親が所有している土地を調べたいとき、最初に市役所(区役所・町村役場)で調査を行います。「名寄帳(なよせちょう)」を使えば、親が所有するすべての不動産を一覧で確認できるからです。
相続が発生する前でも、親の承諾があれば代理で請求できますし、相続後であれば相続人の立場で取得可能です。
また、2024年4月から相続登記が義務化され、これを怠ると10万円以下の過料が科される可能性も出てきました。早めに調査しておくほうがいいでしょう。
この記事では、市役所での名寄帳の取得方法から、法務局での権利関係の確認まで、親の土地を調べる手順を分かりやすく解説します。
この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。
まずは市役所へ!「名寄帳(なよせちょう)」で不動産を一覧化

名寄帳とは、特定の人が所有する土地や建物をすべてまとめたリストのことです。市区町村が固定資産税を課税するために作成している台帳で、地方税法に基づいて管理されています。
名寄帳の最大のメリットは、親が所有する不動産を漏れなく確認できる点です。固定資産税の納税通知書が届いていない小さな土地や、親自身が忘れている不動産も記載されているため、相続時のトラブル防止に役立ちます。
ただし、名寄帳で分かるのは「その市区町村内にある不動産」だけです。親が過去に住んでいた複数の自治体にそれぞれ請求する必要がある点には注意しましょう。
名寄帳には以下のような情報が記載されています。
- 所在地(住所)
- 地番
- 地目(宅地、田、畑など)
- 地積(土地の面積)
- 固定資産税評価額
- 所有者の氏名
毎年1月1日時点での所有状況が記載されるため、年の途中で売却した土地などは翌年まで反映されません。
名寄帳はどこで取得?必要書類と手数料

名寄帳を請求できるのは、原則として固定資産税の納税義務者本人ですが、相続人や代理人も取得できます。請求先は土地が所在する市区町村の固定資産税担当窓口(政令指定都市では市税事務所)等です。
親が存命中に代理で取得する場合は、親からの委任状が必要です。相続後に取得する場合は、相続人であることを証明する書類を準備します。
相続人が名寄帳を請求する際の必要書類
- 被相続人(亡くなった親)の除籍謄本
- 請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本
- 請求者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
手数料は市区町村によって異なりますが、無料から数百円程度です。窓口での請求のほか、郵送での請求に対応している自治体もあります。詳細は各市区町村のホームページで確認するか、直接電話で問い合わせておくといいでしょう。
親が過去に複数の市区町村に住んでいた場合は、戸籍の附票で居住歴を確認し、該当するすべての自治体に請求しましょう。見落としがあると、後で思わぬ土地が出てくる可能性があります。
市役所では分からない「権利関係・地番」は法務局で調査

名寄帳で土地の所在は確認できますが、制限物権が付着していないかなど、詳しい権利関係までは分かりません。こういった情報を確認するには、法務局で登記情報を取得する必要があります。
登記簿には以下のような情報が記載されています。
- 所有者の住所・氏名
- 所有権の移転履歴
- 抵当権や根抵当権などの担保設定
- 地役権などの制限物件
特に相続時には、親祖父母名義のまま放置されていないかなど、登記簿上の名義を確認する必要があります。古い登記のまま放置されていると、相続人が増えて権利関係が複雑になり、売却や活用が困難になるからです。
法務局は全国に設置されており、窓口で登記簿謄本(登記事項証明書)を請求できます。また、オンラインで登記情報を確認できる「登記情報提供サービス」を利用すれば、自宅からでも手軽に調査できます。
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市役所の情報 vs 法務局の情報(取得できる書類等)

市役所と法務局では、取得できる情報の内容と目的が異なります。それぞれの特徴を理解して、状況に応じて、それぞれの役所を使い分けるといいでしょう。
市役所(名寄帳)の特徴
- 目的: 固定資産税の課税のための台帳
- 管轄: 地方自治体(市区町村)
- 取得できる情報: 所有する不動産の一覧、固定資産税評価額
- メリット: 一人の所有者がその自治体内で持つすべての不動産を網羅的に確認できる
- デメリット: 市区町村ごとに請求が必要、権利関係は分からない
法務局(登記情報)の特徴
- 目的: 不動産の権利関係を公示する
- 管轄: 国(法務省)
- 取得できる情報: 所有者(登記名義人)、権利移転の履歴、担保権の有無
- メリット: 法的に正確な権利関係が分かる、全国どこの法務局でも請求可能
- デメリット: 不動産ごとに請求が必要、費用がかかる
実務的には、まず市役所で名寄帳を取得して不動産の全体像を把握し、その後、重要な不動産について法務局で詳細な権利関係を確認するという流れが効率的です。
親の土地を調べる際に役立つ「3つの情報源」

名寄帳や登記簿以外にも、親の土地を調べる際に役立つ情報源があります。これらを組み合わせることで、より確実に調査を進めることができます。
情報源1:固定資産税の「納税通知書」で概要を把握
毎年4月から6月頃に送られてくる固定資産税の納税通知書には、課税されている土地の一覧が記載されています。実家のどこかに保管されていることも多いので、探してみてください。
納税通知書に記載されている情報は以下の通りです。
- 土地の所在地
- 地番
- 地目
- 地積
- 固定資産税評価額
- 課税標準額
ただし、固定資産税が非課税の土地(評価額が低い土地など)は記載されないため、納税通知書だけでは不十分な場合があります。あくまで初期調査の手がかりとして活用し、正式には名寄帳で確認しましょう。
情報源2:登記識別情報通知(権利証)から所在地を確認する
親が不動産を購入したり相続した際に発行された「登記識別情報通知」(登記済権利証)も重要な手がかりです。
登記識別情報通知には、不動産の正確な所在地や地番が記載されており、法務局で登記情報を請求する際に必要な情報が揃っています。
平成17年以前に不動産を取得した場合は、紙の「登記済証」(権利証)が発行されています。これらの書類は相続手続きでも使用するため、大切に保管しましょう。
ただし、権利証を紛失していても登記手続きは可能です。司法書士などの専門家に相談すれば、本人確認情報の提供などの方法で対応できます。
地番と住居表示
地番は、法務局が定めた「土地の管理番号」であり、一筆ごとの土地を特定して登記や固定資産税などの公的な手続きに使われます。一方、住居表示は、市町村が「住居表示に関する法律」に基づいて定めた「建物の住所」であり、郵便物の配達や救急車の出動など、日常生活での利便性を高めるために使われます。かつては地番がそのまま住所として使われていましたが、土地の分筆・合筆によって場所の特定が難しくなったため、市街地を中心に住居表示が導入されました。
情報源3:インターネット「登記情報提供サービス」の活用方法
法務省が提供する「登記情報提供サービス」を利用すれば、インターネット経由で登記情報を確認できます。窓口に行く手間が省け、費用も安く抑えられる便利なサービスです。
登記情報提供サービスの利用方法
- 登記情報提供サービスのサイト(民事法務協会)にアクセス
- 個人利用者として登録(一時登録でOK)
- 地番や家屋番号を入力して登記情報を請求
- クレジットカードで決済
- PDF形式で登記情報をダウンロード
登記情報提供サービス|民事法務協会
利用料金(個人の場合)
- 登記記録の全部の情報: 331円/件
- 所有者事項の情報のみ: 141円/件
窓口で登記簿謄本を取得すると1通600円かかるため、複数の土地を調査する場合は登記情報提供サービスのほうが経済的です。
ただし、このサービスで取得した情報は正式な証明書ではないため、相続登記や売却の際には、別途、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する必要があります。
調査の初期段階では登記情報提供サービスで概要を確認し、必要な土地についてのみ正式な証明書を取得するという使い分けが効率的です。
登記情報提供サービス
登記情報提供サービスは、不動産や法人の登記情報を自宅や職場のパソコンから手軽に確認するための有料サービスです。公式サイトにアクセスし、一時的な利用か、継続的な利用のための登録利用(個人または法人)かを選びます。必要な情報(全部事項や地図情報など)を選択し、料金をクレジットカードなどで支払うことで、すぐに情報を閲覧・保存できます。
調べた親の土地を「売却・活用」するには?

親の土地を調べた後は、その土地をどう活用するか判断する必要があります。相続登記の義務化により、放置すると法的なリスクが生じるため、早めに手続きをすませて計画を立てましょう。
売却が目的なら名寄帳+登記簿謄本を揃える
親の土地を売却する予定がある場合、名寄帳で全体像を把握した後、売却対象の土地について登記簿謄本を取得しておくとスムーズです。
不動産会社に査定を依頼する際には、以下の情報があると正確な査定が可能になります。
- 土地の正確な所在地と地番
- 登記簿謄本(権利関係の確認)
- 固定資産税評価証明書(評価額の確認)
- 測量図(境界が明確な場合)
特に、登記簿謄本で現在の所有者が誰か、担保権が設定されていないかを確認することは必須です。古い登記のままだと、売却前に相続登記を済ませる必要があります。
また、複数の土地がある場合は、優先順位をつけて売却を進めることも検討しましょう。利用予定のない土地を早めに現金化することで、固定資産税の負担を減らせます。
親の土地を放置する2つの大きなリスク(過料と税金)
親の土地を調べた後、何もせずに放置すると、以下の2つのリスクが発生します。
リスク1:相続登記の義務違反による過料
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。
この精度は義務化以前に発生した相続にも適用されます。つまり、数十年前に亡くなった祖父母名義のままの土地でも、2024年4月1日から3年以内(2027年3月末まで)に登記する必要があるのです。
遺産分割協議が難航している場合でも、「相続人申告登記」という簡易な手続きを行えば、とりあえず義務を履行したとみなされ、過料を回避できます。
リスク2:固定資産税の負担が続く
土地を所有している限り、毎年固定資産税がかかります。利用していない土地でも税金は発生するため、長期間放置すると大きな負担になります。
さらに、管理が不十分で雑草が茂ったり、ゴミが不法投棄されたりすると、近隣住民とのトラブルに発展する可能性もあります。管理不全の土地については、自治体から改善命令が出されることもあるため、注意が必要です。
売却か活用かで迷ったらトーマ不動産まで
親の土地を活用する具体的な計画が立たない場合、売却を検討するのも有効な選択肢です。特に以下のような土地は、早めの売却がおすすめです。
- 利用予定のない土地
- 遠方にあり管理が難しい土地
- 固定資産税の負担が大きい土地
- 将来的に価値が下がりそうな土地
一方で「兄弟の思い出が詰まっているので手放したくない」という場合は、空き家のまま放置するのではなく、活用方法を考えた方がいいでしょう。
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お問い合わせフォーム|アップライト合同会社
状況別:親の土地調査で「困った!」ときの対処法

親の土地を調べる際には、さまざまな困難に直面することがあります。よくある問題とその対処法をご紹介します。
親が存命中だが認知症などで意思表示が困難な場合
親が認知症などで判断能力が低下している場合、本人の代わりに土地の調査や手続きを進めるには、成年後見制度の利用を検討するといいでしょう(他に代理権授与型の家族信託等の選択肢もあり)。
成年後見制度には『法定後見』と『任意後見』があり、すでに判断能力が低下している場合は法定後見を家庭裁判所に申し立てます。
後見人が選任されれば、法定代理人として名寄帳の閲覧・交付請求が可能です(自治体所定の書類が必要)。なお、不動産の登記事項証明書の取得自体は、成年後見人に限らず第三者でも請求可能です。
ただし、成年後見制度は一度開始すると本人が亡くなるまで続き、後見人への報酬も発生するため、慎重に検討しましょう。
もし親がまだ判断能力を保っているなら、早めに任意後見契約を結んでおくことをおすすめします。また、親の承諾を得て委任状を作成してもらえば、代理で名寄帳を取得できます。
土地の所在地が複数の市区町村にまたがっている場合
親が複数の市区町村に土地を所有している場合、それぞれの自治体に個別に名寄帳を請求する必要があります。
まず、親の戸籍の附票を取得して、過去の住所地を確認しましょう。戸籍の附票には、本籍地を定めてから現在までの住所の履歴が記載されています。
過去に住んでいた市区町村すべてに名寄帳を請求すれば、見落としを防げます。郵送での請求に対応している自治体が多いため、遠方の場合は郵送を活用しましょう。
また、法務省が令和8年2月から開始予定の「所有不動産記録証明制度」を利用すれば、被相続人が登記簿上の所有者として記録されている不動産を全国的に一覧で確認できるようになる予定です。この制度が始まれば、調査の負担が大幅に軽減されるはずです。
兄弟姉妹など共有名義の土地を調べる際の注意点
親から相続した土地が兄弟姉妹の共有名義になっている場合、一人の判断だけで売却や活用はできません。共有者全員の同意が必要です。
名寄帳の請求は、共有者の一人からでも可能です。また、登記情報も誰でも取得できるため、調査だけであれば自分の判断で進めることができます。
ただし、その後の売却や活用を検討する際には、早めに他の共有者と話し合いを始めることが重要です。時間が経つにつれて数次相続が発生し、共有者が増えて権利関係が複雑になるリスクがあります。
共有状態を解消したい場合は、以下の方法があります。
- 共有持分を他の共有者に買い取ってもらう
- 自分の持分を他の共有者に売却する
- 土地全体を売却して代金を分配する(共有物分割)
- 裁判所に共有物分割請求を申し立てる
共有不動産の扱いは複雑なため、司法書士や不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:親の土地を調べたら次にすることは?

親の土地を調べた結果、利用予定のない不動産が見つかったら、ただ固定資産税を払い続けるよりも、活用方法を考えたいものです。
土地を所有し続けると、固定資産税の負担、管理の手間、将来的な相続トラブルのリスクが継続します。また2024年4月からの相続登記義務化により、登記手続きを怠ると過料が科される可能性があるため、放置は禁物です。
一方で、適切なタイミングで売却すれば、以下のメリットがあります。
- 固定資産税の負担から解放される
- 管理の手間がなくなる
- 現金化により相続税の納税資金に充てられる
- 兄弟姉妹間での公平な分配がしやすくなる
- 相続人申告登記の手間が不要になる
相続した空き家とその敷地を一定期間内に売却すれば、譲渡所得から3,000万円を控除できる税制優遇もあります。要件を満たせば、大きな節税効果が期待できます。
親の土地を売却するか、活用するか?
迷ったらトーマ不動産までご相談ください。売却すればいくらになるか査定し、一方で賃貸するなど活用すればいくら収入が入るかも計算します。
お問い合わせ|トーマ不動産
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