基礎知識

土地を「売るか貸す」どっちが得? 収益・コスト・リスクを比較

土地を売るか、貸すか?

「どちらが得か」という金銭面だけで比較すると、一般的には「売った方が得だ」という結論になります。「売るのが有利だ」というより、土地の賃料が安く「貸すのは不利だ」というのが理由です。

この記事では「相場3000万円の土地を売る・貸す場合のシミュレーション」で比較しました。やはり「金額だけ見ると貸すのは不利かな」という結論になります。

しかし、土地を持っていると、計画次第では相続税対策になる場合があります。また、「目先のお金に困っていないし、将来使う」という事情があるかもしれません。

そこでこの記事では、土地を売るか貸すかを判断するために、様々な観点から「どちらが有利か」を比較しました。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が作成しました。

土地を売る vs 貸す:メリット・デメリット分析

土地を売るか貸すかで迷った場合、前提としてそれぞれのメリット・デメリットを把握する必要があります。

売却すれば即座に現金化でき、固定資産税や維持管理の負担がなくなります。

一方で、貸す場合は定期的な賃料収入が得られる反面、管理の手間や空室リスクが発生する可能性があります。

どちらが得かは、土地の立地や将来の資産価値、目的によって異なります。ここでは金銭面を含む様々な視点から、メリット・デメリットの両面を考えます。

土地を売るメリット

土地を売却する主なメリットは2つあります。

1つ目は、現時点で現金化でき、資金を他の用途に充当できることです。

不動産は流動性が低いため、いざというときすぐに現金化できない場合もあります。売却してまとまった資金を確保できれば、住宅購入や事業資金、投資などに活用できます。

2つ目は、固定資産税や維持管理の負担から解放されることです。

土地を所有し続ける限り、固定資産税や都市計画税がかかり、雑草の処理や不法投棄の防止など、維持管理の手間も発生します。売却すれば、これらの負担を完全に解消できます。

また、地価が上昇傾向にあるエリアでは、売却することで利益を確定できるメリットがあります。土地の価格は専門家でも予測が難しく、今後の市況によっては下落することも考えられるため、「今の価格で確定させる」という判断には一定の合理性があります。

さらに、売却資金をより有利な投資に回せば、資産価値を高めることも可能です。

土地を売るデメリット

土地を売却するデメリットとして、主に以下の2点が挙げられます。

1つ目は、譲渡所得税を課税される場合があることです。売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、その額に応じて税金が課されます。特に、取得から5年以内の短期譲渡所得は税率が高く、注意が必要です。

2つ目は、将来的に地価が上昇する可能性を逃してしまうことです。特に都市部や再開発地域では、長期的に土地の価値が上がるケースもあります。売却後に地価が上昇すれば、結果的に損をしたと感じることもあるでしょう。

特に注意すべきなのは、譲渡所得税の税率です。以下の表をご覧ください。

所有期間所得税率住民税率合計税率
5年以下(短期譲渡所得)約30%約9%約39%
5年超(長期譲渡所得)約15%約5%約20%

短期譲渡所得の場合、長期譲渡所得に比べて税額が2倍近くになります。そのため、売却を検討する際は取得からの年数を確認し、5年を超えてから売る方が税負担を軽減できます。

 譲渡所得の計算は複雑なため、税理士や不動産会社に相談して正確な税額を把握することをおすすめします。

土地を貸すメリット・デメリット

土地を売ってしまうと取り戻すことは困難ですが、土地を貸す場合は将来返してもらえます。ただし、問題は「本当に返ってくるの?」という点です。

その問題を考えるためには、借地借家法について理解する必要もあります。それを踏まえて、土地を貸すメリットとデメリットを見ていきましょう。

土地を貸すメリット

土地を賃貸することには、以下のようなメリットがあります。

安定した収入の確保

土地を貸し出すことで、長期的かつ安定した地代収入を得ることが可能です。​これは、他の土地活用方法と比較して、経営リスクが低いとされています。

維持管理費用の負担がなくなる

土地を貸す場合、建物の建設費用や維持管理費用は借主が負担することが一般的であり、貸主はこれらの費用を負担せずに済みます。

節税効果

土地を貸すことで、相続税や固定資産税の評価額が下がり、節税効果が期待できる場合があります。​ただし、節税効果の試算は複雑になりがちですから、税理士などの専門家に相談してください。

土地を貸すデメリット

一方、土地を貸すことには以下のデメリットも存在します。

収益性が低い

土地を貸すことで安定した収入を得られますが、マンションやアパート経営と比較すると収益性は低い傾向があります。​これは、土地貸しは初期費用が少ない反面、大きな収益を見込みにくいからです。 

契約期間中の自分で土地を利用できない

借地契約は長期間にわたることが多く、その間は土地の売却や他の活用が難しくなります。​特に、契約内容によっては土地が返還されないリスクもあるため、注意が必要です。 ​

借地権による制限

土地を貸し出す際、借主が建物を建てて登記すると借地権が発生します。​これにより、将来的に土地を自由に利用したり売却したりすることが難しくなる可能性があります。建物所有を目的とした借地権は強力な権利ですから、地主の権利が制限されることになるのです。

借地借家法と定期借地権

借地権に関する法律は、1991年(平成3年)の法改正を境に大きく変わりました。​改正前の「旧借地法」では、借地人の権利が強く、一度土地を貸すと返還が難しいとされていました。​これに対し、1992年(平成4年)に施行された「借地借家法」(新法)では、地主の権利を強化し、定期借地権が新設されました。

類型特徴契約期間主な用途
一般定期借地権契約期間満了後は更新なし。契約終了時に更地にして返還することが条件。50年以上住宅地や商業地、土地の長期利用に適する
建物譲渡特約付借地権契約終了時に建物を地主に譲渡することを条件とする。30年以上建物の利用後に地主に譲渡することを想定した場合
事業用借地権事業目的で使用する土地を貸し出す。更新なしで契約終了。10年以上50年未満商業施設、工場、オフィス用地

これらの定期借地権が導入されたことで、地主は契約期間満了後に土地を確実に取り戻すことが可能となり、土地の有効活用が促進されました。 

土地を貸す際は、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、契約内容を慎重に検討してください。​特に、借地権の種類や契約期間、更新の有無などは、将来的な土地利用に大きく影響するため、早い段階で法律の専門家の意見を聞いておくといいでしょう。

売却と賃貸:税金・収益シミュレーション

不動産売却や賃貸に関連する税制は複雑です。

短期譲渡か長期譲渡か、居住用特例の適用可否、相続財産としての位置づけ、将来の資産活用計画など総合的に検討する必要もあります。

相続税対策や不動産市場の動向も影響してくるため、幅広くなおかつ深い知識が求められる点がやっかいです。

ここではアウトラインをご紹介しますが、具体的な計画を立てる前に、できれば税理士などの専門家に相談しておいてください。

売る場合と賃貸する場合の税金比較

土地を売却する場合、大きな資金が手に入る反面、税額も大きくなりがちです。土地売却時には、慎重に計画すべきだといえます。

一方、土地を貸した場合、一般に定期的に入ってくる金額は多くありません。そしてその収入から、また税金が引かれて手取り額が決まるイメージです。土地を貸す場合でも、節税対策は必要不可欠です。

税目・項目売却の場合貸すの場合
譲渡所得税売却価格から取得費用や譲渡にかかる諸経費を差し引いた譲渡所得に対して課税
・短期(5年以下):約39%
・長期(5年以上):約20%
ーー
所得税(不動産所得)売却益は分離課税として譲渡所得税が適用される賃貸収入から管理費、修繕費、固定資産税等の必要経費を差し引いた所得に対して課税
固定資産税・都市計画税売却後は土地所有者ではなくなるため、以降の税負担は発生しない土地所有中は毎年発生。住宅用地であれば軽減措置(例:小規模住宅用地の特例)を利用できる場合もある
控除・優遇措置居住用財産の特別控除、長期所有特例などが条件に応じて適用可能青色申告特別控除や必要経費の計上などで所得税負担を軽減できる
相続税評価売却により土地は評価対象外となり、相続税の節税対策には関連しなくなる賃貸に出している土地は評価額が下がる場合があり、相続税対策として利用できることもある
維持管理・将来の税務リスク一度売却すれば、今後の維持管理費用や税金負担はなくなる土地を所有し続ける限り固定資産税などのランニングコストが継続し、将来的な税制改正リスクも考慮する必要がある

3000万円の土地を売る・買う両方のシミュレーション

土地の手取額や運用益は、個別具体的な状況に合わせて計算する必要があります。ここでは、一般的な事例を想定し、売った場合の手取り額と、貸した場合の年間手取り収入を計算しました。

売却対象相場額3000万円の土地
所有期間10年
取得費諸費用込で2000万円で取得
備考測量は簡易的な境界復元のみ

抵当権は設定されておらず、抵当権抹消登記は不要と仮定しました。また、賃貸した場合の期待利回りは2%の設定です。

このように比較してみると、どうしても土地は売った方が得だという判断になります。

売った場合の手取額は「2700万円」

項目金額(円)
売却価格30,000,000
取得費20,000,000
仲介手数料1,056,000
測量費用50,000
収入印紙代2,000
売却経費合計1,108,000
譲渡所得(売却価格−取得費−経費)8,892,000
譲渡所得税(20%)1,778,400
最終的な手取り収入(売却価格−経費−譲渡所得税)27,113,600

賃貸した場合の収入は年間「244,800円」

項目金額(円)
賃料収入(年間)600,000
固定資産税(推定)294,000
賃料収入 − 固定資産税(実質収入)600,000 − 294,000 = 306,000
所得税・住民税(20%)306,000 × 0.20 = 61,200
税引き後の手取り金額306,000 − 61,200 = 244,800

このように比較してみると、賃貸は投資という視点では儲からず、不利だといえます。今回は期待利回り2%の想定でしたが、土地の場合は高くても利回り4%程度です。損得だけで考えると、賃貸という選択肢はとりにくいといえるでしょう。

実際には、土地の賃料を固定資産税から計算する方法などもあります。しかしこの事例は概算なので、単純に期待利回りから算出しています。

土地を売るべき人・貸すべき人

土地を「売る」か「貸す」か。それぞれの選択にはメリットとデメリットがあり、所有する土地の状況や自身のライフプランによって判断がわかれます。

損か得かというお金の問題だけでなく、手間や将来の価値、税金面での判断など、さまざまな要素が絡んできます。。

ここでは、売るべきケースと化すべきケースを切り分け、どんな人に向いているかを考えます。

こんな人は「売る」べき!

  • すぐに現金化したい
  • 管理の手間をなくしたい
  • 土地の価値が下がる可能性がある

人口集中が進む日本の土地価格は、上昇しているエリアと、むしろ下落しているエリアに大別されます。

エリア名平均地価変動率状況
東京都中央区銀座約1646万円/m²6.45%商業地としての需要が高く、地価が上昇しています。
大阪府大阪市北区約384万円/m²11.39%再開発や商業施設の増加により、地価が上昇しています。
福岡県福岡市博多区約118万円/m²14.67%交通の利便性や商業活動の活発化により、地価が上昇しています。
エリア名平均地価変動率状況
神奈川県 山北町 (足柄上郡)43,900-0.15%​人口減少と高齢化が進むため地価下落が続く。
埼玉県 秩父市33,606​-0.45%​中心市街から離れており、埼玉県内では人口減少が著しい地域。
神奈川県足柄下郡箱根町約4万5,000円/m²-7.00%山間部に位置し、人口流出・高齢化が進む過疎地域。

地価が上昇しているエリアであれば売却を急ぐ必要はありませんが、横ばいまたは下落傾向にあるエリアでは、早めに売却して現在の価値を確定させるのは合理的な選択です。

また、対象の土地が遠方にあるなど管理が難しい場合も、早めに手放すことで負担を軽減できます。土地を放置すると雑草や樹木が繁茂し、景観の悪化や近隣トラブルにつながることがあります。さらに、近隣住民からのクレーム対応も手間がかかるため、こうした管理負担をなくせる点は大きなメリットと言えるでしょう。

このように、管理の手間を省いたり、資産価値の下落を防いだりする観点からも、土地所有にこだわりがない人には売却が向いているといえます。

注: 上記の地価および変動率は、各エリア内の平均的なデータをもとに算出しています。

こんな人は「貸す」べき!

  • 安定した収益を得たい
  • 将来的に活用する可能性がある
  • 税金を抑えながら運用したい

将来的に売却の可能性はあるものの、現時点では少しでも安定収入を得たいという人には、土地を売らずに貸すほうが適しています。

また、土地を取得して間もない場合、すぐに売却すると短期譲渡となり、譲渡所得税が高くなってしまいます。そのため、一定期間(5年以上)は賃貸運用するのが得策です。

項目短期譲渡所得長期譲渡所得
所有期間5年以下5年超
所得税率30%15%
住民税率9%5%
復興特別所得税所得税額の2.1%所得税額の2.1%
合計税率39.63%20.32%
特別控除最大3,000万円(居住用財産を売却した場合など)最大3,000万円(居住用財産を売却した場合など)
税率が高い理由短期間での売買による投機的取引を抑制するため長期保有を促進するため

ただし将来、自分で土地を活用したり売却する可能性がある場合は、賃貸契約の内容に注意が必要です。たとえば、定期借地契約を活用すると、契約期間が終了すれば確実に土地を返還してもらえます。

契約種類契約期間更新の可否利用目的契約方法
普通借地権最低30年(1回目の更新は20年以上、2回目以降は10年以上)更新可能制限なし書面または口頭
一般定期借地権50年以上更新不可制限なし書面
事業用定期借地権10年以上50年未満更新不可事業用(居住用不可)公正証書
建物譲渡特約付借地権制限なし(契約で定める)更新不可制限なし書面

ただし、新法の定期借地権でも50年以上の期間を設定しますので、近い将来土地を返してもらいたい場合は事業用定期借地権を利用することになるでしょう。その他、様々な法令がからんできますので、必ず専門家に相談してから方針を決めてください。

土地売却・賃貸を成功させるコツ

売却や賃貸を成功させるためには、適切な不動産会社を選ぶこと、売却価格を適正に設定すること、借地契約の内容を理解することが欠かせません。

特に、不動産の所在地によって適した不動産会社や査定方法が異なるため、事前のリサーチが重要になります。以下に、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

不動産会社の選び方

不動産会社の選び方は、エリアによって異なります。都市部では、大手の三井不動産リアルティや住友不動産販売、東急リバブルなどを選べば、比較的トラブルを避けやすくなります。

一方、地方では大手不動産会社が対応していないケースが多いため、地元の不動産会社の中から信頼できる業者を選ぶことが重要です。

地元不動産会社の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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売却の適正価格の求め方

売却の適正価格を知るには、不動産の所在地が大都市圏なのか地方なのかで方法が異なります。

都市部の不動産であれば、三井不動産リアルティ(「三井のリハウス」)の価格査定を活用するのがおすすめです。同社は業界内でも精度の高い査定を提供しており、信頼性が高いと評価されています。

※三井不動産リアルティについて詳しくは、以下の記事をご参照ください。

地方の不動産の場合は、固定資産税評価額や相続税路線価などを活用し、自分でおおよその相場価格を算出する方法もあります。そのうえで、不動産会社の査定額を比較し、査定の根拠を確認することで、納得のいく売却価格を決めやすくなります。

なお、自分で不動産の大まかな価格を出す方法は以下の記事を参照してください。

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不動産一括査定を利用する場合の注意点

不動産一括査定は、一度の入力で複数の不動産会社から査定をもらえる便利なサービスです。しかし、無料で利用できる裏側の仕組みを理解しておく必要があります。

ユーザーが不動産一括査定サイトを利用すると、6~9社程度の不動産会社がその情報を受け取ります。各不動産会社は、情報1件あたり、およそ1万5000円の料金を支払っています。

そのため、気軽に「値段だけ知りたい」と考えて一括査定を利用すると、しつこい営業電話に悩まされる可能性もあるわけです。

以下の記事では、不動産一括査定の仕組みと、かしこい利用方法を解説しています。

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まとめ

土地を売るか貸すかは、単純に「どちらが得か」だけではなく、目的や状況に応じて慎重に判断する必要があります。

金銭面だけで比較すると売却のほうが手取り額が大きく、一度売却すれば管理の手間や税金の負担もなくなるため、有利なケースがあります。地価が下落傾向にあるエリアでは早めに売却することで、資産価値の低下を防ぐことができます。

一方、土地を自分で活用する可能性がある場合や、短期譲渡所得税を回避したい場合は、賃貸運用を検討するほうがいいでしょう。

ただし、借地契約の種類や期間によっては、将来的に土地を自由に活用できなくなるリスクもあるため、契約内容を慎重に検討することが大切です。

いずれにせよ、土地の売却や賃貸は、一度決めると簡単に変更できません。長期的な視点で検討し、悔いのない判断を下してください。

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