不動産一括査定サイトは、ユーザーが無料で利用できる便利なサービスですが、裏側では不動産会社がサイト運営元に対して料金を支払っています。
不動産会社は無料一括査定サイトに支払ったお金を取り返すために、あの手この手で営業を仕掛けてくるでしょう
そしてそれが、トラブルの原因になることがあります。
この記事では、不動産無料査定の仕組みを理解し、トラブルにあいにくい利用方法を紹介していきます。
この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が制作しました。
不動産一括査定のデメリット
不動産の無料一括査定は、複数の不動産会社に無料で価格査定を依頼できる便利なサービスです。
しかし、その反面、いくつかの重大なデメリットも存在します。ここでは、そのデメリットについて詳しく解説します。
なぜ無料の不動産一括査定では査定額が不正確なのか?
不動産一括査定の最大のデメリットは、以下の2つです。
①不動産の価格査定が不正確である場合が多い
不動産一括査定では、査定額が大幅に間違っていることがあります。不動産一括査定サイトには、大手不動産会社が登録していないことが多く、小さな不動産会社の価格設定は安定していない傾向があるからです。
正確な査定額を出せる会社もありますが、そうでない会社も少なくありません。
②不動産会社があえて事実と異なる査定額を提示する
不動産一括査定サイト内では不動産会社同士の競争が激しいため、とりあえず高い査定額を出して仲介を取ろうとする不動産会社があります。
高い査定額を提示すれば、意外と簡単に仲介が取れてしまうため、無料の不動産一括査定では価格査定が不正確になりやすいのです。
無料査定がなぜ無料なのかというカラクリ
ユーザーが無料一括査定に情報を入力して送信すると、多くの場合、6社程度の不動産会社に転送されます。
その際、各不動産会社は概ね1万5000円前後の料金を一括査定サイトの運営元に支払います。
仮に6社に査定依頼を送信した場合、その合計は9万円です。つまり、ユーザーは自身の個人情報を9万円で売っているとも考えられます。
このように、不動産一括査定のビジネスモデルは、ユーザーのためというよりも、運営元の会社が不動産会社から料金を徴収するために存在していると言えます。
不動産一括査定の利用中にありがちなトラブル
この章では、不動産の無料一括査定を利用する際に発生しやすいトラブルを紹介します。既に解説した、不動産無料一括査定のしくみそのものに原因があるトラブルが大半です。
査定書がいい加減で根拠がわからない
筆者は研究のために、自社保有のマンションを不動産無料一括査定で売却してみました。その結果、あまりにもお粗末な査定書を送ってくる会社が存在することに驚かされました。A4用紙1枚に、何の根拠もなく金額だけが記載されていたのです。
また、栃木ではショートメールで金額だけを送ってきた不動産業者がありました。
もちろん、信頼性の高い査定書を送ってくれる会社もありますが、信頼できない査定書が混じっているとどちらが正しいか判断に悩むはずです。
このような不動産一括査定の実態は、以下のリンク先で読むことができます。
上記の記事では、筆者が大阪府と栃木県で実際に不動産一括査定を使った際のレビューを掲載しています。
アポなしでいきなり訪問された
これは筆者が不動産会社の立場で何度も目にした風景です。アポなしと思われるタイミングで、インターホンを押しているライバル会社の営業マンを見かけることはよくありました。
お客さんからも「アポなしの訪問があって困る」という話はよく聞きます。
いきなり6社に査定依頼をかけるわけですから、このような圧の高い営業をかけてくる業者が混じることは避けられません。都市部では不動産会社の競争が激しいですから、特に圧が強い営業を行う傾向があります。
査定結果が送られてこない
これも時々聞く話ですが、不動産一括査定で査定依頼をしても、査定書が送られてこない事例があります。
その理由はいろいろ考えられますが、「イエウールやリビンマッチなどの不動産一括査定に登録してみたものの、思うように仲介が取れずやる気がなくなっている」という可能性もあります。
不動産一括査定では、携帯電話の1年しばりのように、査定サイトをやめたくてもやめられない期間が存在します。そういう間の悪いタイミングで届いた査定依頼には、対応しない不動産会社もあります。
異常に高い査定額にだまされて物件が売れない
不動産一括査定の査定内容については必ずしも信用できないと述べました。
筆者が実際に不動産一括査定サイトを利用して、大阪府と栃木県で価格査定を取り寄せてみたところ、いずれの場所でも本来の査定額の2倍近い価格を出してくる会社が混じっていました。
予備知識のない一般の人がこの査定結果を見たら、「家がこんなに高く売れるなら、お宅に仲介を任せたい」と言ってしまうかもしれません。
しかし、当然ながら物件は売れません。長い間物件が売れず、不動産会社は「今は時期が悪かった」など様々な理由を述べて値下げを迫ってきます。
結局、値下げしないと売れないという残念な事になってしまいます。
不動産一括査定サイトの査定額が高すぎる問題については、以下のリンク先で解説しています。
仲介契約後にありがちなトラブルとリスク回避
不動産売却の際、仲介契約を結んだ後に発生しやすいトラブルについて、その対策方法を含めて解説します。
トラブルはむしろ仲介契約(媒介契約)にを結んだ後で起きやすいので、この章で紹介するトラブル事例の方が危険かもしれません。
仲介契約を打ち切ったら費用を請求された
不動産を売却しようとしたものの、なかなか売却できないなどの理由で仲介契約を打ち切り、売却を取りやめることもあります。
その際、不動産会社から広告費や事務手数料などの費用を請求されたという事例も報告されています。しかし、このような費用に関しては支払う必要はありませんので、毅然と断ってください。
どうしても支払いを迫ってくる不動産会社の場合は、以下のような相談窓口に相談することをおすすめします。
無料相談|公益社団法人宅地建物取引業協会
全日不動産相談センターのご案内|公益社団法人全日不動産協会
仲介契約の自動更新は法律違反
不動産の仲介契約は、法律上「媒介契約」と呼ばれます。媒介契約の中でも専任媒介や専属専任媒介契約は、契約期間が3か月を超えてはいけないと法律で定められており、自動更新も禁止されています。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
契約期間の定め | なし | 3か月以内 | 3か月以内 |
特徴 | 複数の不動産会社に媒介を依頼できる | 1社だけの不動産会社に媒介を依頼する | 1社だけの不動産会社に媒介を依頼する |
備考 | 契約期間の定めはないが3か月が一般的 | 一定期間内に業務状況を報告する義務あり | 自己発見取引も禁止される |
しかし、中には「自動更新とします」と言ってくる不動産会社があります(案外たくさん存在します)。これは法律違反ですので、その不動産会社が都道府県知事免許の場合は、各都道府県庁の建築指導課などに報告してください。
宅地建物取引業免許(知事免許)に関する窓口一覧|国土交通省
売買契約を解除したのに仲介手数料を請求された
一旦売買契約を結び、その後手付金を放棄したり手付倍返しなどによって売買契約を解除することがあります。これは法律や契約条項に沿った手続きであり、全く問題ありません。
しかしこの時、仲介手数料を請求されることがあります。
実は、法律上は一旦契約が成立した時点で、不動産会社には仲介手数料を請求する権利が発生するとされます。このため、請求されたら支払わざるを得ないでしょう。
ちなみに筆者は、こういったケースでは仲介手数料を請求していませんでした。良心的な不動産会社は、請求しない傾向があります。
仲介手数料は法律で決まっていると言われた
不動産会社が「仲介手数料は成約額の3% + 6万円と法律で決まっている」と説明することがありますが、これは事実と異なります。
実際にはこれは法律で定められた上限額なので、交渉の余地があるかもしれません。
ただし、多くの不動産会社はこの上限額を内規としており、媒介契約書にもそう書いてあります。法律では決まっていませんが、契約書で決まっている場合、支払う義務があります。
仲介手数料以外に広告費や事務手数料を請求された
不動産会社が仲介手数料を受領した上で、広告費や事務手数料などの名目で追加の費用を請求してくることがあります。
しかし、これは法律に反しており、根拠のない請求なので、断っても問題ありません。
ただし、特別な広告を行う場合で、売主の許可等がある場合は、その広告費を別途支払う必要があります。
相場の半額での買取を強引にすすめられた
不動産を売り出したもののなかなか売れない場合、買取業者による買取を勧められることがあります。
しかし、こういった申し出は、慎重に検討してください。
悪徳不動産業者の中には、物件を意図的に売れないように隠しておき、困った売主から安く買い取るという手法を取る場合があります。
このような業者に引っかかると、適正な価格で不動産を売却できず、安価に買い叩かれることになりますので注意が必要です。
より多くのトラブル事例を掲載する公的機関等のサイト
ここに紹介した事例の多くは、国土交通省、不動産適正取引推進機構などが運営する公的なサイトで公開されています。時間があれば、以下のサイトを閲覧してみると、さらに多くの事例を読むことができます。
その他のトラブル事例や解決策についても、これらのサイトで確認することができます。
不動産一括査定サイトの選び方
この章では、不動産一括査定サイトの選び方を解説します。正確な査定額を知り、適正価格以上で不動産を売却するための参考にしてください。
都市部なら大手不動産会社が安心
不動産一括査定サイトを利用する目的は、正しい査定額を知り、適正な価格で不動産を売却することです。
比べてみるとわかりますが、小さな不動産会社よりも、大手不動産会社の方が正確な査定を出してくれます。そこで、まずは大手不動産会社の正確な価格査定を取り寄せることで、不動産売却を確実に進めていきましょう。
また、大手不動産会社は査定が正確なだけでなく、都市部の物件であれば短期間で売却する力を持っています。
なかでも、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)は業界で唯一、価格査定の正確さを前面に打ち出しています。
三井のリハウス|公式サイト
上記の公式サイトでも、正確な価格査定と、値引きせずに売り切る「価格乖離率の低さ」をうたっています。
地方の都市部などではHOME4U(NTTデータグループ)
地方都市では三井のリハウスなどの超大手不動産会社が対応していないことがあります。その場合は、準大手不動産会社が多数提携している、HOME4Uを試してみてください。
HOME4UはNTTデータグループが運営しており、また運営歴も長いため、不動産会社からの信頼が厚いのが特徴です。
HOME4U(ホームフォーユー)|公式サイト
HOME4Uには、住友林業ホームサービス、三井住友トラスト不動産、みずほ不動産販売など有名な会社が多く提携しています。こういった会社であれば、超大手不動産会社に迫る、正確な価格査定を出すことができます。
しつこい営業を避けたい場合は「イエイ」
実は、しつこい営業電話やアポなし訪問は、それほど多いわけではありません。筆者が実際に不動産一括査定サイトを利用してみたところ、地方(和歌山県寄りの大阪府下と栃木県)では、しつこい営業は一切ありませんでした。
田舎では、あまり圧の強い営業は多くないと考えていいでしょう。
ただし、都市部では違います。
不動産会社間の競争が激しい都心部や大阪市内、名古屋市内、福岡市内、那覇市内などでは、しつこい営業に悩まされる可能性があります。
そのため都市部で不動産一括査定を利用する場合、独自の「お断りサービス」が利用できる不動産一括査定「イエイ」が安心でしょう。万が一しつこい営業に悩まされた場合、ユーザーに代わって不動産会社に断りの連絡を入れてくれます。
イエイ|公式サイト
しかも、イエイに加盟していない不動産会社にもお断りの代行をしてくれる点がポイントです。「他の不動産一括査定を利用したが不安だ」という場合、イエイを併用しておくだけで、しつこい営業の心配がかなり少なくなります。
筆者が不動産屋の立場で利用したおすすめサイト
地方の場合、大手不動産会社はあまり対応していません。
例えば、栃木県宇都宮市で価格査定を依頼した時、大手不動産会社が見つからずに驚いたことがあります。
そこで、宇都宮市クラスの地方都市であっても、大手ではなく不動産一括査定を利用することになります。
地方で不動産査定サイトを利用する場合、筆者のお勧めは「リガイド」です。筆者が不動産会社の立場で利用して満足度が高かったサービスで、ユーザーにとっても納得のいくサービスだと考えます。
Re-Guide(リガイド)|公式サイト
また、沖縄県の場合はトーマ不動産が対応可能です。トーマ不動産ではAIを活用した精密な不動産価格査定システムを採用し、しっかりと根拠を示した査定書を作成しています。
匿名の不動産査定サイトは役に立つか?
匿名の不動産価格査定サービスも登場していますが、不動産の所在地を入力する以上、実際には匿名ではありません。
登記簿やその他の書類から、簡単に所有者を特定できるからです。
ただし、マンションの場合は比較的査定が出しやすく、AIがかなり正確な判定をします。AIが回答し、不動産会社に個人情報を送らなくて済むなら、完全に匿名の査定が可能です。例えば、「マンションナビ」の相場表示機能は正確で、完全匿名でも十分に役立ちます。
マンションナビ|エリア選択で相場表示可能
マンションナビで正式に査定依頼をする場合は、以下のリンク先を利用してください。
マンションナビ|公式サイト
概算査定なら自分で計算することも可能
不動産の無料一括査定サイトを利用し、しつこく営業されるよりも、自分で概算の価格査定をした方が良い場合もあります。
またその場合、以下の記事でダウンロードできる不動産の土地価格査定フォームやExcelを利用した土地価格査定フォームがおすすめです。
これは、インターネット普及前に実際に不動産業者が計算していたフォーマットをExcelに落とし込んだものです。原始的な査定方法ですが、現在の査定ソフトと考え方は共通しています。一度使ってみると、価格査定の考え方が理解でき、参考になるはずです。
信頼できる不動産会社を探すためにできること
不動産を売却する際、まず行うべきなのは「信頼できる不動産会社を探すこと」です。
そこでこの章では、不動産会社を選ぶ時に気を付けるべきポイントや、トラブルを避けるための方法を解説します。
無駄に高すぎる価格査定はトラブルの元
他の不動産会社の価格査定よりもはるかに高い査定額を提示してきた場合、その不動産会社を疑ってください。高すぎる価格査定書は簡単に作成できますが、その値段で売ることは誰にもできません。
筆者であれば、例えば6社から査定書をもらい、そのボリュームゾーンこそが相場の金額だと考えます。相場を把握し、適正な査定額を提示する不動産会社を選びましょう。
価格査定は必ず「根拠」を尋ねる
非常に高い査定額を出してきた不動産会社があった場合、その根拠を尋ねることが重要です。どのような取引事例を参考にしたか、なぜその事例を選んだのか、取引事例と査定したい不動産を比較すべき理由を確認してください。
明快な答えが得られない場合、その不動産会社との契約は避けるべきです。
自分でも相場の価格を調べておく
不動産の無料一括査定を利用する前に、自分でも相場の価格を把握しておく必要があります。不動産一括査定の査定額にはばらつきがあるため、正しい査定額を判定するのが難しくなります。
ポータルサイトを見て、周りの売り出し物件の価格をチェックするだけでも役立ちます。さらに詳しく調べたい場合は、土地価格の出し方を把握しておくと良いでしょう。
不動産会社の口コミを確認してトラブルを回避
不動産会社の口コミは、自作自演やクレーマーからの誹謗中傷があるため信用できません。しかし、それでも口コミを見ることは重要です。
筆者は、社長に関するクレームがあるかないかだけをチェックしています。社長がダメな会社は絶対ダメなので、そういう会社を避けるだけでもリスクヘッジになります。
また、不動産営業マンが信頼できるかどうかを確認するために、連絡をしてきた営業マンの名前でFacebookなどを検索しておくといいでしょう。もしアカウントが見つかれば、その人の普段の様子がわかります。
まとめ「6つの不確かな査定より1つの正確な査定」
不動産売却における無料査定は、複数の会社に査定依頼ができる便利なサービスですが、信頼できない不動産業者も混じっており、価格査定の精度も高くありません。
- ユーザーは無料だが不動産会社が決して安くないお金を支払っている
- 必要以上に競争が激化し「とりあえず高めの査定額を出す」傾向がある
不動産の無料一括査定を利用する際に意識したいのは、不動産会社が情報1件あたり、おおよそ1万5000円の金額を支払っていることです。
各不動産会社はそのお金を取り返すために、懸命に営業する必要があります。
中には、不動産にくわしくないユーザーをひきつけるためだけに、実際より高い査定額を出してくる不動産会社もあります。
そこで、都市部であれば、まずは正確な価格査定を出す大手不動産会社に相談してください。どの会社も、査定は無料で出してくれます。
とくに、業界でほぼ唯一「査定の正確さ」を打ち出している三井不動産リアルティ(三井のリハウス)なら、信頼できる価格査定を確実に送付してくれます。
三井のリハウス|公式サイト
上記の公式サイトでも、正確な価格査定と、価格乖離率の低さを大きく打ち出しています。
一方、地方では大手不動産会社は対応していませんから、不動産無料査定の中でも信頼できるサービスを選んで、査定依頼をかけてください。
筆者は地方都市ならHOME4U、さらに田舎にいくとリガイドがよいと考えています。
HOME4U(ホームフォーユー)|公式サイト
HOME4UはNTTデータグループが運営しており、みずほ不動産販売や三井住友トラスト不動産などの準大手不動産会社が多く提携しています。
Re-Guide(リガイド)|公式サイト
リガイドは筆者も不動産会社として提携していましたが、地方に強く、相当な僻地でも査定できる場合があります。
また、沖縄県内であればトーマ不動産が正確な価格査定をお出ししています。
トーマ不動産ではAIを活用した価格査定システムを導入し、根拠を明示した価格査定書をお送りします。