不動産売却 基礎知識

不動産の媒介契約とは? 4つの取引態様を宅建士がわかりやすく解説

不動産の仲介契約のことを、法律の用語で「媒介契約」と呼びます。仲介と媒介は、同じものと思ってかまいません。

不動産の売却時には、媒介契約の3つの類型とその特徴を理解した上で「どれを選ぶか」を検討する必要があります。

また不動産を購入するときには、4つめの取引態様である「代理」についても、大まかに知っておくと安心です。

そこで、この記事では宅地建物取引業法34条などに規定される不動産の媒介契約について、できるだけわかりやすく解説していきます。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が作成しました。

3種類の媒介契約と+αの取引態様

一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
複数業者への依頼可能不可不可
自己発見取引可能可能不可
レインズへの登録義務なし契約締結日から7日以内に登録契約締結日から5日以内に登録
業務処理状況の報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
契約期間法律上の制限なし3ヶ月以内(自動更新不可)3ヶ月以内(自動更新不可)

不動産の媒介契約に3つの類型があるのは、ユーザーの様々なニーズに応える必要があるからです。

つまり、「自分にとってどの契約類型が適切なのか?」考え、しっかり選ぶことが大切なわけです。

そこで、本記事では媒介契約の3種類(一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約)の特徴と「こんな人はこれを選んで!」というポイントをわかりやすく解説します。

また、あまり知られていないものの、広告を見ていると時々出てくる「代理」という類型についても補足的に解説します。

レインズとは?

レインズ(REINS)は、不動産業界で使われている「指定流通機構」のこと。正式にはReal Estate Information Network Systemという名称で、不動産会社同士が物件情報を共有するための全国規模のネットワークシステムです。レインズについては法令で定められており、契約形態により不動産会社に登録義務が課されます。

一般媒介契約のメリットとデメリット(宅建士目線)

一般媒介は、一社だけでなく複数の不動産会社と媒介契約ができる類型です。筆者はどちらかというと一般媒介を基本と考え、必要があれば専任媒介を選択するようにしています。

メリットデメリット
複数の不動産会社を活用できる
競争原理が働き、より好条件での売却も期待できる。
販売活動が消極的になる可能性
専任契約に比べて不動産会社の優先度が低くなる。
自分で買主を見つけられる
自己発見取引により仲介手数料を削減できる可能性も。
販売状況が把握しづらい
報告義務がないため、活動内容が分からないことが多い。
情報を公表せず売りやすい
レインズ登録義務がないため、非公開で売却できる。
買主との条件調整が複雑化
複数の不動産会社が関与し、調整が煩雑になる場合がある。
費用を抑えやすい
早期売却が実現すればコスト負担が軽減される。
売却に時間がかかる場合がある
不動産会社の販売活動が消極的で売却が進まないことがある。

一般媒介は、売主と不動産会社双方にとって、もっともしばりの少ない契約類型といえるでしょう。その点をメリットと考えるか、デメリットと考えるかも判断のポイントです。

専任媒介のメリットとデメリット(宅建士目線)

専任媒介契約は、1社のみと媒介契約し、その会社だけに売出しを任せる類型です。不動産会社に積極的な販売活動を期待できる一方で、会社選びの重要性が高い契約形式ともいえます。

契約した後で「しまった!」と思っても、3か月間はその契約を解除できません。

メリットデメリット
販売活動が積極的
1社専任のため、不動産会社が力を入れて販売活動を行いやすい。
囲い込みにあう心配がある
販売活動が1社に限定されるため囲い込まれやすい傾向がある。
販売状況を把握しやすい
活動状況の報告が義務付けられているため、進捗がわかりやすい。
不動産会社の能力に依存
担当会社の実力や対応次第で売却成功率が左右される。
レインズへの登録が義務付けられる
物件情報が広く公開されるため、買主が見つかりやすい。
競争原理が働かない
1社独占で競争心が働かず、対応が手薄になるリスクがある。
売却活動がスムーズ
窓口が1つに統一されているため、やり取りが簡単で効率的。
不動産会社を変更しにくい
不動産会社を変更したい場合でも3か月縛りがある(契約上)。

専任媒介は1社のみに売出しを任せる契約類型。そのため、責任を持って売却活動をしてもらうことも期待できます。

ただし「責任感があり信頼できる不動産会社を見つける」ということが大前提で、信頼できない不動産会社に当たってしまうと、逆に囲い込みをされてしまうこともあります。

囲い込み行為に注意

不動産の囲い込みとは、不動産会社が売主・買主双方から仲介手数料をもらうために、取引を自社だけで囲い込もうとする行為です。他の不動産会社からの買主情報を売主に伝えないことで売却機会を減らし、結果として売主が適正価格で売却できない可能性があります。

囲い込みを防ぐには、レインズの登録状況を確認し、販売状況の報告を細かくチェックすることが重要です。また、透明性を重視する信頼できる不動産会社を選ぶ必要もあります。

詳しくは以下の記事で解説しています。

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専属専任媒介はほぼ利用しない類型

専属専任媒介は、1社のみに売出しを任せて、なおかつ自己発見取引もできないという最も極端な契約類型です。

メリットデメリット
販売活動が積極的
1社が専属で担当するため、不動産会社が全力で販売活動を行いやすい。
囲い込みにあう心配がある
販売活動が1社に限定されるため囲い込まれやすい傾向がある。
販売状況が詳細に報告される
活動状況の頻繁な報告が義務付けられ、進捗を把握しやすい。
自分で買主を見つけられない
売主自身が買主を見つけても、必ず不動産会社を通す必要がある。
レインズへの登録義務がある
広い範囲で物件情報が共有されるため、買主を見つけやすい。
他の不動産会社に依頼できない
販売活動が1社に限定され、選択肢が狭まる。
売却活動が効率的
窓口が1社に絞られるため、交渉や調整がスムーズに進む。
不動産会社の能力に依存する
担当会社の対応次第で売却が成功するか左右される。

よくいわれるメリット・デメリットを整理すると上の表のようになります。

しかし筆者としては「デメリットが大きすぎるので、通常は採用する必要がない」と考えています。

しれっと専属専任媒介を推してくる不動産会社はNG

筆者の知る範囲だけでも、顧客に何の説明もせず「専属専任媒介」の契約書を渡す不動産会社は存在します。

ちゃんと説明をした上で、顧客が納得して選ぶならいいのですが、「自社に都合がいいから黙って専属専任媒介契約書を渡しておこう」という態度は、あまりいいものではありません。

こういう不動産会社に当たってしまったら、一度契約そのものを見直し、もう少し良心的な不動産会社に変更してください。

たまに目にする「代理」という取引態様について

最後に「代理」という取引態様にも触れておきましょう。これは、不動産会社が売主または買主から代理権を付与され、当事者に代わって売買契約を締結する形態を指します。

代理媒介(仲介)
不動産会社が依頼者の代理人として契約を締結し、その効果が依頼者に直接帰属する。不動産会社が売主と買主の間を取り持ち、契約成立をサポートするが、契約自体は当事者間で行われる。
不動産会社が依頼者の代理人として契約を行う。契約は売主と買主が直接行う。

一般の人が不動産を売る場合に、不動産会社に代理してもらうことはまずありません。しかし、不動産を購入する場合には目にする機会があります。

不動産の広告やチラシの「取引態様」欄が「代理」となっている場合、その不動産会社は売主(だいたい企業です)から代理人として販売を任されているということになります。

民法と「代理」の関係

不動産取引における「代理」も民法第1章第3節が適用されます。代理人が法律行為を行い、その効果は直接本人(代理をお願いした人や企業)に帰属します。媒介(仲介)は売主・買主が直接行う法律行為である点が異なります。

媒介契約をどのように使い分けるか?選び方は?

すでに述べたように、媒介契約に3つの類型があるのはユーザーの多様なニーズに応えるため。つまり、自分自身に適した契約類型を選ぶことが前提となっているわけです。

筆者としては、迷ったらまず一般媒介を検討し、特別な理由がある場合に専任媒介を選ぶようにすると、失敗しにくいと考えています。

以下に詳しく見ていきましょう。

一般媒介が適しているケース

一般媒介のデメリットが問題とならず、なおかつメリットを最大化できるのは「市街地の売れ筋物件を売却するとき」です。

売れ筋ですから、不動産会社はいわれなくてもやる気を持ってがんばります。登録義務がなくてもレインズに登録してくれるかもしれません(なお「登録してほしい」と依頼すれば、通常断られることはありません)。

都心部の駅近マンションや、人気の街の売れ筋物件などは、一般媒介を選ぶのがいいでしょう。

専任媒介が適しているケース

売出しにあたって、何らかの問題がある物件は、専任媒介契約を結ぶことで責任を持って販売してもらえる可能性があります。

たとえば、以下のような物件は、一般媒介契約にはあまり適しません。

  • 相続人の間で揉めており問題解決が必要
  • 隣地からの越境があり対策が必要
  • 差押えを受けているなど権利関係に問題がある
  • 住替えなどでタイムリミットが決まっている

こういった物件の売却にあたっては、「信頼できる不動産会社を選ぶ」ということを前提として、専任媒介を選ぶのがおすすめです。

不動産媒介契約に関する補足事項とよくある質問

この章では、不動産の媒介契約について「主要な内容ではないが知っておきたい」という事項を紹介しています。

広告する場合は取引態様を明示する義務がある?

不動産取引に際して宅建業者(不動産業者)が媒介する場合は、取引態様の明示が義務付けられています(宅建業法§34)。

この「取引態様の明示義務」とは、不動産会社が物件の売買や賃貸の広告を行う際、または顧客から注文を受けた際に、自社がその取引でどのような立場(態様)で関与するのかを明確に示す義務のことを指します。

不動産を購入するために広告を見る場合、「取引態様」という欄にも注目してみてください。たとえば「一般媒介」と書かれていれば、他の業者が広告していないかも確認し、よりよさそうな不動産会社を選ぶという手もあります。

不動産の仲介における報酬の額は?

不動産の売買における媒介報酬(仲介手数料)は、法令により、取引価格に応じて上限が定められています。

取引価格の範囲手数料率(税別)計算式(税別)
200万円以下の部分5%取引価格 × 5%
200万円超~400万円以下の部分4%取引価格 × 4% + 2万円
400万円超の部分3%取引価格 × 3% + 6万円

取引価格が400万円を超える場合、以下の速算式で簡易的に計算できます。

仲介手数料の速算式:取引価格 × 3% + 6万円(税別)

例えば、取引価格が1,000万円の場合、1,000万円 × 3% + 6万円 = 36万円となります。

なお、2018年の法改正により、取引価格が400万円以下の低廉な空き家等の仲介については、現地調査等の費用を勘案し、報酬の上限が18万円(税別)と定められています。 

これらの規定は、不動産会社が受け取ることのできる報酬の上限を定めたものであり、実際の仲介手数料はこの上限内で設定されます。そのため、中には「仲介手数料半額」などをアピールする不動産会社もあります。

ただし、あえて仲介手数料を安く設定している会社が優秀な業者かどうかは疑問です。

媒介契約に期間の制限はある?

不動産の売買や交換における媒介契約の期間は、契約の種類によって異なり、宅地建物取引業法第34条の2に基づき、以下のように定められています。

一般媒介法令上の期間の制限はなく、更新や解除の方法については双方の合意で定められる。
専任媒介宅地建物取引業法第34条の2第3項により、3か月を超えることができません。もし3ヶ月を超える期間を定めた場合でも、その期間は3か月とみなされる。
専属専任媒介専任媒介と同じ。

専任媒介、専属専任媒介ともに契約の更新は可能ですが、更新後の契約期間も3か月を越える事はできません。

これらの規定は、媒介契約の透明性と公正性を確保し、依頼者の利益を守るために設けられています。

まとめ「最適な媒介契約の類型を選ぶ方法」

この記事では、不動産仲介における「媒介契約」について、わかりやすく解説しました。要点を振り返ると、主要な契約累計が3つあり、その中でも「一般媒介」「専任媒介」がよく利用されるという点が重要でした。

一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
複数業者への依頼可能不可不可
自己発見取引可能可能不可
指定流通機構(レインズ)への登録義務なし契約締結日から7日以内に登録契約締結日から5日以内に登録
業務処理状況の報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
契約期間法律上の制限なし3ヶ月以内(自動更新不可)3ヶ月以内(自動更新不可)

一般媒介は複数の不動産会社に並行して依頼できる契約類型です。筆者は、市街地の売れ筋物件を売却する場合に、一般媒介が向いていると考えています。

一方、専任媒介は1社のみに売出しを任せる契約類型です。売れにくい物件の売却に際して、きっちりと責任を持って売り切ってもらう場合などに適しています。

このように複数の契約類型があるのは、ユーザーの多様なニーズに応えるため。したがって、不動産の売却にあたっては「自分のニーズに合致する累計はどれだろう?」と考え、適したものを選ぶ必要があります。

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