査定を選んでおけば問題ありません。
面談していろいろ質問したい場合は、訪問査定をお願いするといいでしょう。
不動産一括査定のメリットとデメリット
不動産情報を入力すると、6社や10社の不動産会社から価格査定をもらえる不動産一括査定サイトが増えました。
確かに、地方にはホームページさえ持っていない不動産会社があります。
そういった古くさい会社に仲介依頼をするより、やる気のある不動産会社とコンタクトできる可能性が高まる点はメリットです。
しかし、以下の記事でもレポートしているように、不動産一括査定では査定価格そのものが不正確です。
そこで、大手不動産会社が対応している都市部では、わざわざ査定額が不安定な不動産会社に査定を出してもらう必要はありません。
まずは大手不動産会社に査定を依頼するのがいいでしょう。
なかでも価格査定の正確さと、値引きせずに売り切る販売力でおすすめできるのは、三井不動産リアルティー(三井のリハウス)です。
一方、地方では不動産一括査定サイトを利用する意義があります。地方では大手不動産会社が対応していませんし、古いスタイルで営業している不動産会社も多いからです。
その中で比較的信頼性の高い会社を選ぶ方法として、不動産一括査定サイトも利用価値があります。
なぜ不動産価格査定は無料なのか?
不動産の価格査定は一般的に無料で行います。不動産会社が営業活動の一環として、仲介契約を獲得するために行っているからです。
そのような背景から、仲介契約を獲得するために無理な高額査定を出す不動産会社も増えています。価格だけでなく、査定の根拠がしっかりと明記されているかどうかを確認してください。
また、有料で不動産の鑑定評価を行う不動産鑑定士という専門職も存在します。不動産鑑定士については後半で詳しく解説します。
正確な価格査定を行える不動産会社は限られる
先述の通り、不動産の価格査定は営業の一環として無料で行われる場合がほとんどです。そのため、価格に対する責任感が薄く、仲介契約を取るためだけの査定書をだしてくる業者もいます。
精密な価格査定が可能な不動産査定システムは導入コストが高いため、いまだに導入していない業者もあります。そのため、手作業でざっくりとした査定書を作成する会社もあります。
筆者が実際に不動産一括査定サイトを利用した際には、現在でも、まだまだ手作業の査定書を送ってくる業者があることを確認しています。
また、中古不動産業界では1980年代から価格査定方法の確立に向けた努力が続けられてきました。三井不動産リアルティーなどの企業がその先頭に立ち、価格査定手法の標準化が進んできた歴史があります。
沖縄県内では、トーマ不動産がAIを活用した価格査定システムにより正確な相場を反映した査定額をお出ししています。
価格査定のご依頼|トーマ不動産
トーマ不動産ではしっかりと査定の根拠を明示し、また納得のいく売却戦略をご提案します。
その他の価格査定方法について
先に述べた取引事例比較法以外にも、いくつかの価格査定手法が存在します。
ここでは、原価法と収益還元法について簡単に説明します。
原価法による価格査定とその計算式
原価法は、土地や建物などの再調達原価を基にして価格査定を行う方法です。一戸建て住宅の査定などにもよく使われます。
具体的な計算式は以下の通りです。
一戸建て住宅の場合、土地部分を取引事例比較法で査定し、上物を原価法で査定します。その合計額が、土地建物の価格ということになります。
収益還元法による価格査定とその計算式
収益還元法は、将来の家賃収入などの利益から不動産の適正価格を評価する手法です。主にアパートなどの収益不動産に用いられます。
また、収益還元法には、直接還元法とディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)があります。
直接還元法
直接還元法は築浅のマンションなどに適用され、比較的単純な計算方法を用います。以下の式に基づいて、年間の純収益を基に不動産の価格を計算します。
例えば、年間純収入が150万円で利回りが10%の場合、不動産価格は150万 ÷ 0.1 = 1500万円となります。
ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)
DCF法は、長期的な利益を考慮するやや複雑な計算方法です。保有期間中の収益と将来の売却予想価格を現在価値に割り引いて計算し、将来的な価値を推定します。
具体的な計算方法は、国土交通省の「不動産鑑定評価基準」に詳細が記載されています。以下のリンクからご確認ください。
不動産鑑定評価基準|国土交通省
不動産価格査定と鑑定評価の違いについて
不動産会社による不動産価格査定書は、不動産の売却価格を決定する際の参考として作成されます。
一方、鑑定評価は国家資格を持つ不動産鑑定士が行い、市場における正常な価格を合理的に評価するためのものです。
例えば、国土交通省が毎年実施する地価公示では、不動産鑑定士が鑑定評価を行い、基準地の価格を計算しています。
不動産の価格査定と鑑定評価はその目的や手法が異なるため、提示される価格が違っていることもあります。
詳細は以下のリンクからご確認ください。
不動産鑑定評価基準|国土交通省
ちなみに、鑑定評価は有料で実施されます。
まとめ「正確な不動産価格査定が売却のスタート地点」
この記事では、不動産価格査定の仕組みや取引事例比較法による具体的な価格査定方法について解説しました。
自分でざっくりとした査定を行うことも可能ですが、売却に際しては専門業者の正確な価格査定が不可欠です。
正確な査定額を前提として「どうすれば高く売れるか」「どれくらいの期間をかけて売却活動をするか」といった戦略が立てられるからです。
一般的に、地元の不動産会社よりも大手の不動産会社の方が正確な査定が期待できます。それは、コンプライアンス体制が整っており、精密な計算が可能な価格査定システムを導入しているからです。
特に三井不動産リアルティー(三井のリハウス)は査定の正確さに定評があり、公式サイトでも価格査定の信頼性を打ち出しています。
三井のリハウス|公式サイト
一方、沖縄県内ではトーマ不動産がAIを活用した価格設定システムを導入し、正確な価格設定を行っています。不動産の正確な価格把握を求める場合は、トーマ不動産にお問い合わせください。
トーマ不動産ではファイナンシャルプランナーが在籍し、税制に関するご質問にも対応しています。