たった1つの書類が不足しているだけで、不動産の売買がストップしてしまうこともあります。
一般的には不動産仲介会社がしっかり準備して、必要書類の通知もしてくれますが、念のために以下のチェックリストで確認しておいてください。
売主必要書類チェックリスト(PDF)上記ファイルでは、土地建物の売買について、タイミング別に必要な書類をリストアップしています。
また、各書類についての詳細は、記事本文で解説しました。
不動産取引の内容や形態によって、上記チェックリストにない書類等が必要になる場合もあります。この点、不動産会社と綿密に打ち合わせをして、必要書類を準備してください。
不動産売買の流れをおさらいし、タイミングごとに整理
不動産売買には大きく3つのポイントがあります。その流れに沿って必要な書類を整理していけば、抜け漏れなく確実に書類を用意することができます。
土地売買では、購入の申し込みが入って以降、次のステップで契約を進めていきます。
- 売買契約の締結
- 土地の引き渡しに必要な書類を用意
- 残金決済と土地の引渡し
買主から購入の申し込みが入ったら、金額や条件面での調整をし、合意できたら不動産会社が売買契約書を用意します。
売買契約締結時点では、手付金を受け取りますが、まだ土地の引き渡しは行いません。ここから売主・買主双方が、必要な書類を揃え、引き渡しの準備を行います。
この準備段階で用意する書類には重要な物が多いので、慎重に対処してください。
銀行からの融資実行が決定し、日取りが確定したら、不動産の残金決済を行います。代金の全額を受け取り、また不動産を引き渡すことになります。
残金決済の時に書類が揃っていないと、大きな問題になりがちです。ここが一番の注意点といえるでしょう。
STEP1: 土地建物売買契約締結時に必要な書類
売買契約を締結する時点では、まだ土地の権利証を引き渡すことはありません。しかし、少なくとも不動産会社には権利証(登記識別情報)を提示し、正当な所有者であることを示せる用意はしておいてください。
不動産会社は最新の登記簿を取得して、売主が間違いなく本人だと確認していることが多く、その場合は登記済権利証等の提示を求められないこともあります。
土地建物の登記済権利証・登記識別情報
登記済権利証は、かつて不動産登記が完了した時点で法務局から発行されていた書類です。
平成18年から20年頃にかけて、法務局が電子化され、登記済権利証がなくなりました。
これ以降は、登記済権利証にかわって登記識別情報が発行されるようになっています。登記識別情報はパスワードのようなもので、文字列が書かれた部分には目隠しシールが貼られています。
この目隠しシールは剥がさないようにしてください。
つまり、土地所有者には「登記済権利証」または「登記識別情報」のどちらかが発行されているはずです。どちらも手元にない場合は、司法書士に相談してください。費用がかかりますが、事前通知制度を利用するか司法書士による本人確認を行うことで、登記が可能となります。
印鑑証明書(取得後3か月以内)
不動産の売主は登記申請の際に実印を押印する必要があります。また、発行後3か月以内の印鑑証明書を提出する必要があります。
売買契約の締結時点で印鑑証明書の提示を求められるかどうかはケースバイケースですが、念のため用意しておいた方が安心です。
不動産会社が印鑑証明書を回収し、司法書士に回してくれることもあります。
固定資産税等納税通知書/固定資産税評価証明書等
不動産の引き渡し時を境に、その年のそれ以前の固定資産税を売主が負担し、それ以降の固定資産税を買主が負担します。
その計算のため、不動産会社から固定資産税の納税通知書を求められることがあります。
固定資産税納税通知書ではなく、固定資産税の評価証明書を用意した場合は、不動産会社から司法書士にこの書類を回してくれることがあります。その場合、所有権移転費用の計算および登記申請のために、司法書士がその書類を使用します。
本人確認書類(運転免許証等)
不動産売買にまつわる詐欺等を防ぐために、不動産会社も司法書士も、必ず売主の本人確認を行います。そのため、売買契約の締結時かそれ以前に免許証などの本人確認書類の提示を求められます。
売買契約書に貼る収入印紙
不動産の売買契約書には収入印紙を貼る必要があります。
一般に、売買契約の時点で売主と買主の双方が売買契約書に割印を押しますが、同時に収入印紙にも割印を押します。
不動産会社が収入印紙を用意してくれる場合は、その代金を支払います。用意してくれない場合は、自分で以下の表を見て、必要な収入印紙を用意しておいてください。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下 | ¥400 | ¥200 |
50万円を超え 100万円以下 | ¥1,000 | ¥500 |
100万円を超え 500万円以下 | ¥2,000 | ¥1,000 |
500万円を超え1,000万円以下 | ¥10,000 | ¥5,000 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | ¥20,000 | ¥10,000 |
5,000万円を超え1億円以下 | ¥60,000 | ¥30,000 |
1億円を超え5億円以下 | ¥100,000 | ¥60,000 |
5億円を超え10億円以下 | ¥200,000 | ¥160,000 |
10億円を超え50億円以下 | ¥400,000 | ¥320,000 |
50億円を超えるもの | ¥600,000 | ¥480,000 |
1000円以上の高額な収入印紙はコンビニ等で購入できないので、郵便局や法務局で購入し、用意しておく必要があります。
付帯設備表など(不動産仲介会社が用意)
売買契約を締結する時には、一般に付帯設備表や物件状況の告知書を買主に交付します。
ただし、これについてはあまり心配しなくても良く、不動産の仲介会社が用意してくれます。内容をチェックし、必要な点を書き加え、署名・押印すれば完成します。
仲介手数料の半金
不動産の仲介会社は、売買契約成立時点で仲介手数料全額を請求することができます。
ただ、多くの不動産会社では、この時点で仲介手数料の全額を請求することはありません。売買契約締結時に仲介手数料の半額を受領し、残りの半額を残金決済時に受領する不動産仲介業者が多数派です。
売買契約時点では仲介手数料をまったく請求せず、残金決済時に全額を請求するという会社もあります。これはケースバイケースなので、仲介会社に尋ねてみてください。
SETP2: 売買契約締結後に司法書士から求められる書類等
上記の必要書類のうち、司法書士が使用するのは以下の4点です。
司法書士が使用する書類等
- 登記済権利書または登記識別情報
- 印鑑証明書
- 固定資産税評価証明書
- 売買契約証書
これらの書類を不動産会社から司法書士へ回してくれることもありますし、司法書士事務所から売主に直接請求することもあります。
いずれにせよ、別途、司法書士から委任状への署名押印を求められます。また、司法書士は売主の本人確認を厳格に行いますので、一度は司法書士と面談する必要があります。
STEP3: 土地建物の決済・引渡し時に必要な書類等の解説
不動産の決済(残金決済)は、不動産取引の最終段階。手付金以外の残金を受領し、不動産を引き渡します。
ポイントは、決済完了後すぐに、司法書士が登記申請を行う点。これによって、確実に買主に名義変更を行うわけですが、逆に言うと、ここで書類が揃わないと大ピンチになるのです。
問題が起きないように、司法書士と不動産会社が細かく書類の案内をしてくれるので、手配を忘れないように注意しましょう。
土地建物の登記済権利証・登記識別情報
土地建物の権利証である登記済権利証や登記識別情報は、遅くとも、その不動産の残金決済時までに司法書士に引き渡す必要があります。
司法書士によっては、残金決済の前にあらかじめ登記識別情報を確認したり預かったりすることがあります。その場合、不動産会社または司法書士事務所から何らかの指示があるはずですので、それに従ってください。
印鑑証明書(取得後3か月以内)と実印および委任状
登記識別情報と合わせて印鑑証明書も司法書士に引き渡す必要があります。司法書士への委任状も作成します。
委任状の書式は司法書士が作成してくれるので、そこに記名押印すれば完成します。
土地など不動産の売主は、ほとんどの書類に実印を押印する必要があります。
固定資産税評価証明書・固定資産税等納税通知書
仲介業者は納税通知書を元に、売主・買主間の固定資産税の按分計算を行います。
一方、司法書士は固定資産税の評価証明書を使用します。これも必要になるので、遅くとも残金決済の時点で司法書士に提出します。
司法書士はこの書類をもとに不動産移転登記費用等を計算し、登記申請にも使用します。
不動産会社が固定資産税評価証明書を取得してきてくれることもよくあります。その場合は、委任状を作成します。
固定資産税評価証明書、印鑑証明書、登記済権利証(登記識別情報)は、あらかじめ司法書士に渡しておく事の方が多いでしょう。司法書士事務所からの指示に従い、必要な時点で用意してください。
マンション管理規約、建築確認関連書類等
マンション売買の場合は、不動産の残金決済時に、買主に対してマンションの管理規約を引き渡します。マンションの買主は自動的にマンションの管理組合員になるためです。
また、マンションや一戸建て住宅いずれの場合でも、建築確認関連の書類が手元に残っている場合は、図面を含めて買主に引き渡してあげてください。
一戸建ての場合、リフォーム時に建築確認申請や検査済証などの書類が必要になる可能性があります。
ローン残債務がある場合は金融機関の通帳・印鑑
住宅ローンの残債務がある土地建物を売却する場合、一般に買主が不動産を購入してくれたお金でローンを一括返済します。
そのため、残金決済の前段階で住宅ローン借り入れ先の金融機関と相談をしておき、この日に一括返済があることを確認し、手続きを行っておきます。
お金と手続きの流れとしては、不動産の売買金額が一旦売主の通帳に入り、そこから金融機関がローン残債務分を引き落とし、返済が完了する流れになります。
この手続きを前提として、銀行は抵当権抹消書類を用意しておき、残金決済完了後遅滞なく司法書士にその書類を渡してくれます。
抵当権抹消書類
住宅ローンの残債務がある土地建物を売却する場合、その不動産には住宅ローンの融資をしている銀行などの金融機関の抵当権が設定されています。
その抵当権を解除するための抵当権抹消書類を、あらかじめ金融機関と相談して用意しておく必要があります(上記の一括返済の手順参照)。
残金決済完了後、司法書士はその抵当権抹消書類を添付書類として、抵当権の抹消登記申請を行います。この手続きにより、買主は抵当権の登記が抹消された不動産を購入することができるわけです。
その他の書類
残金決済の時、もし手元に書類が残っていれば、システムキッチンや食洗機、浴室・風呂釜などの取扱説明書も買主に引き渡してください。
義務ではありませんが、気持ちよく売買するためのポイントです。
また、鍵も忘れずにすべて用意しておき、これも買主に引き渡してください。
仲介手数料の半金
不動産会社によって仲介手数料の請求タイミングは若干異なります。売買契約を締結した時点で仲介手数料の半額を受領している場合、残金決済の時点で残りの半額を請求します。
残金決済の時点まで仲介手数料を請求せず、残金決済時に全額を請求する仲介業者もあります。
法律上は売買契約が成立すれば仲介手数料の請求を行うことができますので、これに関してはどちらでも構いません。ご利用の仲介業者に確認してください。
まとめ「進捗状況別必要書類リスト」
この記事では、土地建物など不動産売買の進捗タイミングにあわせて、必要となる書類をリストアップし、その詳細や取得方法を解説しました。
以下にその概要をまとめます。
土地建物の契約締結時に必要な書類チェックリスト
売買契約の締結時には、一般に以下のような書類が必要となります。
売買契約締結時
- 土地建物登記済証(提示)
- 実印(共有の場合所有者全員)
- 印鑑証明書(3か月以内発行のもの)
- 固定資産税等納税通知書
- 管理規約等(マンションの場合)
- 建築確認通知書・検査済証
- 実測図・建築図面等
- 建築協定書等(あれば)
- 付帯設備表(不動産会社が用意)
- 物件状況等報告書(不動産会社が用意)
- 売買契約書貼付印紙
- 仲介手数料の半金(不動産会社による)
重要なのは、実印(印鑑そのもの)、土地建物登記済権利証などです。
土地建物の決済・引渡し時に必要な書類チェックリスト
残金決済時には、どの書類も重要です。ただ、タイミング的には決済の当日でなく、それ以前に「司法書士に提出してください」「仲介会社に預けてください」と言われることも多く、不動産会社と相談しながら準備を進めてください。
土地引き渡し・残金決済時
- 土地・建物登記済証
- 実印(共有の場合全員分)
- 印鑑証明書(3か月以内発行のもの)
- 住民票・除票(住所変更している場合)
- 建築確認通知書・検査済証
- 実測図・建築図面等
- 建築協定書等(あれば)
- 付帯設備の取扱説明書等
- 鍵
- 登記費用(抵当権抹消・住所変更等)
- 管理規約等(マンションの場合)
- 抵当権等抹消書類
- 残金決済時
- 借入先金融機関の通帳・通帳印
- 仲介手数料残金
決済時に必要書類が足りないと、大きな問題になります。筆者が経験したトラブルとしては「売主さんが実印を紛失した」という事例があります。
売買が完了した後に必要な書類
不動産取引自体は残金決済をもって完了しますが、もし売却して譲渡益が出た場合、確定申告をする必要があります。
確定申告に備えて、売買に使用した書類一式を保管しておいてください。購入した時の契約書や領収証なども保管しておき、翌年2月の確定申告に備えます。
もし譲渡益が出なかった場合は確定申告の必要がありませんが、それでも書類は保管しておいてください。税務署からの問い合わせがあるかもしれないからです。
また、譲渡益が出た場合であって、自分が住んでいる家を売却した時には特別控除を受けることができます。
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