イエウールで、まったく売る気がない不動産の査定のみ依頼することは絶対にやめてください。
そもそも、イエウールなどの不動産一括査定サイトは、不動産を売却したい人向けのサービスで、まったく売る気がない人向けのサービスではありません。
したがって、売る気がない不動産の査定依頼をしたら、不動産会社から「売却希望の客だ」と理解されて、しつこく営業されたとしても文句は言えません。
キャンセルする場合
その代わりに、自分で概算査定額を出す方法もありますし、マンションなら匿名のAI査定も利用できます。この記事で解説していますので、ぜひご参照ください。
この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が作成しました。
イエウールとは「不動産会社の集客ツール」
イエウールは不動産会社が仲介を取るために作られたサービスです。ユーザーがイエウールから査定依頼をすると、査定依頼情報を受け取った不動産会社はイエウールに対してお金を支払います。そのため、ユーザーは無料で査定依頼ができます。
不動産会社は支払ったお金を取り戻すため、査定情報を受け取るとすぐに営業をスタートします。
ここからは、イエウールだけでなくすべての不動産一括査定に共通する「しくみ」を解説していきます。
一括査定を利用すると不動産屋は1万5000円前後課金される
一般に、不動産の価格査定サイトから査定依頼情報が送られてくると、不動産会社はかなりの金額を査定サイトの運営会社に対して支払います。
筆者は経験から、情報1件当たり、1万5000円から2万円くらいが多いのではないかと推測しています。
あなたが査定サイトに軽い気持ちで査定依頼情報を入力すると、複数の不動産会社が1万5000から2万円程度のお金を支払うことになるのです。
この点を理解して、売るつもりがない不動産の査定依頼は避けるようにしましょう。
現在、イエウールが不動産会社に課金している金額は正確にはわかりません。ただし、一般的に不動産一括査定サイトが不動産会社に課金する金額は、情報1件あたり1万5000円程度のケースが多いと考えられます。
冷やかしでも不動産会社はお金を取られる場合が多い
一括査定サイトは法律にも詳しく、契約条項をうまく作成しているので、不動産会社は簡単に課金を免除してもらえません。
以下は「jp number電話番号検索」に書き込まれた、不動産屋と思われる人からの書き込みですが、このように考えている会社もあるということです。
情報がきただけで弊社は17,000円という高額な金額が請求されます。全く売る気のないお客でも課金対象です。また半年という縛りがあり解約もできません。まさに悪徳というほかありません。
jp number電話番号検索
このように冷やかしに近いユーザーからの査定依頼でも、不動産会社はなかなか課金を除外してもらうことができません。
このような状況で、良心的な不動産会社ほど対応に苦慮している現実があります。
不動産コンサルは「強力な電話営業の手法」を指導
不動産査定サイトに圧の強い営業が多いのは、不動産コンサルが「一括査定の査定依頼が来たら、3分以内に電話をかけろ」と指導しているからです。
営業力を重視する不動産会社では、机上査定の依頼でもすぐに電話をし、とにかく全力でアポを取りに来ます。
短期間に一括査定サイトからの媒介受託率を改善|梶本のコンサル
一括査定の依頼時には、机上査定か訪問査定かを選ぶ項目がありますが、どちらを選んでも訪問して営業する会社もありますので、ユーザーとしてはこの点にも注意が必要です。
また、イエウールの場合机上査定か訪問査定かの選択肢がありませんので、気軽に査定依頼をした場合、訪問されても文句を言うことはできません。しつこい営業が来ても、それは自己責任だと考えておくべきでしょう。
不動産一括査定を「査定のみで使うのはトラブルのもと」
不動産屋をタダで働かせようとすれば、どこかに無理が生じることは当然です。
そう考えると、不動産を売却する気がないのに、イエウールを査定のみで使うのは避けた方が無難です。
不要に圧の強い営業をかけず、丁寧に物件調査し、しっかりとした価格査定書を作って送付する不動産会社にとって、それは営業妨害に近い行為です。
結局、査定依頼が来たら3分以内に電話をして圧の強い営業を仕掛ける会社だけが残っていくのかもしれません。
イエウールなどの不動産一括査定サイトに売るつもりのない不動産の査定のみを依頼するのは、トラブルにも発展しかねない行為です。
必ずしも売るわけでなく「値段によっては売却を検討している」ということであれば不動産会社も納得するでしょう。
どうしても値段だけ知りたくなったら自分で簡易査定も可能
どうしても自分の不動産の値段だけが知りたい、隣の空き地の値段が知りたいという場合は、自分で概算査定をしてみてください。
以下の記事で、簡単に査定できるExcelの査定フォームを公開しています。概算査定なのである程度の誤差はありますが、不動産一括査定サイトを利用しても価格のばらつきがあることを考えると、自己査定でも一定の目安になるはずです。
ただし不動産の本格的な価格査定は意外と難しい
不動産屋をやっていると、たまに「ちゃちゃっと査定だけやってよ」と頼まれることがあります。しかし、不動産の価格査定はそれほど簡単ではなく、真面目にやろうとすると1件あたり1日かかってしまうこともあります。
以下の記事でも説明していますが、不動産の価格に関連する要因はたくさんあり、複雑に影響します。そのため、簡易査定(机上査定)であっても現地を見に行く必要があるのです。
上記記事の後半で、土地価格に影響する13の要因を解説していますが、実際にはその何倍もの価格変動要因が存在します。
たとえば地型が整形地か旗竿地か、道路付けが一方道路か角地かという違いだけでも、土地価格が1割くらい変わってしまう事があります。そう考えると、「現地を確認することなく、会社印と自分のハンコを押した査定書は出せない」というのが本音です。
本当に正確な価格査定が必要な場合は大手不動産会社に依頼
本当に正確な価格査定を取りたい場合は、大手不動産会社に査定依頼をするのが確実です。大手はコンプライアンス的にいい加減な査定書は出せませんし、だからこそ正確な査定ができる価格査定ソフトを導入しているからです。
また、以下の記事では三井のリハウスの査定がなぜ正確なのかについて解説しています。
やたらと高い査定額はだれでも出せますから、そういうものに喜ぶのは間違いです。一方で、正確な査定は、しっかりとした査定システムを導入している会社にしか出せません。
不正確な査定をたくさんもらうよりも、確実な査定を1つ出してもらうほうが役に立ちます。
三井のリハウス|公式サイト
上記の公式サイトでも、三井不動産リアルティは「正確な査定」を明確に打ち出しています。
イエウールとはどのようなサービスか?
筆者の記憶では、2010年代前半に最も勢いがあった不動産一括査定サイトはイエイでした。イエウールはイエイを後追いする形で登場し、急成長を遂げていきます。
その後、数年間で情勢が逆転し、イエウールがメジャーな不動産査定サイトとして定着しました。
当初、イエウールは不動産会社にとって非常に使いやすいサービスを提供し、課金除外に関しても柔軟に対応していました。当初は、イエイとの違いを強調しながらシェアを伸ばす戦略を取っていたのです。
しかしシェアを獲得した後は、不動産会社にとって契約を解除しにくくなり、また情報課金の金額も上がっていきました。
もちろん、企業の使命は利益を追求することですから、これに関して異論はありません。しかし、利用する上で背景として、こういった点を知っておいても良いでしょう。
筆者が経験した査定のみ依頼してくる「冷やかし客」
イエウールに限らず、不動産一括査定サイトは気軽に申し込めるよう、じょうずに広告宣伝をしています。
その結果、かなりの数の冷やかし客が査定依頼を送ってきます。
筆者が経験した事例だけでも、以下のような査定依頼があげられます。
- 親の一戸建ての「土地だけを売りたい」という子供からの査定依頼
- 親の一戸建てを「親に知られずに売りたい」という未成年者からの査定依頼
- 「隣の家の値段をなんとなく知りたかった」という査定依頼
- 気になる空き地があり「売り出していないが買ったらいくらか知りたかった」という査定依頼
正直、査定のみさせようとする人は不動産会社にとって業務の妨げにしかなりません。しかも多くの場合、不動産一括査定サイトに情報料としてお金を取られるのが実情です。
もし「単に値段を知りたい」「売る気がまったくない」という場合は、マンション限定ですが、以下のサービスがおすすめです。
中古マンション簡易査定シミュレーション|マンションナビ
上記サイトであれば、マンション名を入れるだけで概算査定を出してくれます。個人情報は一切不要です。
概算査定でなく、正確な査定額が知りたい場合に、イエウールなどの一括査定サイトを利用してください。
イエウール|公式サイト
ユーザーから見たイエウールのメリット・デメリット
小さな不動産会社を経営し、宅建士として不動産一括査定サイトと付き合ってきた筆者の感覚では、ユーザーにメリットがある査定サイトの使い方ははっきりしています。大手が対応していない地方エリアで、なるべくいい不動産会社を探すために使うのがベストな方法です。詳しく説明していきましょう。
イエウールのデメリット
筆者が考えるイエウールのデメリットは、以下の2点です。
- 超大手不動産会社は登録していない
- 価格査定が不正確でばらつきが多い
イエウールだけではありませんが、都市部で超大手不動産会社に査定依頼ができないのが一括査定のデメリットです。なぜなら、大手不動産会社が使っている査定システムは高機能で正確な査定額を出せるからです。
それに対して、中小の不動産会社では査定システムそのものを使用しておらず、手書きの査定書を送ってくるところもあります。当社の実験でも判明していますが、価格査定が不正確で、ばらつきが多いという点が気になります。
以下の記事を読んでいただければわかりますが、筆者があらかじめ価格査定をした上で査定依頼を出してみたところ、本来の査定額とは大きく異なる査定を出してきた会社がかなり多いことがわかります。
AIを活用したHowMa一括査定の取り組み
旧来の不動産一括査定サイトは、ユーザーの査定依頼情報を6~10社の不動産会社に送信するという機能しかありませんでした。
そこに疑問を持ち「ユーザーがより迷わずに利用できる機能をもたせたい」と開発されたのがHowMa一括査定です。
HowMa一括査定|公式サイト
HowMa一括査定を利用すると、AIがその場で概算査定額を出してくれます。ユーザーはその価格を確認した上で、複数不動産会社が査定額を出す「コラボ査定」を利用します。
あらかじめ概算査定が分かっているメリットは大きく、ユーザーからは「AIのデータと不動産のプロの知見をミックスした、現実感のある査定を出してもらえた」と評価されています。詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせて読んでみてください。
イエウールのメリット
イエウールなど従来型不動産一括査定サイトにもメリットはあります。筆者が考えるのは以下の2つのポイントです。
- 大手が対応しない地方部では使う価値あり
- 大手がやりたがらない市街化調整区域などの物件に強み
筆者は「不動産一括査定サイトを使うなら、地方エリアが良い」と考えています。
都市部では大手不動産会社が対応しているので、わざわざ中小の不動産会社に査定を出してもらう意味がありません。それに対して地方では、大手の不動産会社が対応していないことが多く、対応していたとしてもかなりモチベーションが低くなります。
しかも、地方には「市街化調整区域」「農地」といった法令上の制限もあり、都会に慣れた大手不動産会社には荷が重いという問題もあります。
そこで、田舎では現地の法令に詳しい地元不動産会社の中から、信頼できる業者を探す必要があります。そこで、田舎の土地ではイエウールの利用価値が高いといえます。
イエウール|公式サイト
ただし、エリアによっては対応できる不動産会社が見つからないこともあります。その場合はリガイドを試してみてください。筆者の経験ですが、リガイドはかなり地方に強い傾向があります。
Re-Guide(リガイド)|公式サイト
実は、筆者は全国7都市で複数の不動産一括査定サイトに入力テストを行い「本当に実力があるのはどこか?」を確認しました。その結果、以外にも広告宣伝が地味なリガイドが優秀な成績を収めたのです。
また、対応してくれた不動産会社の中から優秀な業者を選ぶ方法は、以下の記事で解説しています。
まとめ「イエウールは査定のみで使わないのが無難」
ここまで見てきたように、イエウールなどの不動産一括査定サイトは以下のような特徴をもつサービスです。
- 不動産会社の集客ツール
- 不動産会社がお金を払うことでユーザーは無料となる
- 売る気がない物件の査定依頼はしてほしくない
現在でも、不動産会社にはITリテラシーが低いところが多く、自前のオウンドメディアを作って集客できないところが大半です。
そういった会社がイエウールなどの不動産一括査定サイトにお金を払って、お客さんを紹介してもらっているという背景があります。
そのため、売る気がない不動産の査定のみを出させる行為は、不動産会社の営業を阻害するだけで、不動産会社の立場で言えば意味なくタダ働きをさせられているということです。
イエウールなどの不動産一括査定は、本当に不動産を売る時にだけ使ってください。
さらに言えば、都市部なら、わざわざITリテラシーの低い不動産会社に依頼する必要はなく、DXが進んでいる大手不動産会社に査定を依頼してください。
おすすめをあげるなら、正確な査定に力を入れている三井のリハウスがいいでしょう。
三井のリハウス|公式サイト
沖縄県内なら
沖縄県内の場合は、トーマ不動産が正確な価格査定をお出しします。AIを活用した不動産価格査定システムを使用し、精密な価格査定をお出しした上で、納得のいく売却方針のご提案も行います。
価格査定のご依頼|トーマ不動産
その他地方エリアなら
それ以外の地方エリアでは、不動産一括査定を利用することで、地雷業者を避けられる可能性があります。筆者は、地方に強いイエウールやリガイドをおすすめします。
イエウール|公式サイト
Re-Guide(リガイド)|公式サイト