不動産売却

田舎の実家が売れない理由と「売却方法」を宅建士が解説!

田舎の不動産が売れないのは、ある意味当然のことです。

日本国内の自治体のうち、約半数で「20~39歳女性人口」が2040年までに半減するといわれています。

しかも、744の自治体が「最終的には消滅する」可能性があるという状況。

田舎に行けば行くほど不動産の需要は弱くなり、土地や建物が売れないという状況は避けられません。

そんななか、相続した田舎の実家をどう売却すべきか? この記事では、田舎に強い宅建士が、その傾向と対策を解説します。

国立社会保証・人口問題研究所および人口戦略会議の発表データに基づいています。また、この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が制作しました。

田舎の実家が売れない3つの理由

不動産の価格は需要と供給のバランスで決まります。つまり、売れないのは、

  • 需要がなさすぎる
  • 需給バランスを無視した価格を付けている
  • それに加えて不動産会社がダメ

のどれか。それを前提として、どのように対策するかを考えていきましょう。

人口減少地域になり「需要がない」

2040年までに20~39歳女性人口がどれくらい減少するか

このグラフは、現在の人口動態がこのまま続けば、2040年までに20~39歳女性人口がどれくらい減少するかを表したものです(2010年比)。

90.2%の自治体で「20~39歳女性人口が減少する」と予測されています。また、日本の自治体の約半数で「20~39歳女性人口が半減する」と言う予測も深刻です。

こういった人口減少エリアでは不動産需要が特に弱く、そのため不動産が売れないと言う傾向があります。

需要そのものが弱く、不動産がなかなか動かないのです。

データの出典は、国立社会保障・人工問題研究所が発表している資料です。また参議院が作成している「人口減少による消滅可能性都市の衝撃」という資料も参考になります。

相場より高い価格で売り出している

遠方の実家の土地、相場等はなかなか実感できず、よくわからないケースも多いでしょう。そこで「とりあえず不動産会社が提案してきた価格で売り出している」ということも多々あります。

しかし不動産会社の査定額の中には、実態よりも高すぎるものが混じっている点に注意が必要です。

特に不動産一括査定サイトを利用すると、実際より高い価格をつけてユーザの気を引こうとする会社がよくあります。

そういった不誠実な査定額にだまされることなく、相場の価格で売り出すように注意してください。

また、この点について以下の記事で詳しく解説しています。

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不動産会社選びに失敗している

田舎ではそもそも不動産会社の数が少ないということもあり、不動産会社選びに難航する事がよくあります。

その結果、適当なところで手を打ってしまい、その物件に向いていない不動産会社に仲介を依頼していないでしょうか?

例えば市街地の一般的な住宅が得意な不動産会社に、山の中の別荘物件を効率よく売却することはできません。逆にリゾート物件が得意な会社に都市部の住宅販売を任せても、あまり効率的ではありません。

こういった点に注意して、その会社がどんな物件を得意としているのかを確認してから仲介を依頼するようにしてください。

特に田舎で問題になるのは、住宅建築が大きく制限される「市街化調整区域」の物件や、都市計画法上の「接道」がない土地の売却など。以下の記事では、その点を詳しく解説しています。

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田舎の物件を売ってくれる不動産会社の探し方

田舎の物件売却は、田舎の不動産会社が得意です。都会の不動産屋さんにはわからない点が多く、仲介を受けても田舎の業者に対応を丸投げしてくるケースがあります。

そこでこの章では、田舎の物件を効率よく売却するための不動産会社探しをガイドします。

一定規模の市街地なら準大手不動産会社も対応可能

筆者は普段「不動産会社は、できれば大手から選んだ方が安心だ」と考えています。

田舎でも、県庁所在地などの都市部であれば、準大手不動産会社が対応している場合があります。そこで、田舎の市街地であれば、まず準大手不動産会社を探してみてください。

以下の査定サイトであれば準大手系が多く登録しており、信頼できる会社が見つかる可能性があります。

HOME4UはNTTデータグループ企業が運営しており、セキュリティが強固なことから、大手・準大手系不動産会社が多数登録しています。

不動産ポータル大手のLIFULL HOME’Sも準大手系が多数参画しており、売却希望エリアに大手が対応しているかどうかを判断する場合の目安になります。

いずれも、三井住友トラスト不動産、三菱UFJ不動産販売、住友林業ホームサービスなどの有名企業が提携しており、一度試してみる価値があります。

過疎地で不動産会社を探す手順

過疎地の場合は大手不動産会社が対応していないため、地方に強い不動産一括査定サイトを利用することになるでしょう。

不動産一括査定にはデメリットもありますが、田舎の不動産会社を1軒1軒まわるよりも、はるかに効率的です。

筆者の経験上、田舎に強い不動産一括査定サイトはイエウール、リガイド、リビンマッチなど。実は筆者は、こういった不動産一括査定サイトを不動産屋の立場で利用していました。

その経験から、この3サイトは地方に強いと考えています。

ただし、かなり地方にある物件の場合、この3サイトすべてを試してみても対応不動産会社が見つからないケースもあります。

その場合は以下の記事を参照して、その他の不動産一括査定サイトも併用する必要があります。

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対応不動産会社がない場合は個人売買を検討

ここまでやってみて、どうしても対応不動産会社が見つからない場合は、個人売買サイトを利用するという方法も考えられます。

日本で利用可能な不動産個人売買サイトはいくつかありますが、筆者は全て試してみて「家いちば」以外は役に立たないと考えています。

また、筆者が実際に「家いちば」を利用してみたレビューは、以下の記事に詳しく掲載しています。

結論からいうと、「家いちば」以外の、ジモティ、e-物件情報、不動産直売所はまったく役に立ちませんでした。

また、「家いちば」を利用して2物件(小さなマンションと一戸建て)を売却してみましたが、そのうち1件(一戸建て)は「家いちば」で売却でき、1件は地元の不動産会社で成約しました。

田舎の実家を売却する7つのコツ

この章では、不動産会社選び以外の、田舎の不動産売却にまつわるコツを解説していきます。「知識として押えておきたい」というポイントから、奥の手としての「不動産買取」まで、押さえておきたいコツを紹介しました。

1年単位の売却プランを立ててじっくり取り組む

種類売却までの期間
全体8ヶ月
マンション6ヶ月
一戸建て11ヶ月

上記はアットホーム株式会社が行った、首都圏での物件種類別の売却期間の調査結果です。

首都圏であっても一戸建ての売却に11か月かかっていることから、田舎では年単位の時間がかかると考えるべきだとわかります。土地は、もっと時間がかかります。

そこで、相続した実家など、田舎の不動産を売却する場合は「長期計画を立ててじっくりのぞむ」ということを意識してください。

また、以下のような点にも注意が必要です。

  • しばらく問い合わせがなくても一喜一憂しない
  • 不動産会社がちゃんと広告しているかはチェックする
  • 値下げ交渉にあたっては弱気にならずにのぞむ

じっくり構えながらも、不動産会社の仕事ぶりはチェックするようにしてください。また、媒介契約の類型は一般媒介を基準に、場合よっては専任媒介も検討してください。

媒介契約の選び方について、詳しくは以下の記事で解説しています。

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価格設定についてセカンドオピニオンを聞く

一年経っても反響がほとんどない場合は、価格設定が間違っている可能性があります。そこで他の不動産会社にも価格査定を出してもらい、セカンドオピニオンを聞いてみてください。

その際、一般に「田舎に強い」とされる、以下の不動産一括査定サイトを利用してみると効率的でしょう。

イエウール

イエウールは提携不動産会社数が2000社と多く、また、地方に営業担当者が足を運んで不動産会社を開拓しています。

地方での不動産会社探しにも役に立つサイトなので、試してみる価値が大きいといえるでしょう。

ズバット不動産売却

提携不動産会社数は800社と多くないのですが、地方での対応力に定評があるのがズバット不動産売却です。現状では東日本が強い傾向にあるといわれています。

LIFULL HOME’S

LIFULL HOME’Sは、約4500社と圧倒的な提携不動産会社数が特徴。都市部でも地方でも、提携不動産会社が見つかりやすい傾向があります。

もし上記サイトを試してみても対応できる不動産会社が見つからない場合は、以下の記事を参照してみてください。

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遠方の会社を避けて近場の不動産会社を選ぶ

どんなに営業力がある不動産会社でも、事務所から遠く離れた不動産を売却することは苦手です。なぜなら、営業効率が悪いからです。

一般に、不動産売却で成約するためには何人に物件を案内したかが目安になります。

このエリアなら10組のお客さんに内覧してもらったら成約するとか、この種類の物件なら20組のお客さんに内覧してもらったら成約する……という大まかな傾向が存在するのです。

その点、どんなに優秀な不動産会社であっても、自社から遠く離れた物件では、なかなか物件内覧の案内ができません。

そこで、不動産会社を選ぶ際は「物件案内に便利な、近場の不動産会社を探す」ようにしてみてください。

安易に古家・上物を解体しない

都市部の不動産しか扱ったことがない会社の場合「古家は建て壊して更地にしましょう」という提案をしがちです。

しかし、上物を解体する際は、必ず地元の事情に詳しい不動産会社に相談してください。

セカンドハウス需要の場合は、古家を残しておいたほうが売れやすいため「解体しない方がいい」という判断になる場合も多々あります。

たとえば、筆者が和歌山市近郊のボロ家を売却したケースでは、「海の近くの物件なので海釣りに来たときに泊まりたい」という方が買ってくれました。

この場合、更地にしてしまっては売れません。以下のように、予算が全然違ってしまうからです。

古家あり更地
不動産価格200万円200万円
リフォーム150万円
新築700万円
合計予算900万円350万円

田舎では古家あり土地も更地も、だいたい同じような値段なので、仮に双方200万円としました。上物を残せばリフォームして使えるので、総予算は350万円です。

ところが、更地にしてしまうと小さな家を新築しないといけないので、がんばっても700万円ほどかかり、総予算が900万円になります。

こういった需要を見逃さないためにも、慎重な検討が必要です。

固定資産税などランニングコストの資料を用意しておく

「固定資産税はいくらですか?」

というのは、非常によく聞かれる質問です。この質問に即答できるよう、税額を調べて手元に用意しておいてください。

田舎の不動産は固定資産税が安く、これがひとつの魅力だと考える人もたくさんいます。

とくにセカンドハウス需要であれば、お客さんは市街地から来るわけですから、固定資産税の安さは十分アピールポイントになり得ます。

不要品を片付けてなるべくきれいにしておく

不動産売却において、部屋を片付けておくというのは鉄則といえます。不動産の買主はたいていが一般の方なので、第一印象に左右されるからです。

室内がゴミ屋敷のようになっている場合は特に売れにくいので、注意が必要です。

大量に不要品がある場合、筆者はスマホの位置情報をオンにした状態で「廃品回収」というキーワードで検索しています。

Google検索の場合、上の図のようにマップが表示され、近場の廃品回収業者が表示され、そのまま電話をかけることができます。

「家の不要品をすべて捨てて空にしたいので、見積をお願いしたい」と2~3社に相談し、そのなかからよさそうな業者を選んでください。

最終手段として「どんな物件でも買い取ってくれる会社」に相談

ここまで手を尽くしてみて、それでも売却できない場合は、

  1. どんな物件でも買い取ってくれる業者に相談
  2. それでもだめなら0円譲渡サイトに登録

という方法が考えられます。一般には、どんな物件でも買い取ってくれる、訳あり物件買取サービスでほぼ全て解決するはずです。

この手の買取サービスはいくつかありますが、筆者が取材をしてみて「話がしやすい」と感じたのは、AlbaLinkという会社の「訳アリ物件買取PRO」です。

相談ベースで買取査定を受け付けてくれて、他にいい売却方法があれば提案してくれることもあります。

通常、訳アリ物件買取PROで買い取ってもらえないことは少ないのですが、それでも売れなかった場合は、無償譲渡専門サイトが利用できます。

上記のサイトであれば費用がかからず、0円で不動産を譲渡できます。不動産会社に丸投げする感覚の「おまかせプラン」を利用する場合は、税込165,000円です。

まとめ「田舎の不動産売却は

田舎の実家を売却するのは簡単ではありません。 人口減少による需要の低下、適正価格の見極め、そして信頼できる不動産会社の選定などなど……様々なハードルがあります。

そこで、この記事では以下のポイントを解説しました。

  • 地方でも都市部なら準大手不動産会社を探してみる
  • 過疎地では地方に強い不動産査定サイトを利用してみる
  • どうしても売れない場合は個人売買サイトを検討する

準大手に強い査定サービスとしては、以下の2つがあげられます。地方であっても県庁所在地などであれば、有名企業が対応してくれる可能性もありますから一度試してみてください。

一方、過疎地であれば、地方に強いサイトを検討してください。筆者の経験上、以下の3サイトがおすすめです。

その他の不動産一括査定サイトは、以下の記事を参照してください。

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それでも売却が難しい場合は、専門の買取業者や無償譲渡サイトも検討しましょう。

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