不動産売却

イエウールで査定できない、対応不動産会社が存在しない理由と対策【宅建士解説】

不動産の一括査定サイト「イエウール」は、全国各地で不動産会社に査定依頼ができる便利なサービスです。しかし、すべての地域で査定が行えるわけではありません

特に地方エリアでは「対応できる不動産会社がゼロ」というケースもあり得ます。不動産取引の需要が都市部に集中し、地方では不動産会社の数自体が少ないためです。

また、それはどの不動産一括査定サイトでもあり得る事です。

この記事では、イエウールで査定依頼ができない理由を統計から解説し、「では、査定できない場合はどうすべきか」を詳しくガイドします。

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地方で査定対応可能な不動産会社が少ないのは、イエウール以外の不動産一括査定サイトでも同じです。

地方では「査定対応できる会社がゼロ」も普通

全国の宅建業者(不動産会社)数は約13万社(令和5年)。それに対して、イエウールに登録している会社数は2500社です。

上記の表でもわかるとおり、不動産一括査定サイトに登録している宅建業者はごく一部ですから、とくに地方エリアでは「査定対応できる不動産会社がゼロ件」ということも普通にあります。

イエウールに限らず、他の不動産一括査定サイトでも同じです。

東京都の人口1万人当たりの宅建業者(不動産業者)数は1.88件。それに対して、岩手県ではわずか0.52件です。

大まかな比較になりますが、上のグラフを見ただけでも「岩手には不動産会社が少ない」ということがわかります。

そのため、地方エリアではイエウールなどの不動産一括査定で「査定することができない」というケースも多いのです。

少し詳しく見ていきましょう。

不動産会社(宅建業者)が少ないエリアは東北や山陰に集中

下の表は、人口あたりの不動産会社数が少ない県を15件抜き出したものです。岩手県を筆頭に東北地方が多く、また鳥取県や島根県など、日本海側が多いのも特徴です。

都道府県名宅建業者数人口宅建業者数※地価変動率※
岩手県63012105340.520.1
鳥取県3085534070.556-0.8
青森県69112379840.558-0.6
秋田県5489595020.571-0.8
島根県4106711260.611-0.9
岐阜県123719787420.625-0.9
三重県110817702540.626-0.5
茨城県179428670090.6260.3
佐賀県5358114420.6590.5
山形県71610680270.67-0.2
栃木県132119331460.684-0.5
新潟県151722012720.689-1
山口県95513420590.711-0.3
福井県5547668630.722-0.9
福島県134318331520.733-0.3

※「宅建業者数」は「人口1万人あたりの宅建業者数」、「地価変動率」は「令和5年の地価変動率」を表します。

以下の記事では、全国7都市で一括査定サイトを利用する実験を行っていますが、茨城県龍ケ崎市ではイエウールの登録業者数はゼロでした(2022年の検証時点)。そこからも「不動産会社が少ないエリアでは査定できない可能性が高い」と推測できます。

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イエウールは国内でも規模の大きな不動産一括査定サイトですが、やはり地方では査定できないケースは多々あります。その場合、リガイドをはじめとした、地方に強い不動産一括査定サイトを併用するのがいいでしょう。

筆者も不動産会社の立場でリガイドを利用してきましたが、かなり僻地までしっかりカバーしている印象です。また筆者の場合は、農地や山林も査定対応していました。

不動産会社(宅建業者)が多いのは「地価が上がっている都道府県」

人口あたりの不動産会社数が多いのは、1位から順に、東京都、大阪府、京都府、沖縄県、福岡県の順です。

都道府県名宅建業者数人口宅建業者数地価変動率
東京都26396140475941.883
大阪府1388888376851.5721.3
京都府334225780871.2950.5
沖縄県185714674801.2664.9
福岡県576251352141.1223.3

※「宅建業者数」は「人口1万人あたりの宅建業者数」、「地価変動率」は「令和5年の地価変動率」を表します。

これらはすべて、令和5年の地価公示で、地価が上昇しているエリアです。

そこで、東京都を中心とする首都圏、大阪府と京都府(近畿の中心エリア)に加えて兵庫県の神戸市、沖縄県、福岡県、愛知県(の中心部)などでは、複数の不動産会社から価格査定を出してもらえる可能性が高いと期待できます。

筆者は「イエウールは都市部に強い」と考えているので、こういったエリアでは十分利用価値があるでしょう。

ただし、都市部で本当におすすめしたいのは、正確な価格査定が出せる大手不動産会社です。特に三井不動産リアルティ(三井のリハウス)は、業界でほぼ唯一「正確な価格査定」を公式サイトで打ち出しています。

筆者なら、まず三井の査定書をとっておき、それを基準として不動産の売却戦略を考えます。

上記公式サイトでも、査定の正確さを大きく打ち出し、加えて「値引きせずに短期で売り切る」という点を訴求しています。

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「査定依頼を送ったのに連絡が来ない」理由

ここまでは「イエウールを使っても対応してくれる不動産会社がみつからなかった」というケースを解説してきました。

一方で「査定してくれる会社が見つかり、情報を送ったのに、何の連絡もない」という事もあります。

査定依頼1件当たり、1万円を超える情報料を支払っている不動産会社が、あえて査定書を送ってこない理由とは何でしょうか?

大まかに、以下のような理由が考えられます。

  1. 一括査定サイトとの提携をやめようと考えている会社だった
  2. 査定依頼者が本当の所有者でないなど、怪しい依頼だと思われた
  3. 繁忙期などで忙しすぎて手が回らない

すでに「一括査定サイトとの提携をやめよう」と決めている不動産会社の場合、モチベーションが低下していて査定してくれないことも十分あり得ます。また、賃貸と兼業している不動産仲介業者の場合、繁忙期には手が回らないことも考えられます。

イエウール等において「対応不動産会社が見つかったのに、査定が来ない」理由と対策方法について、より詳しい情報は以下の記事を参照してください。

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結論として、このようなケースでは、他の査定サイトを利用した方がいいでしょう。別の不動産会社に査定依頼を送れば、ちゃんと査定書を送ってくれる可能性が高いからです。

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イエウール以外の不動産一括査定サイト

イエウールを利用しても査定を出してもらえなかった場合、他の会社に価格査定を依頼するのが一般的な対応策でしょう。

問題は、どの査定サイトを利用するかです。

筆者は、都市部では大手不動産会社に査定依頼をするのがベストだと考えています。一方、地方では不動産一括査定サイトを活用して、有力な地元不動産会社を探すのが合理的です。

ここからは、ケースごとに不動産査定サイトを選ぶポイントを解説していきましょう。

都市部なら大手不動産会社に直接依頼すべき

不動産一括査定サイトを利用すると、6~10社が競って価格査定を出すことになります。そこで、手っ取り早く仲介契約(媒介契約)を獲得するために、実際より高い査定額を提示するケースが増えてしまいました。

その点、日本でトップ10にランクインするような大手不動産会社であれば、正確な価格査定を出してくれます。その理由は2つあります。

  1. コンプライアンス体制がしっかりしており不正確な査定額は出せない
  2. 精密な価格査定ができる査定システムを導入している

大手不動産会社の中でも、積極的に「正確な価格査定」を打ち出している、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)が第一候補です。

まず最初に三井の価格査定をとっておけば、ウソや間違いのない正確な不動産価格がわかります。それを元に、売却戦略を考えるようにしてください。

また、超大手ではなく準大手になりますが、小田急不動産など特色のある会社に査定してもらうのもひとつの手でしょう。

首都圏限定で、なおかつ小田急沿線に特化した不動産会社として、多くのデータを蓄積しているからです。

他にも、準大手クラスの不動産会社で「このエリアに特化している」というところが見つかれば、そういった会社も利用してみる価値があります。

独自調査で「地方に強い」とわかったリガイド

筆者の経験で、北海道、沖縄県、岡山県などで成績がよかったのがリガイドです。

リガイドはあまり派手に宣伝しておらず、一見すると実力がなさそうに見える不動産一括査定サイトですが、実際にはかなり優秀です。

筆者は沖縄県名護市に事務所を構え、不動産会社の立場でリガイドを利用してきました。送られてくる案件は多種多様で、かなりの僻地も含まれていましたが、すべて対応してきました。

また、以下の記事では全国7都市で実際の提携不動産会社数を調査し、発表しています。リガイドが優秀なことは、以下の記事でも確認できます。

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NTTデータグループが運営するHOME4U

都市部で安心して利用できる不動産一括査定サイトなら、HOME4Uでしょう。

NTTデータグループが運営している安心感もありますし、運営歴が最も長い査定サイトのひとつで、提携不動産会社数が多い点もメリットです。

HOME4Uは、提携不動産会社数が約2300社と多いことと、質が高いことも特長のひとつです。

日本のトップ10に入る超大手不動産会社こそ提携していませんが、住友林業ホームサービスや三井住友トラスト不動産、みずほ不動産販売などの準大手が多く提携しています。

都市部を中心に、準大手クラスに査定依頼ができるという点も、HOME4Uの魅力です。

農地なども査定できるリビンマッチ

他の不動産一括査定サイトでは、農地や倉庫などの変わった物件は査定不可となるケースもあります。

その点、リビンマッチは不動産査定の他にも、土地活用、任意売却、不動産買取などさまざまなサービスを用意しており、守備範囲が広いのが特徴です。

筆者は不動産会社の立場で長年リビンマッチを利用してきましたが、農地や山林の価格査定を多くお受けし、査定書を提供してきました。

他の査定サイトで査定不可となった場合、リビンマッチで査定依頼を行ってみることをおすすめします。

確実に売りたい場合は「どんな不動産も買い取る」サービス

ここまで紹介したような手を打ってみて、それでも査定額が出ない場合、かなり売却が難しい物件の可能性があります。

  • 地方で人口が少ないエリアに立地
  • 駅から遠く公共交通機関がない
  • 市街化調整区域に立地している
  • 接道がなく再建築できない

上記のようなケースは、普通の不動産会社はなかなか取り扱ってくれません。しかし、訳アリ物件の買取サービスなら、こういった物件でも取り扱い可能です。

筆者が以前取材させてもらった「訳アリ物件買取Pro(株式会社AlbaLink)」の場合は「物件の性質上、相談だけで終わることもありますよ」とのことでした。

ひとまず相談してみると「もっと高く売る方法がある」「通常の不動産売却ルートでも売れるでしょう」といったアドバイスもしてくれるそうです。

また、売却困難な物件の買取サービスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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イエウールについてのQ&A

最後に、イエウールなどの不動産一括査定サイトを利用する際、覚えておきたいノウハウをQ&A形式にまとめました。

主として筆者の経験に基づく、確実な情報を掲載しています。

イエウールの査定額は信用できる?

筆者が大阪府と栃木県で行った実験では、イエウールなどの不動産一括査定サイトの価格査定書のうち、4分の1~2分の1が信用できるものだったと判断しています。

大阪府阪南市 1/2が信用できる査定書
栃木県宇都宮市 1/4が信用できる査定書

このように、ある程度信用できる価格査定が含まれていることは間違いありません。

問題は、どの査定額が正しく、どの査定額が不正確かがわかりにくいという点です。判断が難しい場合、1番高い査定額は信用しない方がいいでしょう。たいていの場合、中くらいの査定額が正しい相場を反映しているケースが多いからです。

こういった価格査定の裏事情については、以下の記事で詳しく解説しています。

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イエウールと他の不動産一括査定サイトの違いは?

不動産一括査定サイトのしくみ
不動産一括査定サイトのしくみ

イエウールも、その他の不動産一括査定サイトも仕組みは全く同じです。どの不動産一括査定サイトも、ユーザーが入力した査定依頼情報を複数の不動産会社に転送することで利益を得ています。

ただ、仕組みそのものには大きな違いがないのですが、それでも結果に差が出ることがあります。

結局は、提携不動産会社が価格査定書を出してくれるため、その不動産会社の実力に左右される面が大きいからです。

もし査定結果に納得がいかない場合は、複数の不動産一括査定サイトを試してみて、セカンドオピニオンを聞く必要もあるでしょう。

以下の記事には不動産一括査定サイトのリストも掲載しているので、複数サイトを利用する際の参考になります。

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イエウールを利用するとしつこい電話営業がある?

筆者の経験上、地方エリアではしつこい電話などの営業行為を心配する必要性は低いと考えています。

なぜなら、地方エリアでは、不動産会社間の競争が激しくないからです。

一方、都市部では激しい営業合戦が繰り広げられるため、しつこい電話営業が行われる可能性も否定できません。

あまりにしつこい場合は、宅建協会全日不動産の相談窓口に連絡してみるという手もあります。また、どうしてもしつこい営業を避けたい場合、独自の「お断りサービス」を用意しているイエイを使ってみるのもいいでしょう。

イエイでは、他の一括査定サイトを経由した不動産会社の営業にも「お断り」をしてくれます。そこで、他の査定サイトと併用しておくという手もあります。

査定依頼時に手元に用意しておく資料は?

どの不動産一括査定サイトも、入力項目は類似しています。以下の資料のどれかを用意しておくと、スムーズに入力できるはずです。

  • 購入時の不動産売買契約書
  • 固定資産税納税通知書(物件の所在地や面積が書かれています)
  • 不動産の登記簿

ただし、うろ覚えで入力しても、住所さえ合っていればなんとかなります。ちゃんとした不動産業者であれば、住所と所有者の名前さえ確認できれば、あとはさまざまな資料から物件を特定できるからです。

とくに、土地面積や地目、建物面積などは不正確でも問題ありません。

逆に「査定依頼の内容が不正確だから査定できない」という不動産業者は、調査能力に疑問符が付くため、避けた方が無難でしょう。

まとめ「イエウールで査定できない場合の対処法」

イエウールで査定できない理由は、大きく2つ考えられます。

  1. 地方エリアで対応できる不動産会社がなかった
  2. 査定依頼の内容か不動産会社側に何らかの問題があった

このうち②のケースは、以下の記事で解説しています。

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一方で、①の「対応できる不動産会社がない」ケースでは、他の不動産一括査定サイトを利用する必要があります。

その場合は、地方に強いリガイドをためしてみてください。

リガイドでも対応不動産会社が見つからない場合は、その他の一括査定サイトを順にためしてみるしかないでしょう。以下の記事を参照し、その他の不動産一括査定サイトを利用してみてください。

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それでも対応不動産会社が見つからない場合、最終手段として、訳あり物件買取Proに相談してみるという手があります。

上記サイトであれば、相談ベースでの問い合わせもOKです。

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また、ファイナンシャルプランナー有資格者も在籍しており、税制についての疑問にもお答えしています。

参考文献

本記事の制作に当たっては、以下の参考文献を参照し、データを引用しています。

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