不動産一括査定は、正しい査定価格を出してくれるサービスではありません。不動産業者は、たとえ査定価格が間違っていても責任を取りませんよね。
なので、ちょっと多めに盛った価格を出してくることも多いのです。
その他にも、不動産一括査定には以下のようなデメリットがあります。
4つのデメリット
そこで、この記事では不動産一括査定の4つのデメリットと、上手な利用法を解説していきます。
本稿は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が執筆しました。
不動産一括査定サイトのしくみ
不動産一括査定は…
- 不動産会社からお金をもらっている
- だからユーザーは無料で利用できる
というしくみで運営しています。
一般に一括査定サイトは、1件の情報を1つの不動産会社に送ると、1万5000円前後の料金を徴収します。仮に10社に査定依頼を送ったとしたら、一括査定サイトは15万円儲かる仕組みです。
不動産会社は「それでも媒介契約(仲介契約)が欲しい」と考えて登録しています。
メリットもデメリットも、そのしくみを前提に考える必要があります。
1万5000円という課金金額は一例に過ぎず、2万円程度課金されるケースもあります。逆に、安い場合は1万円前後の場合もあります。
不動産一括査定のデメリット
デメリットのほとんどは「ユーザーではなく不動産会社からお金を取っていること」に原因があります。つまり、不動産一括査定は「不動産会社が仲介を取るために存在している」ことを、頭の片隅において利用してください。
上手に利用すれば、決して悪いサービスではありません。
デメリット①査定価格が不正確であることが問題
不動産一括査定サイトの乱立により、不動産会社間の過当競争が起きています。
その結果、手っ取り早く仲介を取りたいと考える不動産会社は、実際よりも高い査定価格を提示する傾向があります(「撒き餌価格」などと呼ばれます)。
不動産に詳しくない売主は「そんなに高く売れるならおたくに任せたい」と、簡単に仲介契約をしてくれるため、撒き餌査定は増えています。
しかし、実際よりも高い価格で売り出された不動産は、長い間売れずに棚ざらし状態になります。結局は値下げをして成約するため、時間の無駄にしかならない、というのが実情です。
こういった不正確な価格査定の現状については、以下の記事で詳しく解説しています。
デメリット②大手仲介会社は登録していない
実は、一般的な不動産一括査定サイトに、大手仲介会社は登録していません(※1)。豊富な情報を持ち、正確な価格査定を行える大手仲介会社に査定を依頼できないのは、残念なデメリットです。
大手のメリットは?
- コンプライアンス体制がしっかりしており、査定額も正確。
- 万が一のトラブル保証など、サポート体制がしっかりしている。
とくに、大手が強い都市部では、一括査定だけですませるのではなく、大手仲介会社にも査定を打診してください。
ひとつおすすめをあげるなら、業界でもほぼ唯一「正確な価格査定」を全面に押し出している、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)がいいでしょう。この査定額が、売却戦略の基準になります。
三井のリハウス|公式サイト
地方都市では準大手を狙う
大手不動産会社は、地方をカバーしていないという弱点があります。
たとえば、四国には、三井不動産リアルティや住友不動産販売の営業所がありません。九州も福岡県だけです。仙台以外の東北地方や、長野県も、大手不動産会社の空白地帯です。
そこで、地方都市の場合は、準大手不動産会社が多数登録しているNTTデータグループの「HOME4U」を試してみてください。HOME4Uはセキュリティが強固なので、有名不動産会社が多く利用しています。
HOME4U(ホームフォーユー)|公式サイト
スターツピタットハウス、みずほ不動産販売、三井住友トラスト不動産、三菱UFJ不動産販売など、信頼性の高い不動産会社に価格査定を依頼できます。
(※1)準大手の一部が登録しているケースはあります。
デメリット③しつこい電話やアポなし訪問もあり得る
筆者は、不動産会社の立場で不動産一括査定サイトを利用していましたが、実際にライバル会社がアポなし訪問をする姿を見ています。
いつも同じ不動産会社でしたが、査定依頼のデータが届くと、すぐにアポなしで訪問して仲介を取り付けようとしていました。
お客さんが「夜8時過ぎに営業電話をかけてくる」と愚痴をこぼしていたこともあります。
このように、都市部では不動産会社間の競争が激しいため、しつこい営業もあり得ます。沖縄県などの地価上昇エリアも注意が必要でしょう。
ただし、筆者が実験してみたところ、田舎ではしつこい営業はほとんどありませんでした。以下の記事では、大阪府(ほとんど和歌山県)と栃木県で実際に不動産一括査定サイトを利用したレビューを掲載しています。いずれも、しつこい営業等はありませんでした。
もし「今しつこい電話で困っている」という場合は、以下のどちらかに相談してみてください。ほとんどの不動産業者は、以下の団体のどちらかに加盟しています。
全日不動産相談センター|全日不動産
無料相談|全宅連
いずれも、不動産に詳しい相談員が対応してくれます。
デメリット④原則として匿名での査定依頼はできない
不動産の査定を行うには、物件を特定する必要があります。そして、物件特定の過程で「誰の不動産か」がわかってしまいます。
どうしても匿名で査定を出してほしい、ということであれば、物件を特定しない状態での査定となり、かなり不正確なものになります。
その場合、以下の記事を参照して、自分で大まかな価格査定をしてみてもいいかもしれません。
不動産一括査定でトラブルを避ける3つの注意点
ここまであげてきた5つのデメリット、「嫌だな」「めんどくさいな」とは思いますが、実は致命的な物ではありません。
しつこい営業はビシッと断ればすむ話ですし、近隣の売却相場を把握する努力をすれば、不正確な価格査定に惑わされることもありません。
不動産一括査定は、使い方次第で役に立ったり、トラブルの元になったりします。
ポイント①査定価格は参考にとどめておき「信じすぎない」
これまで見てきたように、不動産一括査定サイトの登録不動産会社は、査定価格を「盛っている」傾向があります。
でも、大丈夫。信じすぎなければよいだけです。
「ウチの値段はいくらかな」という気持ちで査定依頼をするのではなく、最初に近隣の売却相場を見ておき、「それに対してどういう査定書を出してくるのかな?」と考えるのがおすすめです。
また、都市部であれば、不動産一括査定に加えて、必ず大手仲介会社の精密な価格査定をとっておいてください。
大手の中でも、筆者が最も正確な査定を出すと考えているのは、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)です。
三井のリハウス|公式サイト
一緒に仕事をしてみるとわかりますが、大手不動産会社のコンプライアンス態勢は非常にしっかりしています。
大手のエース営業マンのみを紹介するサービスもあり
もうひとつ、信頼性の高いサービスが登場しました。三菱地所リアルエステートサービスが運営する「TAQSIE(タクシエ)」は、大手・準大手仲介51社のエース級社員のみを登録しており、「不動産会社でなく担当者を探す」というサービス。
在籍担当者の基準
- 宅建士資格を保有
- 経験5年以上
- 成約件数100件以上
査定依頼をかけると各社を代表するエース級社員から合計3名を選抜し、売却提案を送ってくれます。
ユーザーはそのなかから最も信頼できる担当者を選任し、売却を任せる……という、新発想のサービスです。
TAQSIE(タクシエ)|公式サイト
残念ながら首都圏(一都三県)にしか対応していませんが、エリアは今後増やしていくとのことです。
ポイント②しつこい営業は毅然として断る
冒頭で説明したように、不動産一括査定が無料で利用できるのは、不動産会社がお金を支払っているからです。
そのため、支払ったお金を取り返そうと、しつこく営業してくる不動産会社もあります。
しかし悪質な不動産会社は少数派で、通常は毅然として断ればOKです。それ以上しつこく食い下がる場合は、都道府県の建築指導課などに相談してください。
また、仲介を断ると「どこと契約しました?」「査定価格はいくらでした?」と尋ねてくる事が多いのですが、答える必要はありません。
ただし! 売る気がないのに査定だけ依頼するのはやめてください。それこそトラブルの元になってしまいます。
ポイント③「売る気はないが査定のみ」はトラブルの原因
ここまで解説してきたとおり、不動産一括査定は、正しい査定価格を出してくれるサービスではありません。
不動産会社とユーザーをマッチングするサービスといったほうが当たっています。
査定のみはやめた方がいい理由
- そもそも査定はあまり正確でない
- しつこい営業は覚悟しておくべき
- 不動産会社がかわいそう
不動産会社の立場で考えると、売却予定がないのに査定依頼だけされるのは迷惑です。一括査定サイトにお金(情報1件あたり約1万5000円くらいが多い)だけ取られてタダ働きさせられた、ということになるからです。
結果、不動産会社とユーザーの両方にストレスがたまるだけなので、売却する気がない査定依頼は絶対にやめてください。
不動産一括査定を実際に「やってみた」リアルな体験
栃木県宇都宮市内の一戸建て住宅の査定依頼を出し、不動産一括査定の実情を調査したところ、やはり査定価格には大きなバラツキがあることがわかりました。
筆者の査定と一致する、正しい査定価格を出す会社もあれば、相場の2倍を提示する会社もありました。
詳しくは以下の記事でレポートしています。
筆者の査定では、最も安いD社が正しく、C社の査定額は大幅に盛っていると考えています。ただ、予備知識がないとC社にだまされてしまうというのが問題です。
上記の記事では、正しい査定額を出してくれた不動産会社は全体の1/4~半数程度でした。どれが正しい査定額か迷ったら、他社に比べて高すぎる査定を出した会社は除外し、真ん中くらいの査定額を出してきた会社を採用するようにしてください。
おすすめの不動産無料査定サイトとその特徴
現在、不動産一括査定サイトは20件以上が乱立する状態です。一長一短があり、ランキング形式にはできませんが、おすすめのサイトをピックアップしました。
筆者が不動産会社の立場として利用した経験があり、これならある程度おすすめできると考えているサービスを中心にまとめました。
AIを活用して査定の正確性を担保した「HowMa一括査定」
HowMa一括査定を運営するコラビットでは、AI査定を開発するにあたり「不動産の価格査定がわかりにくい」「不正確な場合もある」という問題意識があったそうです。
そこで、ユーザーが査定依頼をする際、まずAIによる査定額を確認できるようにしています。これにより、以下のメリットが生まれました。
- ユーザーは概算査定額を見た上で不動産会社の価格査定を吟味できる
- 不動産会社は実態より高すぎる無責任な価格査定を出しにくくなる
AI査定を生かして、HowMaでは不動産価格査定の正確性を担保しています。そのため、不動産に詳しくないユーザーでも安心して利用することができます。
HowMa一括査定|公式サイト
筆者も不動産会社として利用してきた「 Re:Guide(リガイド)」
不動産会社への課金が一番安かった! という点が、筆者の印象に残っています。ざっくり、イエウールやリビンマッチの半額くらいでした。
不動産会社は「必死でお金を取り返そう!」と、しつこい営業をする必要がありません。
そのため登録会社数の実数も多く、アップライト合同会社で行った全国調査でも、対応不動産業社数が最も多いという結果になりました。地味ながら優秀なサイトです。
Re-Guide(リガイド)|公式サイト
地方でも売却査定を出してもらえる「イエウール」
ここ10年くらい、不動産の無料一括査定をリードしてきた最大手サイトです。登録不動産会社数も多く、東京商工リサーチの調べで「エリアカバー率No.1」と判定されています。
地方の不動産会社が少ないエリアでも対応できる可能性があるので、相続した田舎の実家を売却するケースなどでも利用価値のあるサイトです。
イエウール|公式サイト
筆者も不動産会社の立場で数年間利用しましたが、IT企業としての技術力の高さを感じました。
利用者数・提携不動産会社数・エリアカバー率等の調査報告|株式会社Speee
マンションなら専門の「マンションナビ」
マンション専門なので、マンションの査定や売却に強い業者が集まっています。不動産会社によっては、マンション新築時のデータなどを保管している場合もあり、かなり精密に価格査定することが可能です。
マンションナビ|公式サイト
また、マンション名を入れるだけで相場価格を表示してくれる機能もあります。相場の表示機能は無料かつ完全匿名で利用できます。
NTTデータグループが運営する「Home 4 U」
セキュリティや個人情報保護に関して安心感があるHome 4 U。NTTデータグループが運営しているので、運営体制がしっかりしています。
提携不動産会社数や同時査定数(6社)などは、だいたいイエウールと同じです。
Home 4 U|公式サイト
しかしHOME4Uには、準大手不動産会社が多数提携しているという特徴があります。正確な価格査定や、しっかりとした販売力を重視する場合におすすめの査定サイトです。
対応エリアに死角が少ない「LIFULL HOME'S」
不動産一括査定サイトの中でも最大を誇る、4000社以上の登録会社数。他の不動産査定サイトで「エリア外」と表示された地方部でも、念のため試しておく価値があります。
当社の調査では、大阪や東京の郡部(奥多摩や岬町)でも、相当数の不動産会社が査定対応してくれることがわかっています。地方にはかなり強いといえるでしょう。
ただ、匿名査定はちょっと怪しいので要注意。物件の地番を含む詳細を入力しないといけないので、誰が査定依頼をしているかは完全にバレます。匿名の意味はないと考え、通常の査定依頼を利用してください。
LIFULL HOME'S|公式サイト
ビルや工場なども査定できる「リビンマッチ」
実は、筆者が不動産業者として最も長く利用したのがリビンマッチです。その理由は、年々どこかが進歩し続けているから。
昔から農地などの特殊物件にも対応していたので、筆者もかなり農地の査定を行いました。工場やビル、ホテル、投資用物件など、たいていのものは査定依頼を受け付けてもらえます。
リビンマッチ|公式サイト
ほかの一括査定サイトで対応してもらえなかった場合は、試してみる価値大です。
まとめ「不動産一括査定はデメリットを理解して上手に使う」
「ただより高いものはない」ということわざがあります。不動産一括査定も同じで、無料で使えるものの、意外と高くついてしまうこともあります。
無料不動産一括査定のデメリット
- 実際より高い査定価格にだまされて、物件売却に行き詰まる
- しつこく営業されて不本意な仲介依頼をしてしまう
- 匿名のつもりだったのに、実は身元がバレバレだった
- 大手仲介会社に査定依頼できず、不動産会社の傾向が偏りがち
こういったデメリットを理解した上で利用すれば、不動産一括査定は役に立つサービスです。
査定価格を信じすぎず、しつこい営業はき然と断ればOKです。
無料ですから多少の不便やめんどうがあるのは当然。そう考えて、不動産一括査定をうまく利用してください。
おすすめ不動産査定
都市部では査定額が正確な大手不動産会社を利用し、その査定額を基準として売却戦略を立ててください。中でも、価格査定の正確さを唯一正面から訴えているのが三井不動産リアルティ(三井のリハウス)です。
三井のリハウス|公式サイト
地方都市の場合、三井のリハウスがカバーできないケースもあります。その時は、準大手不動産会社が多数登録する、NTTデータグループのHOME4Uを利用してください。
HOME4U(ホームフォーユー)|公式サイト
HOME4Uには、三井住友トラスト不動産、住友林業ホームサービス、三菱UFJ不動産販売などの大手・準大手クラスが多数参画しています。
また、AI査定を利用して不動産査定の正確性を担保しているHowMa一括査定もおすすめできます。査定依頼をするユーザーにはその場でAI査定が提示され、その後各不動産会社からの査定が届くという仕組みなので「不動産会社が出してきた査定額が正しいか間違っているかを判断できる」というメリットがあります。
HowMa一括査定|公式サイト
沖縄の不動産売却ならトーマ不動産へ
トーマ不動産では、常に正確な価格査定を提出し、確実なご売却プランの提案を行っています。沖縄県内(沖縄本島)の不動産については、幅広くご相談に対応していますので、お気軽にご相談ください。
お問い合わせフォームから、匿名でのご相談も可能です。
お問い合わせ|トーマ不動産
また、価格査定は無料でお送りいたします。
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