特約条項とは、標準的な契約書の条文ではカバーできない、その契約固有の事情にもとづく条文のことを指します。
また、特筆するような事情がない売買契約であったとしても、紛争に発展する可能性がある場合、その紛争を防止する内容を特約条項や容認事項に盛り込んでおく場合もあります。
この記事では、売買契約における特約条項の意味と、特約条項を盛り込むべき条件、そして特約条項の具体的な内容について解説していきます。
そのほか売買契約において注意したい点は、以下の記事にまとめました。
この記事は宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が制作しました。
売買契約書における特約条項とは?
不動産の売買契約書における特約条項とは何でしょうか。
法律の条文の中で、当事者の合意で変更できないものを強行規定と呼びます。一方で、当事者間の合意によって変更できる規定を任意規定と言います。契約書の特約条項には、法律の任意規定を変更するような特殊な事情がある場合に、その内容を盛り込みます。
それだけではなく、その取引契約に固有の事情があり、法律に規定されていない問題などがあれば、それについても特約条項に記入されます。
契約書における特約条項の位置づけ
特約条項とは、標準的な契約書の内容を補完するものですが、不動産売買の実務上は特に、後々紛争になってほしくないことを明記しておくといった目的で使用されます。
例えば、買主が窓からの眺望を気に入って不動産を購入した場合、近隣の土地は第三者所有のもので、場合によっては視界を遮る建築物が建つことがあります。こういった点については合意を得ておき、明記する方が安全です。
特約条項の役割
最近は、国土交通省が作成した標準契約約款という不動産取引の契約書をもとに、宅建協会などの業界団体が作った標準的な売買契約書を使用することが一般的です。しかし、標準契約約款はよくできているものの、全てをカバーしているわけではありません。
そこで、標準契約約款がカバーしていない個別具体的な不動産取引にかかる事情を契約に反映させることが、特約条項の役割といえます。また、取引の実態に応じて、より安全に売買を行えるように補足的に特約条項を記載することで、後々の紛争を防止するということも期待されます。
特に、不動産会社の立場では自社が後々責任を追及される事態は避けたいので、売主・買主間の紛争だけではなく、不動産会社が紛争に巻き込まれないように、売主・買主・そして不動産会社間で合意された内容を特約条項に反映するよう注意を払っています。
特約条項が必要な理由
特約条項は主に以下のような理由で必要とされます。
- 標準契約約款で対処できないケースがあり、そこで特約条項が必要になる
- 個別具体的な契約の内容を反映させる
- 予測されるトラブルを防止する
次の章で、もう少し細かく見ていきましょう。
不動産会社は特約条項をどのように作成しているか
不動産会社は特約条項を、後々の紛争を未然に防止する目的で活用しています。
例えば、確定測量が不動産の引き渡し後になるというケースもあります。
本来であれば不動産の引き渡しの前に土地の境界の測量を終わらせておくのが安全ですが、確定測量には時間がかかるため、引き渡し後に土地の確定測量が完了するということは十分あり得ます。
そのような場合、以下の特約条項を入れておき、測量の結果、土地の大きさが公簿と異なっていても売主・買主がお互いに異議を述べないとする内容をあらかじめ盛り込んでおきます。
このように、不動産会社の職員が契約書を作成する時は、あらかじめ紛争になりそうな点を把握し、その防止策を特約条項に盛り込みます。
売主・買主の合意内容を書面化する
特約条項には、紛争を未然に防止するという意味以外に、一般的な標準契約約款の内容と異なる合意を売主・買主間で形成した場合、その内容を契約書に落とし込むという役割もあります。
例えば、売主・買主間で値引きをする代わりに、不要な残置物を残したまま引き渡すことに合意した場合、その内容を特約条項に記載します。
予想される紛争を事前に防止する
不動産会社の立場で重要なのは、特約条項が将来の紛争を予防するという効果です。
そのため、不動産会社には過去の紛争事例をデータとして蓄積し、起こり得る紛争を予測し防止するための知識が求められます。
しかし、不動産会社によって実力は様々で、現状は大きなばらつきがあります。
業界団体等により定期的に講習が行われ、トラブル事例や最新の法律改正に関する情報、その他の不動産取引に関する研修が実施されています。しかし、すべての不動産会社がこれにきっちり参加しているわけではなく、最新の情報やトラブル事例を把握していない業者もいます。
その点、一般に大手不動産会社の方が研修などが充実しており、各職員が新しい法令の内容や最近の不動産取引の傾向を把握している可能性が高いといえるでしょう。特に不動産売却であれば、まずは大手の不動産会社に相談してみるのが良いと言えます。
筆者としては売出し時には、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)を推します。
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また、沖縄県内であればトーマ不動産が紛争を予防する、しっかりとした売買契約書を作成します。沖縄県内で売却予定がある方は、ぜひご相談ください。
いずれにせよ、不動産の売買にあたっては、不動産会社の実力を確認し、しっかりとした契約書を作成できる不動産会社に仲介を依頼してください。
法律上おおむね決まっていることでも確定させる
法律上規定されていることでも、特約条項に盛り込むことでより確実にしておきたい場合があります。筆者は新築の一戸建て住宅を引き渡す場合、以下のような特約条項を差し込んでいました。
これは法令通りの一般的な内容ですが、改めて確認することには意義があります。万が一、何らかの紛争に発展し訴訟になる事態を一定程度防止することができるからです。
法律の強行規定に反しない
ただし、特約条項を規定したとしても、法律の強行規定に違反した場合は無効となります。強行規定に反するような特約は、たとえ契約書に付したとしても意味がありません。その点については確認しておくのが良いでしょう。
法律の強行規定については以下の記事が参考になります。
強行法規(強行規定)とは?|契約ウォッチ
特約条項とあわせて容認事項も記述しておく
最近では、特約条項に加えて「容認事項」を記載することが一般的となっています。容認事項とは、売主・買主間で合意し、売主または買主が特に認めた内容のことです。
例えば、敷地内に電力会社の電柱があることを買主が承諾した場合や、街路灯が近接しており窓から光が差し込む点を買主が承諾した場合などは、必ず容認事項に記載します。
その他、重要事項説明書に記載する法令上の制限などについては、重要事項説明書作成時点のものであり、将来変更される可能性がある点についても容認事項に入れておきます。
まとめ
不動産売買契約における特約条項は、標準的な契約書ではカバーしきれない個別の事情を盛り込むためのものです。 特約条項を適切に作成することで、売買後のトラブルを未然に防ぎ、安心して取引を進めることができます。
この記事では、特約条項の役割や必要性について解説しました。
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「特約条項」「容認事項」文例
以下は筆者が実際に使っていた文例集の中から選んだ事例です。一例として「このような事を記述する」という参考になるものを選びました。