不動産売却

知らない不動産屋から手紙が来た場合の対処法を宅建士が解説

大切な家族を亡くした直後、なぜか見知らぬ不動産会社からダイレクトメールが届きます。

「なぜ自分の名前と住所を知っているのか」と驚く方も多く、個人情報が漏洩したのではないかと不安を感じるのは、まったく自然なことです。

結論からいうと、個人情報が漏洩したわけではありません。 不動産会社は、法務局に登録された不動産登記の情報をもとにDMを送っているだけです。

また、「あなたの物件を探しているお客様がいます」といった手紙の文句は、ほぼテンプレートです。特定の買い手がいるわけではなく、登記情報から機械的に送っているだけですから、実際には「あなたの物件をほしい顧客」は存在しません。

この記事では、こうした手紙が届く仕組みと、適切な対処法を解説します。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石秀彦が制作しました。

個人情報が漏洩しているわけではない理由

不動産会社からのDMが届く仕組みはンプルです。

不動産会社は法務局(登記所)に保管されている「不動産登記簿」の情報をもとに、手紙を送っています。

不動産登記簿には、土地・建物の所有者(登記名義人)の氏名と住所が記載されています。そしてこれは、誰でも閲覧・取得できる公開情報です。手数料を払えば、法務局の窓口でもオンラインでも、誰でも取得できます(登記情報提供サービス:1件334円〜)。

不動産屋は定期的にこの情報を取得し、相続などで不動産を取得した人に、機械的にダイレクトメールを送ってきます。

つまり、あなたの個人情報が不正に流出したわけではなく、公開されている情報を利用しているにすぎません。

その点、特に心配する必要はありません。

ただし、「公開されているから仕方ない」と割り切るには、少しモヤモヤする気持ちもあるでしょう。その点については、後ほど触れます。

そもそも「登記制度」とは?

登記制度は、不動産の所有者が誰であるかを公の記録として残すことで、権利関係を社会に示す仕組みです。法律用語でいえば「第三者対抗力」(自分の権利を第三者に主張できる効力)を持たせるための制度です。

本来この登記制度は、所有者の権利を守るための仕組みです。

しかし現実には、この制度を利用して登記名義人の住所を調べ、ダイレクトメールを送る不動産会社が存在します。合法的な行為ではありますが、登記本来の趣旨からすれば、目的外に近い使い方といえるでしょう。

そう考えると、こんな手紙を送ってくる不動産屋が「良心的だ」とは思えません。

登記に「公信力がない」とは?

登記には「公信力」はありません。つまり、「公示はするけれど、登記された内容が必ずしも真実とは限らない」ということです。そのため、登記を信頼して取引した場合に常に保護されるわけではない、という点は注意が必要です。

対処法は原則「無視」でかまいません

こうした業者は、大量のリストに対して機械的にDMを送っています。1通1通の反応を丁寧に管理しているわけではありません。そのため、いちいち返事をするよりも、無視するのが最善の対応です。

むしろ注意したいのは、「迷惑です」「もう送らないでください」と返信してしまうケース。反応があったということで、かえって「見込み客」として扱われ、しつこい営業リストに入るリスクがあります。

また、「不動産に関する重要なお知らせ」「行政からのご案内」のように、一見公的な文書に見えるよう工夫された手紙もあります。

これは、権威のあるものに人は従いやすいという心理(「権威性の法則」)を利用した、いわゆるカモフラージュ手法です。内容がいかにも公的に見えても、送り主が不動産会社であれば、同じく無視してかまいません。

「登記名義人の住所が自社から近い」という条件で送っている

筆者自宅に届いたDM

実は筆者も、最近父を亡くしました。

知らない不動産屋からの手紙は、当然のように届きました。3名共有で相続登記を行ったのですが、3名それぞれ状況が違います。

堺市在住堺市の不動産屋からDM
阪南市在住阪南市付近の不動産屋と堺市の不動産屋からDM
横浜市在住横浜の不動産屋からDM

つまり、筆者が実際に経験したケースでは、DMを送ってくる不動産会社は、登記名義人の住所(つまり今あなたが住んでいる場所)が自社から近いという条件で、機械的に絞り込んでいる、と推測されます。

その理由は「登記名義人であるあなたに対面で営業できる」からです。不動産そのものの遠近よりも、営業ターゲットであるあなたが近所にいることが大切なのでしょう。

すなわち、送られてくるDMは、あくまで「あなたの住所が業者の近く」というだけで送られています。

物件がどこにあるかは、必ずしも関係ありません。たとえば亡くなった親御さんの住所地(あなたの現住所)が東京にあっても、相続で受け継いだ物件が沖縄にある場合でも、DMが届くことがあります。この点については、次の項目と合わせて注意が必要です。

原野商法の二次被害には注意が必要

相続で土地を引き継いだ場合、故人が過去に購入した土地がすべて含まれます(包括承継)。なかには、かつて「原野商法(げんやしょうほう)」で購入させられた土地が含まれるケースもあります。

原野商法とは、「別荘地として値上がりする」「まもなく駅ができて便利になる」などとうたい、ほとんど価値のない土地を高額で売りつける商法でした。

1970年頃から社会問題となり、1980年代後半には警察による摘発が相次ぎました。

こうした被害者を狙い、「その土地を売りませんか」「広告を出せば半年以内に必ず売れる」などと近づき、新たな費用を要求する「二次被害」が現在も発生しています。この二次被害の悪質な点は、広告掲載費や測量費などの名目で実費を先払いさせながら、実際には土地がまったく売れないケースが多いことです。

被害を防ぐには、即答せず、物件所在地の役所で土地の用途や評価額などを調べる、地元の不動産業者に売買状況や価格を問い合わせるなど、慎重に対応する必要があります。

相続した土地の中に、山林や原野などの遠方にある不動産が含まれている場合は、「売れます」という謳い文句には特に慎重に接してください。

もし利用価値の低い土地を手放したい場合は、以下の記事を参照してください。

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どうしてもしつこい場合の解決法

口頭でのやりとりは録音することが望ましい

DMが続いて困る場合は、まず一度明確に断り、その記録を残すことが最初のステップです(ここが最も大切)。

断る意思を明確にし、証拠を残す

「売却の意思はありません。今後のご連絡はご遠慮ください」と、メールや書面など記録が残る方法で伝えてください。口頭の場合は日時・担当者名・内容をメモしておきましょう。

この「断る意思表示」は、後に法的な意味を持ちます。

宅建業法による「再勧誘の禁止」

宅地建物取引業法では、一度断られたのに再度勧誘することは禁止しています。

つまり、一度断った後も繰り返し営業してくる行為は、宅建業法違反になるわけです。

断った後も連絡が続く場合は、「証拠を保全しており、免許行政庁への通報を検討している」と毅然と伝えてください。それでも改善されない場合は、実際に通報することができます。

再勧誘の禁止とは?

宅地建物取引業法第47条の2第3項および同法施行規則第16条の12に基づき、相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続することは禁止されています。

通報先は、その不動産会社の免許行政庁です。

  • 国土交通大臣免許の場合:地方整備局(関東・近畿など)の不動産業担当窓口
  • 都道府県知事免許の場合:その都道府県の宅建業担当課

免許番号は、届いた手紙や封筒に記載されている場合があります。また、国土交通省の不動産業者検索システムで確認することもできます。免許行政庁は業者の監督権限を持っており、悪質な場合は業務停止・免許取消の処分を下すことができます。

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効果の薄い対策は気にしなくてもOK

「受取拒否」と朱書きしてDMを返送する方法を紹介しているサイトもあります。確かに郵便規則上は可能ですが、業者にとってはなんのダメージもなく、根本的な解決にはなりません。

消費生活センター(局番なし188)や警察の相談窓口(#9110)に相談するように、と解説する記事も多いようです。

しかし、消費生活センターは情報収集・助言はしてくれますが、業者への直接的な行政処分権限は持っていません。警察相談は、法律違反が明確でない段階では対応してくれないのが一般的です。悪質なケースでは相談する価値はありますが、最も実効性があるのは免許行政庁への通報です。

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本当に「売る」場合はDMを送ってきた業者を選ばない

こうした手段で営業してくる不動産会社は、優良業者とはいいづらいのが実態です。

理由もはっきりしています。

登記簿の公開情報を名簿代わりに利用してDMを送る業者は、大量送付で一定の反応を得ることを前提とした「数うちゃ当たる」型の営業をしています。つまり、自社の信頼度を大切にして顧客を開拓しているわけではなく、ビジネスライクに営業しているだけです。

こうした業者が、丁寧で誠実な個別対応をしてくれる保証はほとんどありません。

そもそも不動産登記の本来の目的は、権利を公示することであり、不動産業者がDMを送るためのものではありません。その点を理解したうえで、信頼できる業者を自分で選ぶようにしてください。

信頼できる不動産会社の見分け方

信頼できる業者を探す際には、以下の点に注目してみましょう。

  • そのエリアの相場や法令上の規制をきちんと把握しているか
  • 担当者が物件周辺の事情(インフラ、学区、法規制など)をよく知っているか
  • 正確な価格査定を行ったうえで価格戦略をきちんと説明できるか

また、国土交通省の検索システムで、免許番号・過去の行政処分歴を確認することも有効です。行政処分を受けた業者は実名で公開されています。

地元の優良な不動産会社の探し方については、以下の記事でも詳しく解説しています。

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まとめ「知らない不動産屋からの手紙」は無視でかまいません

知らない不動産屋から手紙が届いても、個人情報が漏洩したわけではありません。法務局に公開されている登記簿の情報をもとに送られているだけです。その点、過度に心配する必要はありません。

基本的な対応は「無視」で十分です。反応してしまうと、かえってしつこい営業リストに入りかねないからです。

ただし、相続した土地のなかに、かつて原野商法で購入された山林や原野が含まれている場合は注意が必要です。「その土地を売りませんか」「広告を出せばすぐ売れます」という業者にうっかり対応してしまうと、費用だけ取られてしまう「原野商法の二次被害」にあいかねません。

また、しつこい連絡が続く場合は、はっきりと断り、それを記録に残したうえで免許行政庁に通報してください。消費生活センターや警察への相談より、実効性があります。

そして万一、売却を考えるようになったときは、DMを送ってきた業者に頼むのは避けてください。自分の意思で、信頼できる不動産会社を探すことが、後悔のない取引への近道です。不動産の売却は、人生でそう何度もある経験ではありません。焦らず、誠実なパートナーを選んでください。

ご不明な点は、いつでもトーマ不動産へお問い合わせください。

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