不動産売却 基礎知識

不動産売買時の司法書士費用は誰が払う?そもそも必要?

不動産の売買に際して、司法書士費用を含む所有権移転登記費用は一般的に買主が支払うのがルールです。

しかし、なぜそのようなルールになっているのか、またそのルールを変更することはできないのかについて、詳しく解説します。

また、一戸建て住宅の所有権移転登記にかかる司法書士報酬は、およそ5万円が相場とされています。

これについてもどのように定められており、どれくらいのバラツキがあるのかを解説します。

加えて、所有権移転登記以外にかかる登記費用について、売主と買主のどちらが負担すべきかについても説明します。

ケース別:司法書士費用は誰が払うか解説

一般に、司法書士報酬を含む所有権移転登記費用を支払うのは買主というのがルールとなっています。

しかし、不動産売買に関連して考えられる登記はこれだけではなく、他にもさまざまなものがあります。それぞれについてのルールを見ていきましょう。

売買による所有権移転登記費用は「買主」負担が一般的

不動産売買に関連する登記費用の中で、一般に、最も高額なものは名義変更にかかる所有権移転登記費用で、その不動産の買主が負担するものとされています。

ただし、法律で定められているわけではなく、慣行やルールに近いものです。

買主負担とする理由はいくつかあります。

まず、国土交通省標準契約約款を元にした全国宅地建物取引業協会連合会等の契約書で、条文に明記されているということが挙げられます。広く使われている契約書の条文に印刷されているので、買主負担が全国的な慣例となっています。

また、不動産登記法における「登記権利者」と「登記義務者」という考え方もあります。

不動産売買において、その不動産を購入し、自分の名義に変更する人は登記権利者と呼ばれます。自分自身の権利を公示するために登記するわけですから、その権利者が費用を負担すべきだ、という考え方です。

所有権移転費用「折半」とは?

しかし、民法の考え方は少し異なります。

民法558条では「契約に関する費用は当事者双方が等しい割合で負担する」と定められています。

そこで、かつては司法書士報酬も折半するという慣例がありました。

筆者の経験では、少なくとも大阪府と沖縄県には登記費用を折半するという慣例があったので、昔は全国的にそのような考え方があったのではないかと考えています。

今でもたまに、所有権移転費用を折半することがあります。

抵当権抹消登記費用は「売主」設定は「買主」負担

不動産売買に伴い、銀行ローンを借りる場合は、新しく買った不動産に抵当権を設定します。これは買主の都合なので、この費用は買主が支払います。

一方、売却する不動産に、売主がローンを組む際に設定した抵当権が付いている場合があります。この抵当権を抹消しなければいけませんが、抹消費用は売主の費用負担となります。

その他に売主が負担する登記費用も

不動産売買に関連して、売主が登記費用を負担しなければならないケースは他にもあります。

例えば、登記簿上の住所から引っ越ししている場合、売買に際して登記名義人住所変更登記を申請しなければなりません。この費用は売主の負担となります。

また、相続した不動産を売却する場合、一旦相続登記をしてからでないと譲渡することができません。相続登記に関しても売主の負担となります。

新築住宅を建てた時は「表題部登記」が必要

ハウスメーカーに家を建ててもらい、完成した場合、その建物の登記簿がまだないので、表題部登記というものを申請します。表題部登記は司法書士ではなく、土地家屋調査士が行いますが、この費用は買主が負担しなければなりません。

また、表題部登記とは別に所有権保存登記というものも行いますが、これも買主負担で、司法書士が登記申請を行います。

そもそも司法書士にお金を払う理由と費用の目安

筆者はよくお客様から「そもそも司法書士費用が高すぎる」「司法書士なんて必要なのでしょうか」と言われることがありました。

そこで、司法書士が何をしているのか、そして司法書士報酬の相場はどれくらいなのかを解説していきます。

実は司法書士がいるから不動産取引が成立している

「もし司法書士がいなかったら不動産取引が成立しないのではないか」というほど、司法書士の行っている仕事は重要です。

まず前提として、不動産の所有権移転登記申請をしても、登記完了までに数日から1週間程度の時間がかかります。

しかし、不動産の買主はまだ自分の登記名義にもなっていないのに、売主に対してお金を支払います。銀行も抵当権設定登記がまだ入っていないのに、買主に融資を実行します。

これは、司法書士が確実に登記を行ってくれると信頼しているからです。

登記申請には専門的な知識が必要で、確実に一発で決めるのは素人には至難の業です。

これを確実に行い、取引の安全性を担保してくれているのが司法書士なのです。そう考えると、司法書士報酬数万円というのは決して高くありません。

一戸建ての司法書士報酬は平均すると約5万円

かつて司法書士報酬は決まっていましたが、平成15年1月1日に自由化され、それに伴ってかなりばらつきがあるのが現状です。

日本司法書士会連合会の調査では、一戸建て住宅の土地建物の所有権移転登記に関する司法書士報酬は、安い先生で3万円前後、高い先生で10万円弱となっています。

3倍の開きがあるというのは驚きですね。

ただ、普段目にする司法書士さんの報酬はそこまでばらつくわけではありません。

平均すると一戸建て住宅(土地と建物)の所有権移転登記に関連する司法書士報酬は、ざっくりと5万円程度と考えておけば良いでしょう。より詳しいアンケート結果は、日本司法書士会連合会の調査結果で確認できます。

司法書士費用を節約する方法は?

自分で登記申請を行える場合もある

司法書士報酬を節約する方法は、

  1. 報酬が安い先生を見つけて依頼する
  2. 可能であれば自分で登記申請を行う

の2パターン。報酬が安い先生を探すのは難しく、不動産屋にもよくわからないのが実情でしょう。

一方、難易度の低い登記申請を、自分で行うという事は不可能ではありません。ただし、それで節約できる費用は2~5万円程度です。

登記移転費用の内訳を見るとその多くが税金

先ほど、一戸建て住宅の所有権移転登記にかかる司法書士報酬はおおよそ5万円と述べました。しかし、実際には10万円や20万円といった請求書が届くことが多いでしょう。

これは司法書士報酬以外に、登録免許税がかかるからです。

不動産登記における登録免許税は、土地の場合、不動産の標準課税額の1000分の15、建物の場合は1000分の20などと定められています。住宅用家屋の場合は軽減税率が適用されるので、1000分の3という例が多いでしょう。

他にも細かい規定があるので、国税庁のサイトで確認してください。

この登録免許税の部分は法定されているため、自分で登記申請をしても節約できない費用になります。

親しい間柄での売買なら自分で登記も可能?

本来、不動産登記は共同申請が原則です。

つまり、売主と買主が共同で申請を行うということで、2人で窓口に行き申請を行う建前となっています。

そこで、売主と買主双方の合意があれば、司法書士を使わず自分で登記申請を行うことも可能です。

ただ、専門知識が必要となるため、全く不動産登記法の知識がない人にはお勧めしません。

法務局のサイトで登記申請書の様式をダウンロードしたり、必要な添付書類を確認してみて、自分でもできそうだと思う場合は挑戦してみてください。

ただし、全く面識のない売主・買主にはおすすめできません。ある程度信頼関係がある親しい間柄での売買に限定する方が良いでしょう。

自分でチャレンジするなら抵当権抹消登記がおすすめ

既に住宅ローンを完済している場合、余裕をもって登記申請を行えば、自分で抵当権の抹消登記を申請できます。抵当権抹消登記自体は難易度が低めで、法務局のサイトを参考に登記申請書を作成し、法務局に持ち込み窓口に提出すれば申請できます。

登録免許税(不動産1つにつき1000円)だけですむので、1万5000円~2万円くらいの節約効果があります。

書き方がわからない場合や、作成した抵当権抹消登記申請書が正しいかどうかを相談したい場合、法務局の登記相談を受けることも可能です。

ただし、登記相談は現在予約制となっているので、最寄りの法務局に問い合わせをして予約を取ってから出かけてください。

ただし、住宅ローン返済中の住宅を売却する場合の抵当権抹消登記申請は司法書士の先生に任せてください。そうしないと、取引の安全が担保できないからです。

司法書士費用はなぜ必要?誰が負担するかまとめ

融資実行の待ち時間は書司の先生の会話力がモノを言う

司法書士がいないと、不動産売買を円滑に進めることができません。

司法書士がいるからこそ、買主は安心してまだ登記されていない不動産の代金を売主に支払うことができます。銀行も登記申請が失敗するリスクを心配せず、買主に融資を実行することができます。

つまり、司法書士は不動産取引の安全性や確実性を担保する重要な仕事をしているのです。

そう考えると、司法書士報酬は決して高いとは言えません。

また、記事の中で詳しく解説したように、所有権移転費用(名義変更にかかる費用)に関しては、不動産を購入する登記権利者が負担するべきものというのが一般的なルールです。

司法書士が、とくに買主にとっての取引の安全を担保してくれるからです。

ただし、法律で定められているわけではないので、売主と買主双方の合意があれば、誰が支払うかを変更することは可能です。

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