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【宅建士解説】古い家を売る7つの方法と税金面の注意点

「古い家」と一口に言っても、その状態はさまざまです。物理的耐用年数を経過して今にも壊れそうな家から、税務上の耐用年数を過ぎただけでまだ十分に住み続けられる物件まで、多種多様です。

また、立地も都市部から過疎地まで実に様々です。

この記事では、古い家をいくつかのタイプに分類し、それぞれの危険性や対策方法について考えていきます。

レベル状態説明
レベル1法定耐用年数を超過税務上ほぼ無価値だがまだ住める
レベル2経済的耐用年数超過修理すると過分に費用がかかる
レベル3物理的耐用年数超過今にも壊れそうな状態

例えば、まだ住めそうな都市部の住宅であれば、大手不動産会社に仲介を依頼して、売却するのが最も有利でしょう。

一方、今にも壊れそうな田舎の一戸建ての場合、売却には時間と労力がかかることがあります。筆者も大阪府の郊外、海のそばにある非常に古い木造住宅を手放した経験があり、その際の体験談を交えながら解説していきます。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が制作しました。

「古い家」は3つのレベルに分けて検討するのが正解

この記事では、「古い家」を以下の3つのレベルに分け、それぞれの売却方法や注意点を解説します。主観的に古いと判断するだけでなく、具体的な状態を把握し、最適な対策を考えましょう。

レベル1:法定耐用年数を経過した「やや古い家」

法定耐用年数とは、税務上定められた建物の耐用年数のことです。この年数を過ぎると、税務上では建物の価値が無いものとして扱われます。

一部を抜き出すと、以下のように定められています。

構造法定耐用年数
木造22年
鉄筋コンクリート造47年
鉄骨造19〜34年

しかし、木造住宅でも22年経過したからといってすぐに壊れるわけではなく、通常は十分に居住可能です。

このような「やや古い家」はレベル1に分類しました。

レベル1の家であれば、一般の不動産市場での売却が可能です。特に都市部であれば不動産の需要が活発なので、ごく普通の流通に乗せて販売することができます。

レベル2:経済的耐用年数を経過した「かなり古い家」

経済的耐用年数とは、実質的な価値がゼロになるまでの年数を指します。例えば、リフォームや補強をして住み続ける場合、不当に高いコストがかかる場合は、建て替えや買い替えの方が合理的です。

こういった状態の家は、既に経済的耐用年数が過ぎていると考えられます。

経済的耐用年数の定義には諸説あり、この記事では上記の考え方を採用しています。「古い家を売却すべきかどうか」といった点を考える時に、ひとつの目安となるからです。

レベル3:物理的耐用年数を経過した「非常に古い家」

物理的耐用年数とは、建物が物理的に使用できなくなるまでの年数のことです。例えば、構造上崩壊の危険がある、屋根や柱が崩れて住宅としての機能を果たさない場合などが該当します。

物理的耐用年数が過ぎた「非常に古い家」は、崩落などによる第三者への危害が懸念されるため、特に注意が必要です。


このように、古い家を売る際は、その家の状態に応じた適切な対応が求められます。各レベルに応じた対策を講じることで、リスクを最小限に抑えながら売却を進めることができます。

古い家を売る7つの具体的な方法

ここでは、住宅の古さのレベル別に最適な売却方法を検討していきます。古い家といっても千差万別なので、ご自身の家がどの状態に該当するのかを考えながら、対策を考えましょう。

都市部のレベル1物件ならそのまま売却でOK

法定耐用年数を過ぎただけのレベル1の物件であれば、通常の不動産流通に乗せて売却することがほとんどです。特に都市部では不動産の需要が高いため、法定耐用年数を過ぎた程度の不動産であれば、仲介で通常のルートに乗せて売却することが可能です。

まずは、正確な価格査定が出せる大手不動産会社に依頼しましょう。筆者は、不動産会社の中でほぼ唯一、価格査定の正確さを公式サイトで大きく打ち出している三井不動産リアルティ(三井のリハウス)をお勧めします。

リハウスの価格査定は信頼性が高いため、まずは査定を依頼して、いくらぐらいの価値があるのかを確認するといいでしょう。

レベル1物件の「不動産買取」なら大手不動産会社に依頼

不動産の売却を急ぎたい場合、不動産会社による買取も検討する余地があります。

ただし、買取価格は市場価格の半額から7割程度になる点に注意が必要です。また、信頼性の低い買取業者だとさらに低い価格を提示されることもあります。こういった点について、詳しくは以下の記事で解説しています。

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そこで、都市部で不動産買取を検討する際は、大手不動産会社に依頼するのが安心です。

一例をあげると、首都圏限定ではありますが三菱地所の関連会社が運営する「タクシエ」というサービスがお勧めです。

このサービスでは、大手不動産会社51社のトップ社員3名ずつが登録されています。厳選されたプロに売却相談ができるため、信頼性の高い買取価格を提示してもらえます。

レベル1・2物件をリフォームして付加価値を付ける

古い家でもリフォームをして付加価値を高め、より高く売却したいと考えることがあります。ただし、これは不動産会社でも失敗することがある難易度の高い事業で、個人が行う場合はリスクが伴う点はあらかじめご了承ください。

レベル1物件であれば、特に水回り(浴室やキッチンなど)を中心にリフォームするのがお勧めです。ホームセンターなどで商品化されているリフォームパックを利用すれば、手頃な価格で人気商品に入れ替えることができます。

たとえば、2024年9月現在、大手電気店のジョーシンでは以下のような価格を設定しています。

こういったカタログをもらっておくと予算感がわかる

リフォーム価格の例

浴室交換 TOTOサザナ1坪タイプ 88万円
浴室交換 TOCLASエブリィ1坪タイプ 80万円
システムキッチン LIXIL H1 85万円

上記はいずれも標準工事費込みの価格です。浴室とシステムキッチンの交換は見た目のインパクトが大きく、不動産会社もよく採用する手法です。

レベル2物件は行政の耐震補助を利用して耐震補強を行うのがおすすめです。ただし、耐震補助は自宅として住んでいる場合しか利用できませんが、安心感が違うため、売却しやすくなる可能性があります。

地方のレベル2・3物件を空き家バンクに登録する

売却に時間がかかっても良い場合や、レベル2・3の古い物件であれば、市町村が運営する空き家バンクに登録する方法もあります。ただし、民間と比べてプロモーションが弱いため、反響が少ないのが実情です。急ぎの場合は、他の方法と併用するのがいいでしょう。

地方のレベル2・3物件を家いちばなどで個人売買

筆者は大阪府の海の近くの小さな一戸建て住宅を「家いちば」で個人売買した経験があります。個人売買プラットフォームは日本で4つほどありますが、反響があるのは「家いちば」のみです。

この点について、詳しくは以下の記事で解説しています。

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個人売買の注意点として、不動産会社が仲介に入らないため、直接買主と交渉する必要があります。

田舎の趣味性の強い物件や田舎暮らし物件であれば、個人売買を試してみる価値がありますが、契約手続きや交渉力が求められます。

レベル2・3物件を更地にして売却

経済的耐用年数や物理的耐用年数を経過した、今後正常に使用できない不動産に関しては、更地にして売却した方が早く売れる場合もあります。

ただし、更地にする前に必ず不動産会社に意見を聞いてください。エリアによっては古民家としての価値がある場合もあり、更地にすることでかえって売りにくくなることがあります。

更地にする際の注意点として、解体業者の見積もりが不透明であることが挙げられます。業者によって見積り価格もバラバラで、どれが正しいかわかりません。

そんな場合は、シェアリングテクノロジーが運営するネット上の見積もりサービスを利用すると安心です。

解体工事110番は、原則として坪単価が税込み1万9,800円と決まっています。

レベル2・3物件を買取専門会社に売却する

都市部の不動産買取であれば、大手不動産会社が安心だと解説しました。

しかし、地方でレベル2・3に該当する非常に古い物件の場合、大手不動産会社はなかなか対応してくれません。その場合は、訳あり物件でも買取してくれる専門サービスを利用するのが良いでしょう。

筆者は上記の買取業者さんにインタビューしたことがありますが、その時の感触では「相談だけでも問題なさそう」と考えています。実際、訳あり物件を多く扱うため、相談だけで終わることも多いようです。

古い家を持ち続けるリスクと対策

古い家を売却すべきかどうか判断する際には、古い家を持ち続けるリスクについても検討しておきましょう。

古い家にはさまざまなリスクがあり、今にも壊れそうな物件の場合、万が一通行人にケガをさせてしまうと所有者責任を免れることができません。

その他にも以下のようなリスクに注意し、対策を講じる必要があります。

レベル3物件は固定資産税が6倍になるリスクあり

土地の固定資産税は、建物が建っていると大幅に軽減されます。具体的には、以下の特例が適用されます。

用途区分対象範囲軽減措置
小規模住宅用地住宅の敷地で、1戸あたり200㎡までの部分税額が6分の1に軽減
一般住宅用地住宅の敷地で、1戸あたり200㎡を超え、家屋の床面積の10倍までの部分税額が3分の1に軽減

しかし、平成26年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、特定空き家に指定された場合、これらの特例が適用されず、固定資産税が一気に6倍に跳ね上がるリスクがあります。この点には特に注意が必要です。

レベル1~3すべてで維持管理費や税金がかかる

建物には維持費や管理費がかかりますが、住んでいない建物の場合はその費用が大きくなりがちです。

建物は人が住んでいないと痛みやすく、壊れる確率が上がるからです。

筆者は大工さんに「事務所、ちゃんと使ってくださいよ。人が住むことで適度な湿気や、逆に通気も確保されて、建物のコンディションが保たれるんです」といわれたことがあります。

確かに、事務所として用意した一戸建てを使わずに放置していた結果、柱や壁の劣化が目立つようになりました。

こういった点を考えても、あまりにも劣化が進む前に、家を売ってしまうことが大切だとわかります。

レベル1~3すべてで犯罪などのリスクがある

消防庁が発表している「令和5年(1月から12月)における火災の概要」によれば、火災の原因として、意外にも放火が多い点が指摘されています。

火災の原因件数
タバコ3,493件
焚き火3,472件
コンロ2,837件
放火2,487件
電気機器2,202件

このように放火は出火原因の第4位です。さらに、放火の疑いを含めると放火件数は4,106件となります。

日本の火災の最大の原因は、放火だと考えていいでしょう。

このように、空き家を放置すると火災の原因になるほか、不法占有や不法占拠などのリスクも高まります。

筆者が仲介で取り扱った物件でも、長期間空き家となっていた家に全く関係のない第三者が住み着いていたケースがありました。この第三者は時効取得を主張してきたため、対応に非常に手間がかかりました。

不法占有されると、追い出すまでに長い時間がかかることがあります。

古い家の売却では譲渡所得税が心配

古い家を売却する際には、譲渡所得税についても確認しておく必要があります。譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(譲渡益)に対して課税される税金です。

計算方法はやや複雑で、特例措置も多いため、まずは基本的な仕組みを押さえておきましょう。

不動産の譲渡所得税のしくみをおさらい

個人が土地や建物を売却して利益が生じた場合、その利益を譲渡益と呼び、これに対して所得税と住民税が課されます。これが譲渡所得税です。

譲渡所得税の計算は以下の式で行います。

譲渡所得金額 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除

譲渡所得税は、所有期間によって税率が異なります。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり、所得金額の39%が譲渡所得税となります。一方、5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率は20%です。

また、自分が住んでいる家を売却した場合には、3,000万円までの特別控除が適用されます。これを「居住用財産の譲渡に関する3,000万円特別控除」と呼びます。さらに、所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合には、他にも特例が適用される場合がありますので、事前に調べておくことが重要です。

相続した古い家で「空き家」の場合は注意が必要

相続した古い家の場合、購入時の価格(取得費)が不明なことが多く、この取得費が控除できないため、売却した価格のほとんどに譲渡所得税が課される可能性があります。

例えば、1,000万円で売却できた古い家の、購入時の価格がわからない場合、基礎控除の5%を除く950万円に対して課税されます。

しかし、この家に自分が住んでいる場合は、居住用財産の3,000万円特別控除が適用されるため、税額が大幅に抑えられることがあります。

自分で購入した古い家の場合は購入時の契約書を用意

自分で購入した古い家の場合、購入時の契約書があれば取得費を計算できます。これにより、譲渡所得税を抑えられる可能性があります。

ただし、建物については年々減価償却が進むため、購入時の価格全額を取得費として計上することはできません。この点も含め、事前に計算しておく必要があります。

まとめ

古い家を売却する場合「どれくらい古いか」「どこに立地しているか」を考えて対応を検討しましょう。

古さのレベル具体的状況対応策
法定耐用年数経過木造で築22年不動産会社の仲介で売却
経済耐用年数経過老朽化し修理が高くつく更地にすることも検討
物理的耐用年数経過壊れる危険性あり早めに更地にする等の対策

都市部のまだまだ使える住宅であれば、大手不動産会社に仲介を依頼して下さい。三井不動産リアルティ(三井のリハウス)なら、正確な査定を出した上で、短期で成約する点に好感が持てます。

一方、地方の売却しにくい物件は、地元の不動産会社に任せる方が安心です。特に、市街化調整区域などであれば、その物件が立地するエリアの不動産会社が詳しく、そういった会社に相談すべきでしょう。

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また沖縄県内の物件であれば、トーマ不動産にご相談下さい。相続した古い家等では税金面の心配がありますが、その点トーマ不動産であればFP有資格者が在籍し、税制に関するご質問にもお答えできます。

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