不動産の個人売買にはいくつかのポイントがあります。
まず、結論として、個人間の売買は親しい知人間に限定するのが安全です。トラブルがあっても話し合いで解決できる間柄の人とであれば、個人売買も現実的な選択になります。
また、ローンを組むのではなく、現金で決済できる小規模な物件や少額な物件に限定するのが望ましいでしょう。個人売買では、住宅ローン付けが難しいからです。
それでは、詳しく見ていきましょう。
不動産を個人売買するメリットとデメリット
ここでは、不動産個人売買のメリットとデメリットを紹介していきます。
注意したいのは、トラブルがあった場合。どうしても自己責任で対処する必要があります。そのため、大きなトラブルが心配な高額物件の取引ではなく、小さな物件や、親戚や親しい知人との取引に限定した方が安心でしょう。
面識のない一般買主に売却する場合、後で紹介する家いちばを利用すると安心です。
メリット① 仲介手数料を節約できる
不動産の個人売買を行う最大のメリットは、仲介手数料を節約できることです。最近の法律改正により、低廉な価格の不動産でも仲介手数料が意外と高く取られることがあります。不動産の仲介手数料は、売買価格に連動しており、以下の表の通りとなっています。
売買価格 | 仲介手数料の上限額(税別) |
200万円以下の部分 | 売買価格の5% |
200万円超〜400万円以下の部分 | 売買価格の4% |
400万円超の部分 | 売買価格の3% |
この表に当てはめてみて、仲介手数料が高いと感じたら、個人売買に挑戦してみる価値があります。
メリット② 納得のいく価格で売却できる
不動産のプロといえども、価格査定が絶対に正しいわけではありません。
不動産会社が提示した査定額に納得がいかない場合、時間がかかってもいいので、のんびりと個人売買で売却した方が良いと感じる場合もあります。
筆者の経験では、田舎暮らし物件や静かな高台の海が見える不動産など、趣味性の高い物件に関しては、じっくりと長い時間をかけて売却するのもおすすめできます。いつか欲しい人が現れるのを待てば、意外と良い値段で売れる可能性があるからです。
どうしても納得のいく価格で、価値がわかる人に販売したいという場合は、個人売買に挑戦してみるのも手です。
デメリット① トラブルは自分で回避する必要がある
不動産個人売買の最大のデメリットは、全てが自己責任になることです。不動産会社に仲介を依頼する場合、仲介業者が責任を持って取引を進めてくれます。また、不動産会社の宅建士は宅建士保険に加入していることが通例です。
その点、個人売買では以下のようなトラブルに関して問題がないか調査し、何かあれば自分で対処する必要があります。
- 境界に関する紛争
- 地下埋設物
- 建物の物理的な瑕疵
- 心理的瑕疵
場合によっては大きな責任を負うことになるので、その点には注意してください。
デメリット② 契約書を作成するなど法律の知識が必要
もう一つのハードルは、法律など専門知識が必要な不動産の売買契約書を作成しなければならないことです。仲介業者が作成する重要事項説明書を個人売買の場合は作成する必要がありませんが、重要事項説明書が作成できるレベルのしっかりとした調査を行わないといけません。
もし調査不足で契約不適合責任を追及された場合、損害賠償を行う責任を負うかもしれません。様々なリスクを排除するために、契約書の特約条項を適正に設定できるかどうかも問われます。法律が苦手な場合は、不動産の個人売買に関して慎重になった方が良いでしょう。
こんなポイントに注意
- 契約不適合責任の問題
- 特約条項を適切に設定できるか
デメリット③ 買主の住宅ローンが通りにくい
もし買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関としては仲介業者を入れて欲しいと言ってくることが大半です。銀行などの金融機関も、アマチュアの物件調査では不安で、プロの不動産業者が間に入ってくれることを望んでいます。
そこで、購入希望者が住宅ローンを組もうとしている場合は、あらかじめ銀行にヒアリングしておき、ローンが組めるかどうかを確認しておく必要があります。中には、個人売買であっても融資してくれる銀行もありますので、まずは銀行との相談からスタートしてください。
実際に家いちばを利用して個人売買してみたレビュー
ここからは、個人売買サイト「家いちば」を宅建士である筆者が利用し、小さな一戸建て住宅を売却した時の経緯をレポートします。
家いちばを利用して全国の読者に広告を訴求しつつ、地元の不動産業者にも声をかけました。地元業者さんには、一般媒介契約という契約方法で仲介をお願いしました。
今回売却したのは、海まで徒歩30秒の小さな2階建て一戸建て住宅です。筆者の事務所兼ギターのリペアスペースとして使っていました。内装も筆者の趣味でリフォームしており、ガレージ風の隠れ家風の作りとなっています。
価格を決定した方法
価格については、取得時にかかった建物の値段やリフォームにかかった費用をトータルして、仲介業者に伝え、いくらにするか決定しました。最終的に、建物と土地の取得費用、リフォーム代を合計した金額で売り出すことにしました。
個人売買と仲介業者の併用で売却スタート
筆者が信頼している地元の不動産業者と、不動産の個人売買サイトのみで売却をスタートしました。個人売買サイトは4つ使用しましたが、結論としては家いちば以外は全く役に立ちませんでした。
家いちばからは定期的に内見の依頼がありましたが、それ以外のサイトからは一度も反響がありませんでした。個人売買サイトについて詳しいレポートは以下の記事で解説しています。
不動産の個人売買サイト4つを実際に使ってレビュー|Fudomaga
趣味性の高い物件は個人売買が強い
不動産業者はマンションの売却などでお世話になった会社を選んで契約をしました。しかし、ほとんど反響がなく、残念ながら成約には結びつきませんでした。
一方、家いちばからの反響は比較的多く、1~2か月に一度、建物内部を見に来る人がいました。趣味性の強い物件の場合、住宅販売が得意な一般の不動産業者よりも、個人売買サイトの方が集客力があることもあります。
結果、2年ほどかかりましたが、納得のいく価格で事務所を売却することができました。
不動産の個人売買手続きの流れ(家いちば利用)
実際に使ってみて分かったのですが、家いちばは個人売買サイトといいながらも、途中から仲介に入ってきます。そのため、仲介手数料を払わなければならないというデメリットがあります。
仲介手数料は法定上限の半額なので決して高くはありませんが、それ以外にシステム利用料も取られるので、お得感はやや少なめです。
一方で、売買契約書や重要事項説明書は家いちばサイドで作成してくれるので、その点はよいと感じました。
必要書類リストと準備方法
家いちばを利用する限り、途中から仲介に入ってくれるので、必要な書類等のリストはメールで送ってきてくれます。
そうでない場合、自分で書類を用意する必要があります。
念のため、売主が用意すべき必要書類等のリストを以下にまとめておきます。
主な売主の必要書類
- 土地建物の登記済権利証・登記識別情報
- 印鑑証明書(取得後3か月以内)
- 固定資産税評価証明書・固定資産税等納税通知書
- マンション管理規約、建築確認関連書類等
- ローン残債務がある場合は金融機関の通帳・印鑑
- 抵当権抹消書類
土地建物など不動産の売主が用意すべき必要書類の一覧については、以下の記事で詳細に解説しています。
登記手続きは司法書士に任せた方が安全
一般に、個人売買で不動産を販売する場合でも、登記に関しては司法書士に任せる方が安心です。筆者は特に親しい知り合いとの不動産売買であれば、自分で登記申請書を書き、法務局に申請をしてしまいますが、登記申請は慣れないと補正も多く、かなり面倒です。
もし買主がお金を払ったのに所有権移転登記が行われないという事態になったら、大きなトラブルに発展してしまいます。その点を考えると、司法書士への報酬などは安いものだと思います。
詳しくは以下の記事で解説しています。
物件引き渡しのステップ
最後に、個人売買では不動産業者が手続きの流れを教えてくれないため、不動産売買の流れと物件引き渡しのステップをまとめて解説します。
一般に、不動産の売買は通常の買い物よりも複雑な取引です。そのため、1回ですべての手続きが終わることはありません。
購入者が融資を利用する場合、以下のような手続きになります。
- 購入の申し込み
- 売買契約の締結と手付金の交付
- 残金決済と所有権移転
契約締結時点では、銀行ローンはまだ実行されません。まずは手付金だけを受け取り、売買契約を締結します。
その後、買主は必要な書類を持参して銀行に行き、住宅ローンの本申し込みを行います。
審査を経て、数日から1か月後くらいに融資が実行されます。その時点で、不動産を引き渡し、残りのお金を受け取る残金決済を行います。
購入者がローンを利用しない場合、手続きがやや簡略になります。契約と同時に代金のすべてを支払い、不動産を引き渡すケースもあります。この手順を契約決済と呼ぶこともあります。
まとめ
ここまでをまとめると、不動産の個人売買はあまり高額でない小規模な不動産の売買時に挑戦するのが良いでしょう。すべてを自己責任で行う必要があるため、リスクが少なく、大きな責任を負わない物件で試すのが賢明です。
不動産個人売買のメリットとデメリットをざっくりとまとめると、以下のようになります。
不動産個人売買のメリット
- 仲介手数料を節約できる
- 納得のいく価格でじっくり売却してみることができる
不動産個人売買のデメリット
- 不動産取引にまつわるトラブル対策は自分で行う必要がある
- 法律の知識も必要になってくる
こういったメリット・デメリットを考慮した上で、個人売買に挑戦するかどうかを決断してください。
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