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不動産の契約解除を行う7つの方法と注意点【宅建士解説】

不動産の売買契約が成立した後に、その契約をなかったことにすることを「契約の解除」といいます。

不動産売買における契約の解除には、買主が手付金を放棄して契約を解除する「手付解除」や、買主が金融機関から融資を断られた場合に適用される「ローン特約による解除」などがあります。

その他にも、売主または買主のどちらかが契約に基づく義務を履行しなかった場合の「違約解除」など、さまざまな契約解除のタイプについて、この記事で解説していきます。

注意しておきたいのは、契約の解除をしても一部の費用は支払わなければならない場合があるという点です。

たとえば、いったん売買契約が成立したわけですから、不動産会社に仲介手数料の請求権が発生する場合があります(媒介契約書の内容によります)。
不動産売買契約の解除を検討する場合は、こういった点も踏まえて慎重に対処してください。

この原稿は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が制作しました。

不動産売買契約を解除する7つのパターン

時には、不動産の売買契約成立後、その契約を解除することがあります。また、物件の引き渡しが完了し、代金の全額を支払った後でも、契約が解除されるケースがあります。

筆者も実務において、何度か契約の解除を経験しました。

特に手付解除や住宅ローン特約による解除は、多くの不動産業者が経験しているはずです。

しかし、契約解除が可能な要件や、解除可能な期限などは決まっています。契約の解除を考えるにあたり、これらをしっかりと確認しておくことが重要です。

不動産の売買契約を解除した場合、気をつけておきたいのは仲介手数料です。法律上仲介手数料の請求権は契約が成立した時点で発生しますので、契約を解除しても不動産会社は仲介手数を請求することができます。ただし、媒介契約書(仲介契約書)に別段の定めをしていることもあります。たとえば住宅ローン解除の場合、一般的な媒介契約書では仲介手数料を請求しないと規定しています。

「手付解除」が可能なケースと注意事項

不動産取引では、一般的に売買契約の時点で、買主が売主に対して代金の一部を手付金として支払います。

この手付金は「解約手付」として扱われ、次のように契約を解除することができます。

  • 買主は手付金を放棄することで契約を解除できる
  • 売主は手付金の倍額を買主に返還することで契約を解除できる

このような契約の解除を「手付解除」と呼びます。ただし、この手付解除には2つの期限があります。

1つは契約書で定められた手付解除の期限です。これは具体的な日付を明記して取り決めます。

もう1つは法律上の期限です。民法では、相手方が契約の履行に着手するまでは手付解除が可能とされています。

しかし、この「相手方が履行に着手したかどうか」という点は、裁判で争われることも多く、慎重に判断する必要があります。

手付解除の期限「相手方が履行に着手」した時とは?

前述の通り、相手方が債務の履行に着手した時点から、手付解除は行えなくなります。しかし、どのような行為が「履行に着手した」とみなされるのかは、裁判例などを詳しく調べないと判断できません。

例えば、買主が司法書士に登記手続きの委任を行った場合や、売主が早めに鍵を引き渡した場合などは、履行に着手したとはいえないようです。

このように、手付解除を行う際は、慎重な判断が求められるため、早めに弁護士に相談するのがいいでしょう。

住宅ローン特約による契約解除

ほとんどの不動産売買契約書には、「住宅ローン特約」が付されています。

住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合に、不動産の売買契約を無条件で解除できる特約です。

この特約を設けることで、買主は手付金を含む全額を返還してもらい、安全に契約を解除できます。

この住宅ローン特約の効力は、金融機関の融資本審査が通らなかった場合に発生します。また、住宅ローン特約には通常、期限が設けられています。契約書に記載された期間内にローン審査が完了しなければ、特約を行使できなくなる点は要注意です。

通常は、契約時から2週間から1ヶ月程度の期間が設定されますが、この期間を確認しておくことが重要です。

また、買主が意図的に住宅ローン審査を遅らせたり、審査に必要な書類を提出しなかった場合には、住宅ローン特約が無効となる可能性もあります。

契約不適合責任による解除

「契約不適合責任」とは、不動産売買が成立した後、その不動産が契約内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。2020年4月の民法改正により、従来の瑕疵担保責任から契約不適合責任へと名称が変更され、その内容も変更されました。

この契約不適合がある場合、買主は売主に対して以下の4つの権利を行使できます。

  1. 追完請求権
  2. 代金減額請求権
  3. 損害賠償請求権
  4. 契約解除権

追完請求権とは、契約に適合しない部分の修補を求める権利です。それに加えて、代金の減額請求や損害賠償請求も可能です。

そして、売主が修理を行わない、または対応しない場合、不動産売買契約自体を解除することができます。契約を解除すると、売買契約は白紙に戻り、支払った代金や手付金の返還を請求することができます。

消費者契約法に基づく契約解除

一般に、消費者と事業者の間には情報量や交渉力などで大きな格差があります。この格差を補うために制定されたのが「消費者契約法」です。

不動産を購入する際に、消費者が不動産会社から購入した場合、この消費者契約法が適用されることがあります。

消費者契約法による契約解除の要件としては、不当な勧誘行為や重要な情報を開示しなかったことなどが挙げられます。

また、2022年の民法改正および2023年の消費者契約法改正により、消費者にとって有利な点がいくつか追加されました。

例えば、事業者が消費者に解約料を請求する際、その解約料の算定根拠を明示する義務が課されました。これは努力義務ですが、消費者が解約金の妥当性を判断するための重要な材料となります。

また、改正後の消費者契約法では、事業者が損害賠償責任の一部を免除する条項を契約書に盛り込む場合、その適用範囲を明確にしなければ無効となる可能性が出てきました。これにより、消費者に不利な契約条項が設けられにくくなると期待されています。

不動産売買でクーリングオフできる条件

不動産売買においても、「クーリングオフ」が可能な場合があります。これは宅地建物取引業法第37条の2に規定されており、以下の条件を満たした場合にクーリングオフが可能とされています。

  1. 売主が宅地建物取引業者であること
  2. 事務所等以外での買受けの申込みや契約であること
  3. 不動産の引き渡しを受けておらず、かつ代金の全額を支払っていない場合
  4. クーリングオフについての告知から8日が経過していない場合

クーリングオフにより契約をキャンセルした場合、手付金等の既に支払った金額も返還されます。また、売主とは別の宅地建物取引業者が仲介に入っていた場合、仲介手数料の返還も請求できます。

しかし、上記以外のケースではクーリングオフを利用することはできません。

最近問題になっているのは、高齢者の家に不動産業者が強引に訪問し、不動産の売却を迫る「押し買い」です。「契約を解除したいがクーリングオフができないか」という相談も多いようですが、このケースではクーリングオフが適用されず、不動産売買契約の解約は非常に難しいといえます。

債務不履行による解除

「債務不履行」とは、契約によって発生した義務(債務)を履行できない、または履行しない状態を指します。不動産取引においては、売主が物件を引き渡さない、または買主が代金を支払わないことなどが該当します。

債務不履行による解除を行う場合、まず相手方に履行を促す「催告」が必要となります。相当な期間を定めて履行の催告を行い、それでもなお履行がなされない場合に解除が可能となります。

以前、債務不履行解除には、債務者(契約の相手方)の責めに帰する事由が必要とされていました。しかし、2020年の民法改正により債務者の帰責事由は問われなくなっています。

そこで現在、契約の相手方に特に責任や落ち度がなくても、債務不履行解除が行えるようになっています。

話し合いによる合意解除

売主と買主の双方で話し合いがまとまれば、「合意解除」を行うことも可能です。例えば、結婚を前提にカップルが住宅の購入を申し込み契約まで進んだが、結婚が破談になった場合に契約解除の申し出をするケースなどが考えられます。

売主がその事情を理解し、契約解除に応じる場合、契約解除合意書を作成し、双方が合意した内容を文書に残した上で契約を解除します。

契約時点で解除の可能性が予見できる場合、あらかじめ解除要件を契約書に盛り込んでおくこともあり、その場合はスムーズに合意解除が行えることがあります。

一旦、所有権移転登記が完了してから契約が解除され、元の売主名義に戻す場合、不動産取得税が課税されることがあるため、注意が必要です。できれば税理士に相談しておくほうがいいでしょう。

不動産売買契約が無効・取消となる場合

ここまでは契約の解除について紹介してきました。契約の解除とは、その契約を締結した当事者の意思表示によって契約を最初からなかったことにすることです。

しかし、それ以外にも契約が無効となるケースや、取消が可能なケースが法律で定められています。

詐欺や錯誤による契約の取消し・無効

錯誤とは、契約などの法律行為において、当事者が重要な要素に関して誤解している状態を指します。

民法第95条では、錯誤があった場合、その意思表示は無効であるとされます。ただし、表意者の重大な過失による錯誤の場合は、その錯誤を理由に無効を主張することはできません。

不動産売買においても、錯誤があった場合(重大な要素に関して誤解していた場合)には無効を主張できる可能性があります。

また、詐欺による意思表示(例えば、詐欺にあって不動産を購入した場合)は、無効ではなく取消が可能な場合があります。

こういった内容は、民法第5章第2節の「意思表示」に関する部分で規定されていますが、条文を読んだだけではなかなか理解できません。

判例などを含めて、法律を詳しく理解している弁護士等の専門家でないと正しい判断ができないため、詐欺や錯誤による取消や無効を主張したい場合は、法律の専門家に相談すべきでしょう。

まとめ「契約解除の類型と信頼できる不動産会社の探し方」

不動産売買契約の解除や無効、取消にはさまざまな類型があり、要件が異なります。契約の解除について、表にまとめると次のようになります。

手付解除 買主が手付金を放棄するか、売主が手付金の倍額を返還することで契約を解除できる。契約書で定められた期限や法律上の期限に注意が必要。
住宅ローン特約による解除 買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合に、無条件で契約を解除できる特約。通常、期限が設定されている。
契約不適合責任による解除 契約後に不動産が契約内容に適合しない場合、売主に対して契約解除を含む複数の権利を行使できる。
消費者契約法に基づく解除 不当な勧誘や重要情報の非開示に基づく契約解除。2022年および2023年の法改正で、消費者に有利な規定が追加された。
クーリングオフ 売主が宅地建物取引業者であり、事務所外での契約かつ引き渡しや代金の支払いが完了していない場合に可能。告知から8日以内が条件。
債務不履行による解除 契約による義務を相手方が履行しない場合に行う解除。相手に履行を促す「催告」が必要。
話し合いによる合意解除 売主と買主が合意すれば、契約を解除できる。契約解除合意書を作成し、双方の合意内容を文書化することが重要。

契約の解除や無効を検討する際には、法的なリスクや費用について十分に理解し、慎重に対応してください。解除した場合でも費用請求される可能性がある仲介手数料や、不動産取得税などについても考慮する必要があります。

不動産取引では大きな金額が動くため、契約に関する疑問や不安がある場合は、専門家に相談することが大切です。また、それ以前に、契約をしっかりと進めてくれる、信頼性の高い不動産業者に仲介を依頼することも必要です。

筆者は都市部であれば、まず大手不動産会社に仲介を依頼すべきだと考えています。大手はコンプライアンス体制がしっかりしており、契約書についても専門家によるリーガルチェックが行われているからです。

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