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「市街化調整区域」の土地・建物を手放したい場合のポイント【宅建士解説】

市街化調整区域内では、原則として建物を建てることができないため、土地の売却が難しく、買い手がつかないケースがよくあります。

しかし、優秀な不動産会社が物件をしっかりと調査すると、例外的に建築可能なケースが見つかることがあります。市街化調整区域だからと諦める前に、まずは信頼できる不動産会社に物件調査を依頼してください。

この記事では、市街化調整区域内でも可能な限り建築可能となるよう調査し、よりよい条件で土地を手放す方法について解説します。

この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が制作しました。

市街化調整区域とは何かを再確認

ではここで、市街化調整区域の定義を再確認しておきましょう。

日本の国土は、都市計画法上、上の図のように分けることができます。

都市計画区域市街化区域市街化を促進する区域
市街化調整区域市街化を抑制する区域
非線引き区域上記のどちらにも区分されていない区域
準都市計画区域一定の土地利用の規制が必要と認められる区域
都市計画区域外都市計画区域以外の区域

ざっくりまとめると、市街化区域とは、インフラを整備して市街化を進め、人が住みやすい環境とする地域です。一方、市街化調整区域は市街化を抑制し、自然や農地を残すエリアです。これらはいずれも、都市計画区域に含まれます。

都市計画区域の外側は、原則として都市計画区域外に該当します。

市街化区域は日本の国土の9.9%しかありませんが、そこに日本の人口の67%が住んでいます。そのため、インフラ整備に必要な資源を、市街化区域に優先的に割り当てる必要があります。

そこで、市街化調整区域はインフラ整備などが行われにくく、また市街化を抑制し、あまり人が住まない環境にする必要があります。そのため、原則として建築が認められないのです。

しかし、市街化調整区域であっても、住宅の建築が認められる条件を満たす場合は、宅地として売却することが可能です。これにより、土地の価値が上がる可能性もあります。

この「例外的な要件」をいかに調査し発見するかが、市街化調整区域の土地を手放す際の重要なポイントといえます。

「市街化調整区域かどうか」を調べる方法

ある土地が市街化調整区域かどうかを調べる方法は、現在いく通りもあります。昔は市町村役場に出向き、都市計画地図を閲覧するか、購入しないと調べることができませんでした。

今はネット上でさまざまな用途地域の検索サービスがありますが、筆者がおすすめするのは、国土交通省のウェブマッピングシステムです。

上記のリンク先を開いたら、次の手順で確認できます。

  1. 見たいエリアの地図を表示する
  2. 左メニューの国土数値情報>土地利用>都市地域を選択

すると、地図に下図のような色分けがされます。

赤っぽいエリアが市街化区域、黄色っぽいエリアが市街化調整区域です。この方法であれば、調査したい土地が市街化調整区域か否かを、正確に判断することができます。

市街化調整区域に該当するかどうかを調査するための、より詳しい情報は以下の記事に掲載しています。

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市街化調整区域であっても住宅建築が認められるケース

市街化調整区域内でも、住宅建築が認められるケースとして代表的な事例は、以下の2つです。

  1. 自己用住宅の立地緩和区域に該当する場合
  2. 既存宅地に該当している場合(宅地課税されていた場合)

自己用住宅の立地緩和区域とは、都市計画法施行以前から存在する大規模な集落で、大規模既存宅地として都市計画法の条件を緩和し、自己用住宅の建築が認められる区域のことです。

一方、既存宅地とは、都市計画法施行時点で宅地として課税されていた土地で、条件を緩和して建物の建築が認められる制度です。

これらの条件に該当する場合、住宅の建築が可能となり、宅地に近い金額での売却が期待できます

また、これらの条件に該当しない場合でも、市街化調整区域内で建築が認められる建物も存在します。例えば、食料品店や小売店などの建築が許可されるケースがありますので、この点についても調べてみる価値があります(ただし、かなり難しいです)。

経験のない不動産会社に市街化調整区域の調査は難しい

市街化調整区域の土地を手放したい場合、上記のような調査を行い、まずは、建物が建てられる要件を満たすことを目指します。建物の建築が可能であれば、宅地とほぼ変わらない価格での売却が期待できるかもしれません。

しかし、都道府県や市町村によって要件が異なるため、市街化調整区域の土地を売却する際は、その地域の都市計画に詳しい不動産会社に相談することが重要です。

ふだん街中の物件のみを扱っている不動産会社は、こうした点に詳しくないことが多いため、市街化調整区域に精通している不動産会社や建築事務所に相談するほうが確実です。

農地の場合はハードルが上がる傾向あり

農地の場合は都市計画法だけでなく、農地法の制限も受けることになります。また、原則として農家しか購入することができません。

そのため、農地を売却したり手放したりする際には、ハードルが非常に高くなります。

市街化調整区域内の農地でも、ケースによっては宅地に転用することが可能な場合がありますが、これは非常に難易度が高いため、市街化調整区域に詳しい不動産会社に依頼し、しっかりと調査してもらう必要があります。

もし専門家に相談する場合は、行政書士に依頼することになります。しかし、農地に強い行政書士を見つけるのはかなり大変です。詳しくは以下の記事で解説しています。

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結論からいうと、当該農地が所在する市町村の農業委員会に農地転用の要件を尋ねたり、こういった案件に詳しい行政書士を紹介してもらうとよいでしょう。

また、そもそもその土地が農地(農振農用地)であるかどうかの確認も、農業委員会で行います。登記簿など地番が分かる資料を持って農業委員会の窓口に行くと、その場で判定してくれます。

農業委員会は、主に市町村役場内に設置されています。

市街化調整区域の土地を手放す具体的方法

市街化調整区域の土地を売却する場合、通常は不動産会社に依頼して仲介してもらいます。その際、可能であれば複数の不動産会社に一般媒介で売却を依頼するのが確実でしょう。

その理由は、市街化調整区域の物件調査が複雑で、1社だけでは見落としなどのリスクがあるからです。

筆者も不動産業者として市街化調整区域をよく取り扱っていましたが、毎回納得がいくまで物件調査には時間をかけていました。

一方で同業他社が、市街化調整区域内の建築可能な土地を誤って「建築不可」として売り出している事例も見たことがあります。この点を間違えると成約価格に大きな差が出るため、非常に深刻な問題となります。

市街化調整区域に強い不動産一括査定サイト

「すまいValue」などの不動産一括査定サイトは、主に都市型の物件に向いているため、市街化調整区域には適していません。また、大手不動産会社も、市街化調整区域の取り扱いには消極的です。

一方で、市街化調整区域向けのサイトとしては、「リガイド」や「リビンマッチ」などが挙げられます。これらは筆者も実際に登録していた不動産一括査定サイトです。

これらの不動産査定サイトを利用して複数の会社に物件調査を依頼し、建築可能かどうかをしっかりと確認することが重要です。市街化調整区域であっても、住宅建築が可能なケースは多々あります。

「本当に建築不可なのか?」を複数不動産会社の目で、徹底的に調査してもらってください。

その上で、建築可能であれば通常の不動産流通ルートにのせて販売することが可能になります。

どうしても建築できない場合の相談先

市街化調整区域で、なおかつ建築が可能となる特例にも該当しない場合は、売却が難しくなります。その場合、どんな物件でも買い取ってくれる専門業者に相談してみるのもひとつの手です。

たとえば上記のサイト「訳アリ物件買取PRO」を運営する株式会社AlbaLinkでは、静岡県南伊豆町などの自治体と連携協定を結び、独自の売却ルートの開拓を行っています。こういった専門業者であれば、ほとんどの物件の買取を行ってもらえます。

また、沖縄県内の物件調査や価格査定については、トーマ不動産までお問い合わせください。

県内独自の条例や制度にも精通しており、市街化調整区域内の土地の、正しい価値をお調べしています。

市街化調整区域内の土地が「売れない」場合の対処法

市街化調整区域内の土地が、一般的な住宅用地として売れない場合、発想を変えて新たな土地活用方法を考える必要があります。

この章では、市街化調整区域内であっても建築が可能な物を中心に、住宅以外の活用方法を紹介します。ただしいずれの方法も、相当長期間の売却活動が必要という点には注意が必要です。

社会福祉施設向けの土地として売却・賃貸を検討する

都市計画法第34条に、市街化調整区域内であっても許可を受けて建築できる施設等が規定されています。具体的には、有料老人ホームや看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)などが該当します。

ただし、社会福祉施設なら市街化調整区域のどこにでも立地できるというわけではありません。周辺に一定の住宅が立地するなどの要件が定められています。

また、土地の活用方法としては、事業用定期借地権を設定して事業者に貸し出すか、当該事業を行う企業に売却するかという2択になります。

市議会議員など地方の議員さんの中に、こういった問題に詳しい方がいます。筆者もたまに議員事務所を訪れて、情報交換をすることがありました。

学校や保育園なども立地可能なケースがあります。

沿道サービス施設用地としての売却を検討する

同じく都市計画法第34条に、沿道サービス施設の開発許可が可能な点が規定されています。

具体的には休憩所(ドライブイン)や沿道型コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなどが該当します。

市街化調整区域内の土地でも、こういった施設用地として利用が可能ですが、かなり厳しい要件も設定されています。

一般に、2車線以上の国道や県道、市道に面した土地で市街地に近い場所でないと認められません。

地元の不動産会社の中から、法令についてしっかりと勉強していて、こういった要件をクリアして営業活動を行える業者を探してみてください。

詳しくは以下の記事が参考になります。

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資材置き場として貸し出しする

地方の不動産会社が市街化調整区域の土地の仲介依頼を受け、あらゆる調査を行って「もう手がない」となったとき、最終手段として考えるのが、資材置き場としての活用です。

建築業者、運送業者などが格安で資材を置ける土地を探しているケースがあり、そういった用途であれば貸し出したり、売却することが可能だからです。

ただし、資材置き場としての需要は多くないため、本当に最終手段だと考えるべきでしょう。また「資材置き場に好適」といったキャッチコピーを付けて売り出すと「他に取り柄がない土地なんだな」という印象になってしまいます。

そこで、筆者としてはあまりおすすめしない活用方法といえます。

市街化調整区域での土地活用方法Q&A

市街化調整区域内の宅地

この章では、市街化調整区域内の土地を手放すための知識や、売却以外の方法で譲渡する際のポイントを解説します。

市街化調整区域内の土地価格査定は難しい

筆者は不動産会社を経営していた経験があり、多数の農地や市街化調整区域内に立地する土地の価格査定を行ってきました。

その経験からいえることは、市街化調整区域内の土地の価格査定は非常に難しく、一般の住宅地よりハードルが高いということです。

市街化調整区域では、まず、本当に建築できないのかどうかを確定する必要があります。

建築が可能であったとしても、どのような条件が付くのかを確認する必要もあります。そのため、似たような土地であっても、アパートの建築が可能な土地と何も建てられない土地とでは、査定額に大きな差が出ることがあります。

この調査でミスをすると、致命的な問題に発展する可能性があります。

地元業者でも調査ミスをする場合も…

例えば、筆者が実際に見た事例では、市街化調整区域内の地目「畑」の土地について、他社が調査ミスをしていたことがあります。建築不可として売り出されていましたが、筆者の再調査で、その土地は実は宅地課税されており、建築が認められる既存宅地だったことがわかりました。

このようなミスは、損害賠償請求に繋がりかねない重大な問題になります。

市街化調整区域の土地を手放す際には、必ず実力のある不動産会社を選ぶようにしてください。

市街化調整区域に強い不動産会社を探す方法

では、市街化調整区域に強い不動産会社はどうやって探せばいいのでしょうか。

不動産一括査定サイトを利用する場合、地方の土地に強い不動産会社を選ぶ必要がありますが、どの不動産一括査定サイトも、そういった点を明記しているわけではありません。

筆者の経験上、以下の2つの一括査定サイトであれば、地方の土地に強い不動産会社が見つかる可能性があると考えています。

まずは以下の2つのサイトを利用し、それでも見つからない場合は、その他の査定サイトを試してみるしかないでしょう。

1. リガイド

筆者は全国7箇所で同一のマンションを複数の一括査定サイトに入力し、対応している会社数を比較する実験を行ったことがあります。その結果、都市部でも田舎でも対応できる不動産会社の数があまり変わらなかったのがリガイドです。地方で役に立つサイトといえば、このリガイドでしょう。

2. リビンマッチ

筆者が不動産会社の立場で利用した際、市街化調整区域内物件の査定依頼がかなり多く寄せられたのがリビンマッチでした。対応可能な不動産会社の提携数は多くないかもしれませんが、それでも案外田舎の案件に強く、査定依頼をしてみる価値はあると思います。

上記の不動産一括査定サイトを利用しても適当な不動産会社が見つからない場合、以下の記事も参照してみてください。

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相続放棄すべきかどうかの判断基準

相続放棄とは、相続が発生した際にプラスの財産も含めたすべての権利や義務を放棄することを指します。

土地だけを放棄することはできず、現金や有価証券があれば、それも一緒に放棄しないといけません。また、自分のために相続が発生したことを知った時から3か月以内に手続きをしないといけない点も、注意が必要です。

そのため、土地のみを手放したい場合に相続放棄は適しておらず、別の方法も検討した方がいいでしょう。

手放さずにずっと持っていたら税金は?

管理が面倒な不動産を相続してしまった場合、手放さずに持ち続けるべきでしょうか? 長期的には手放した方がいいかもしれませんが、固定資産税がかかっていないのであれば、そこまで急ぐ必要はないかもしれません。

市町村役場で固定資産税評価額や、課税額を確認することができます。まずは税額を確認してから対策を考えてもよいでしょう。

土地上に中古住宅が建っている場合は撤去すべき?

古い住宅が立っている、いわゆる古家付きの土地ですが、特に理由がない場合は処分しておいた方が安心かもしれません。

特に、倒壊の危険が著しい場合や衛生上有害となる恐れがある場合などに、特定空き家に指定される可能性があります。特定空き家に指定された後、市町村から改善勧告を受けると、固定資産税が最大6倍に引き上げられる可能性があります。

また、50万円以下の過料が科されることもあります。

建物の状態が危険であったり、近隣に迷惑をかけそうな場合は、早めに処分するか更地にしておくのが安心です。

ただし、古民家など一部需要が強い物件もありますので、解体する前に不動産業者と相談しておく方が安心です。

まとめ「市街化調整区域の土地を有利に手放すには?」

筆者はこれまでに、市街化調整区域内の土地を数多く取り扱ってきました。その中には「調べてみたら、建築が可能だった」という物件も少なくありませんでした

市街化調整区域だからといってすぐに諦めるのではなく、しっかりとした物件調査を行い、宅地としての利用が可能かどうかを判断することが重要です。

筆者は、都市部では大手不動産仲介業者への相談を推奨していますが、市街化調整区域については、地元の不動産業者の中から優秀な会社を選ぶことをおすすめします。

なぜなら、都道府県や市町村によって制度が異なるため、その土地に詳しい知識が求められるからです。

また、経験上、地方に強い不動産一括査定サイトは以下の2つです。

これらの一括査定サイトを試して、複数の不動産会社に依頼し、意見を聞いた上で、建築可能かどうかを判断するようにしてください。建築可能であれば、ある程度好条件での売却が視野に入ります。

もし、上記2つの一括査定サイトを利用しても十分な数の不動産会社にアプローチできない場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

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沖縄県内の市街化調整区域はトーマ不動産にご相談ください

トーマ不動産では、沖縄県内の市街化調整区域や都市計画外の土地も多く取り扱っています。建築可能かどうかを含めた、綿密な物件調査を行い、価格査定書とともにご報告します。

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